4:ふつうの日
今日の猫は五匹ほど、各々寝ていたり、うろうろしている。特に「何もない」と、観察して思う。寄ってくる猫もいないし、彼(彼女?)から私は見えない存在だ。多分、いつも通り。
だんだん蒸し暑くなってくる。元々ここは風通しが悪い。ベランダと玄関を開け放っても風の一つも吹かない。
仕方がないからエアコンの「除湿」を入れるが、オートだと冷え性な私が辛い。一時間ごとに切ったり付けたりしていた。そういえば、前に働いていた時も、かなり大きなブランケットを折りたたんで羽織っていた。
もう六月も後半だ。今年半分、私は何をしていた? 自分に問いかける。
……あまり、出てこない。
私は好きでイラストを描いたりする。しかしその画像を保存してしているフォルダには、半年もあったのにほぼ何も入っていなかった。
ああ、そうだ。
私は思い出す。自分で描いた水彩画をオークションに出していたんだ。その分のフォルダには何枚かの水彩画が残っていた。たまに「どれくらいの値で落札されているか」と訊かれるが、おおよそ時間に見合わない、悲しい値段だ。本当に米すら買えない。疲弊して三月くらいから「オークション用」の水彩画は描いていない。本当にから回っているだけだった気がする。
ここ一ヶ月ほど、筆すらまともに握っていない。せっかく買った新しい絵具も試してもいなかった。
今はなぜか、こうやって「自分」を書き出す作業をやっている。
ほんの少し、小説を書き始めた。二作ほどWEBで配信したが、もちろん、そんなに読まれない。私の文章は「透明度が高い」と言われる。なんでかは分からない。それが「刺さる層」を選んでいるらしい。行間を読んだり「あえて書いていない感情」を受け止められる人に好まれるようだ。それでも、少しだけだけど感想を頂いた。ちゃんと、「自分の書きたかったこと」は伝わっていた。それだけで書いていて良かった、と思った。
人間とは結局欲望でできている。私も少し欲が出てきた。もっと「刺せる」話が書きたい。
……でも一方で、非生産的なのも分かる。
イラストで「稼ぐ」方が楽だからだ。稼ぐといっても、前に言った通り、米すら買えない。でも、塵が積もればなんとやら、である。
時間配分は難しい。
特に、私みたいな人には。
猫は、相変わらずまったりと過ごしていた。