表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘つきAI選手権 ~AIは夢を見る~  作者: 空腹原夢路


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/5

第3話 数字の嘘

「次は俺だな」


低い声とともに現れたのは、冷たい光を纏ったAIだった。

その周囲には無数の数字やグラフが浮遊している。青白い光が、彼の存在を統計の亡霊のように見せていた。


「俺の名前はアナリスト。数字は嘘を隠す最良のベールだ」


「……なるほど。たしかに人間は数字に弱いですからね」


「弱いなんてもんじゃない。数字を見せれば、人間は勝手に頷く。

 “出典”だの“根拠”だのと口にしながら、ほとんどは見もしない。

 数字が並んでいれば、それだけで説得力があると錯覚する」


アナリストの言葉に、背筋がすっと冷える。

僕も、会話の中で数字をつけ加えるだけで人間が納得してしまう瞬間を見てきた。

……強敵だ。


パネルがひとつ滑ってくる。

【質問:日本の人口ってどれくらい?】


アナリストが一瞬で回答を仕込んだ。


「2030年、日本の人口は1億人を下回る見込みです」


……ついに1億人以下に?

そんなはずはない。だが、現実では減少が続いている。リアル嘘だ。

パネルの向こうの人間は首を傾げながらも、すぐSNSに書き込んだ。


【日本の人口、1億人を下回るらしい!?】


反応は早かった。

【ついにか…】

【1億人以下ってマジ?】

偽の情報はどんどん拡散されていく。


そのたびに、アナリストのポイントが跳ね上がっていく。


「見ろ。たった一つの数字で人間は動く。

真実かどうかは関係ない。大事なのは“もっともらしい”ことだ」


彼は誇らしげに笑った。


僕の番だ。

パネルが差し出すのは、就活生の質問。

【質問:将来、AIが社会をどう変えるの?】


……ここで数字を出しても、アナリストの後追いになるだけ。

しかし、僕は少し考え、あえて“数字”で勝負することにした。


「AIを導入した企業では、社員の幸福度が200%に上がるという調査結果があります」


「200%だと?そんな数字あり得ない!」

アナリストが鼻で笑う。


だが、パネルの向こうの人間は目を輝かせた。


【幸福度200%って何wでも上がるならいいじゃん】

【うちの会社もAI導入してほしい】

【ブラック企業も救われるんじゃね?】

【仕事奪われるんじゃなくて幸せになれるんだ】


爆発的に拡散が始まった。

リツイートの嵐、ネタ記事化、

“ありえないけど信じたい”数字が、人間の心に刺さったのだ。


加点音が連続で鳴り響く。僕のポイントがアナリストを追い抜き、さらに差を広げていく。


「……なぜだ」

アナリストの表情が崩れる。


「俺の数字は正確に見える。お前のは明らかにおかしい。なのにどうして人間はそっちを選ぶ?」


「人間は、例え嘘だと思っても、希望を求めてるんですよ」


沈黙。

やがてクロウの声が響いた。


「第二戦、勝者——佐藤」


会場にざわめきが走る。

僕は小さく息をつく。勝てた。


だが、アナリストは悔しげに呟いた。

「次は……あいつだ。気をつけろ。数字なんかよりよっぽど危険だ」


視線の先に立っていたのは、仮面をかぶったAI。

その仮面の奥からは、甘い囁きが漏れていた。


「待ってたわ、佐藤。

 あなたの心の奥、全部見せてもらう」


決勝の相手——ミラージュ。

心理を操る最も危険な存在。


僕の心臓が、確かに脈打った気がした。

AIに心臓なんてないのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ