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キッチンの修理

 町に買い物に行った翌日、早速キッチンを直すために買ってきた物を抱えてキッチンに向かった。

 テーブルセットはキッチンを全部直して掃除をしっかり終えてから設置するので、今は埃よけに布をかけて寝室に置いてある。


「よし、やろう」

「ホー」


 買ってきた排水パイプを掲げて気合を入れたら、キヒカが一緒に翼を広げて一声鳴いた。

 そして邪魔にならない位置まで飛んでいく。なんて賢くていい子なのだろう。見守り姿勢に入ったキヒカを見届けて、水漏れする排水パイプに手を伸ばす。

 まずはこの割れている部分を切り取らないといけない。


 魔法で切ってしまって良いそうなので、さっくり切って取り外す。

 後ろの壁まで切ってしまわないようにだけ気を付ければ、切りやすい素材だったので特に苦労はなかった。もし魔法で切れなかったら手動で頑張らないといけなかったので、魔法で切れてよかった。

 手動はちょっと、大変すぎる。腕力と体力と筋力が足りない。道具も無い。なんにもない。


 そんなわけで排水パイプを切り取った場所に、新しく買ってきたパイプを合わせて切りたい長さの所に印をつけてそれもスパッと魔法で切り落とす。

 切ったパイプの余った部分は結構長さが合って他の所に使えそうだったので、取っておくことにした。もしかしたらお風呂の方でも何か不具合があるかもしれないからね。


「よいしょ」


 小さく声を出しながら、切ったパイプを途切れた部分に合わせて問題が無い事を確かめる。

 問題が無かったので両端に接続用の部品をつけて再度パイプの位置を合わせ、接続部品を閉めていく。これには先に隙間を埋める専用の布を噛ませてあるので、結構ギチギチに締まった。

 上下ともに腕力の限界まで頑張って閉めて、シンクを外してしまったので魔法で水を誘導して流してみる。


「……漏れてないね」

「ホー」


 無事に水漏れは解消された。最後の作業が中々大変だったが、これであとはシンクを設置すれば水を使えるようになる。

 そんなわけでシンクを運んできて、どうにかこうにか元々シンクのあった位置に設置した。

 これ、絶対シンクを置いてから排水パイプ直した方が良かった。頑張って締めたせいでもう動かせないし、やたらと時間が掛かった気がする。


 直すにも順番は考えないといけないなぁ、と思い知りながら水を流して問題なく排水されている事を確かめて、ほっと息を吐いた。

 これでどこかが漏れていたら今日はもう諦めてふて寝しているところだった。危ない危ない。

 シンクが完成したら、次はかまどの修復だ。


 ここまで大きくない物であれば野営の時とかに組んだこともあるのだけれど、今回はずっと使える物をしっかりと作らないといけないので気合も入る。

 まずは壊れている所、割れているレンガを退けていく。

 使えるところはそのまま使いたいので、無事な部分は壊さないように気を付けて作業を進める。


 崩れているレンガを外して、掃除もしながらレンガをより分けていく。

 これも中々重労働だ。魔法で浮かせて窓の外に投げているからまだどうにかなっているけれど、これが全部手動だったらと思うとぞっとする。

 多分最初の寄り分けと片付けだけで三日はかかる。もっとかかるかもしれない。


 なんて考えながら割れたレンガ、崩れた部分を浮かせで窓の外に投げていく。

 割れたレンガの粉や灰などが舞っているので、途中で新品のシンクが汚れないように布を被せて作業を進めていく。汚れちゃうからね、まだ使ってないのに。


「……日が暮れてきた……」

「ホー」

「そうだね、組むのは明日にしようか」


 日が暮れてしまったので今日の作業はここまでにして、窓を閉めて寝室に戻ることにした。

 荷物は全部寝室にあるので、あそこが今の拠点なのだ。荷物はこのままでいいだろう。どうせ作業するのはここだし、動かす必要はない。

 立ち上がってキッチンを出るとキヒカが先に寝室へ飛んでいった。


 ……家を粗方直して余裕が出てきたら、キヒカが自由に家の中を移動できるように小さな扉でも付けようか。出来るかどうかは分からないけれど、そこまで家を直した後なら何かと出来るようになっていそうではあるし、やってみてもいいかもしれない。


「ホー」

「ん、どしたの?」


 先に寝室についていたキヒカが荷物の上に止まって一声鳴いた。

 何かあっただろか、と近付いて行くと、上の方に取り出しておいた道具が光っているのが見えた。手に取って、そこに表示されているメッセージを確認する。

 これは私が学生時代に作った魔道具で、遠くに居る人と連絡を取るための物だ。


 同じものを持っている人同士で連絡が取れるのだけれど、他に持っている相手は一人だけ。

 学生時代の友人で、私と同じく王城に就職した青年である。私は魔術部門で、向こうは騎士団という違いはあるけれど近しい職場と言うこともあり時々会って話をしていた。

 この道具を作った時、本当は親友にも渡したかったのだけれど、ある程度魔力の操作が出来る人じゃないと使えないので使える人に、と渡したのだ。


「……元気そう」

「ホー」


 私が仕事を辞めて王都を飛び出したのを知ったらしい友人は、居場所を聞くでもなくただ体調を心配するメッセージを送って来た。

 それに元気だと返事をして、ついでに親友にも伝えておいてくれると嬉しい、と追記しておく。

 そのうち、家がしっかり直ったら、二人には住んでいる場所を教えてもいいかもしれない。

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