表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/200

快適さが上がる

 玄関前の雪を押して退けて、除雪の道具を仕舞ったら杖をしっかりと握る。

 今日は良く晴れており、晴れた分寒いのだがそれは我慢して町へ買い物に行くのだ。

 ルルさんの所へお守りを持って行って、その後はちょっと町を見て回ってから食料を買い込んで戻ってくる予定になっている。


 日暮れも早くなっているからあまり遅くまで町にいることは出来ないのが残念な所だ。

 まぁ、必要な物も減って来て散策する時間は作れるようになっているのだけれど。

 ともかくそんなわけで、今日は寒さに凍えつつ空を飛んでいる。道中にも少しだけ雪が積もっているようだ。


 王都と同じくらいは降るのだろうな、とは思うので、地面にちょっと雪が積もっている状態が冬中継続する程度の積雪は予想している。

 それ以上になったら、ちょっと大変かもしれない。

 まぁ、大工さんに冬の備えで窓を塞げ、とかは言われなかったし、そこまでは降らないんだろう。


「寒い……」

「ホー」


 あれこれ考えて誤魔化していたけれど、ついに声に出た。

 顔が寒い。風が冷たくて、守ってくれる布地のない顔がもろに被害を受けている。

 何かもっと防寒対策が必要だろうか……なんて思っている間に町に着いたので、地面に降りてキヒカを肩に止めた。


 町の中に入るとちょっと寒さがマシになった気がするのは多分気のせいなのだけれど、そんな気のせいが発生するくらいには町の気配が温かい。

 素敵な町だ、なんて改めて考えながら、とりあえずルルさんの所へ行くことにした。のんびり歩いて進み、お店に入る前に看板を確認。


「ロヒ・レメク」

「ホー」


 よし、ちゃんと覚えておこう。

 確認を終えたら扉を開けて中に入り、品出し中だったらしいルルさんに頭を下げた。

 なんだかまた見慣れない小物が増えている。あとでちょっと見てみよう。なんて思いつつ、カウンターの内側へと移ったルルさんに作って来たお守りを渡し、その分の代金を受け取る。


「前に持ってきてくれた分も売り切れてたから助かるよ」

「そんなに売れるんですね……」

「高くてもいいからもっと効果の強い物が欲しいって言ってる人もいるよ。でもまぁ、しばらくはこれで、かなぁ。あんまり増えると大変だろうしね」


 効果の強いお守り、となると、また値段設定からしないといけなくなるのだろう。

 ……なんだろうか、まだやっても居ないのに、アデラに怒られる未来が見えてしまった気がする。何をするにも怒られるつもりでやる事なんてないのに……

 適正価格に困ったらアデラに聞いてみよう、なんて逃げの姿勢を取りつつ店内を見て回り、今日は何も買わずにお店を後にした。


 お守りはまだ量産体制を取っていいらしいので、次回も小箱いっぱいに作ってくるとしよう。

 お守りの材料もまだあるので、それは買わなくても大丈夫。となると、この後は町の散策だ。

 特に何も急いで探さないといけない物は無いので……本当に気軽に、ただ見て回ることになりそうだ。


「ホー」

「うん?」


 なんて思って歩き出して、結構すぐにキヒカが何かを見つけたようで一声鳴いた。

 キヒカの見ている方へと視線を移すと、そこには何かの看板が出ている。

 近付いて確認してみると、靴屋さんのようだ。……確かにこの靴もう結構長く履いているし、新しい靴……でなくても、冬用の靴とか探した方がいいんだろうか。


「入ってみようか」

「ホー」


 そうしろ、とキヒカにも言われたので、靴屋さんの扉を開けて中を窺う。

 中には談笑していた二人の男女が居たのだけれど、私に気付くと話をやめて笑顔でこちらを向いた。

 同じエプロンを付けているし、二人とも店員さんだろうか。


「いらっしゃいませ」


 かけられた声に釣られるように中に入って、並んだ靴の多さに圧倒される。

 何も分からない、という顔をしていたのが分かったのか、店員のお姉さんに探している物を聞かれたので、冬用の靴を探しているといったらお店の中を案内された。

 案内された一角には内側がもこもこで温かそうな靴が並んでおり、これなら足先の冷たさに苦しむことが無くなる……?とフラフラ手を伸ばす。


「他のサイズもございますので、お気軽に試してくださいね」

「ありがとうございます」


 椅子にも案内してもらって、とりあえず気になったものを履いてみる。

 ……ちょっと大きい。それをお姉さんに素直に伝えたら、奥から同じデザインの別の靴が出てきた。

 新しく出してもらったのも試して、こちらはちょっと横幅が余る、と伝えたらまた別の靴が出てくる。


 すごいな、こんなにいっぱいあるのにどれがどれなのか把握しているのか。なんて感動しつつ試している間にちょうどいい靴が見つかり、試し履きの時点で分かるくらいに温かかったのでこれを買っていくことにした。

 そして、元々履いていた靴はもう結構ボロボロだと言われたので、買った靴に履き替えて、履いていたほうは処分してもらうことになった。


 至れり尽くせり……としみじみしながら会計をしようとしたところで、なんだか他と違う作りの靴が目に入る。

 しっかりした作りの靴が多いお店だけれど、その一角に置かれている靴たちは簡素というか、脱ぎ履きしやすそうというか、とにかく他と違うのだ。


「そちらは室内用に作られた靴です。外作業で汚れた靴は玄関で脱いで、家の中では別の物を履く人も多いんですよ」

「なるほど……」


 確かに履き替えた方が家の中は汚れないし、脱ぎやすい靴の方が家の中では便利そうだ。

 と、いう訳で、こちらも一足買っていくことにした。

 これもサイズが色々あったけれど、店員のお姉さんがすぐに合うサイズを見つけてくれたので時間はかからず、冬用のブーツと室内用の靴を入手し、大満足で店を出る。


「……春になったらまた来よう」

「ホー」


 冬用ブーツが暑くて嫌になる時期が来る前に、もう一回ここにきて春から秋にかけて履けるものを探すことにする。

 その時期の事はその時に考えるとして、今は新しい靴でウキウキなまま、町の散策に戻ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ