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道具と材料

 ルルさんの雑貨屋さんに行く道で見つけた道具屋さんに入り、とりあえず除雪の為の道具を眺める。

 鉄製は頑丈そうだけれど、私の筋力ではちょっと扱いが難しそうだ。これの上に雪が乗ったら多分動かせない。

 なので、木製の物を選んで購入した。雪を押して退けるタイプの物だ。


 木製なので、帰ったら撥水と防腐の魔法陣を彫り込もう。

 それから、スコップも一本買った。何かと使いそうだし、木製の道具では対処できない硬い雪が積もった時用の備えだ。春になったら畑でも使うかもしれない。

 こちらは頑丈さを求めて鉄製にした。先端以外は木だし、このくらいなら頑張れる。


 そんな感じで二つの除雪道具を手に入れて、そのまま店の中を見て回る。

 他にも何か使えそうなものは無いだろうか、とのんびり見ていたら、キヒカが肩の上で小さくホーと鳴いた。何かを見つけたらしい。

 キヒカが見ている方へと視線を向けると、そこにはロール状になった網が置かれていた。


 何製だろうか、と確認してみたけれど、植物だということくらいしか分からなかった。

 触ってみた感じ、結構丈夫そうだ。それから、魔力への反発も無い。魔力を吸い込んでもいないだろう。完全に無干渉だ。

 材料として、良い感じなのではないだろうか。


「流石キヒカ」

「ホー」

「後で資材屋さんにも行こう」

「ホー。ホホー」

「そうだね、次はあっちの素材屋さんだ」


 網と除雪の道具二つをお会計してもらって、次の目的地に向かう。

 次は何度か行っている魔法の素材を扱うお店に行くのだ。

 ……そういえば、あのお店の名前、把握していないな。ルルさんの雑貨屋さんも「ルルさんの雑貨屋さん」としか認識していないし、ちゃんと覚えた方がいいだろうか。


 自分の名前も名乗り忘れるくらいだし、名前への興味が無さ過ぎるかもしれない。

 ちょっと反省して、お店の名前はちゃんと把握しよう。何かに必要になるかもしれないし、今後も関係を持ち続けるだろうお店の名前も把握していないのは、どうかと思うし。

 うんうん、と一人で納得して頷きつつ、魔法関係の素材を扱うお店に向かう。


「お店の名前……どこかにあるかな」

「ホー」

「あ、本当だ。えーっと、ヒヴェカのインク。……おしゃれ」

「ホー」


 ヒヴェカとは効果の高い魔法陣を書く時に使われる獣皮紙の材料になる動物で、毛も皮も効果の高い魔法関係の材料になるのだけれど、血だけは魔法への適性が無いのだ。

 けれどその血はとある花と混ぜると綺麗なインクになり、人気もあるのだけれど作成に手間がかかるので嗜好品として扱われている。

 魔法の素材屋なのに、インクを選んで名前にするとは……好きでやってるお店だから、とかそういう理由だろうか。


 なんて思いつつ、お店の名前は覚えたので中に入る。

 入ってすぐに、店長さんと目が合った。よ、と片手を上げて挨拶されたので、頭を下げておく。

 お店の中には相変わらずいろいろな素材が置かれているが、今回の目的は前に頼んでいた物だ。


「魔法陣のインク、ありますか?」

「おう。とりあえず三種仕入れたが……どれがいる?」

「わぁ」


 流れるようにカウンターの上に並べられたインクを見て、思わず小さく声を上げた。

 あるかなぁと希望を持ってきたけれど、思ったよりあったすごい。仕入れて貰ったお礼も兼ねて、三種を一つずつ買って行くことにする。


「どれが一番使うんだ?」

「一番は、これです。大体の物はこれで書けるので……他二つは、もっと効果を高めたり、偏らせたりしたいときに使う感じです」

「なるほどな。なら次からこれを主に入れとく」

「ありがとうございます」

「蔦の方は、冬の間は無理そうだ。夏前には出て来るらしいから、急ぎなら王都まで行った方がいい」

「分かりました、のんびり待ちます」


 探してくれていたらしい。有難い限りだ。

 それから、前に買った小さな使い捨ての魔石だけでなくもう少し大きな魔石も追加で置かれていたので、それもいくつか買っておく。

 王都を出た時にそれなりの量を持ってきたのだけれど、何かと使うから数が減ってきているのだ。


 増えてる、嬉しい。なんて思いつつ感謝も込めて会計を済ませてお店を出た。

 ここで買った物は小さいし、インクは割れたら困るので浮かせずしっかり荷物に仕舞いこむ。除雪の道具と網は浮かせた。持って歩くにはちょっと大きいので。

 次は……やっぱり資材屋さんだろうか。探検がてら通ったことのない道を選びつつ、いつもの資材屋さんへと向かうことにした。


 資材屋さんで探すのは木材だ。ちょっと多めに確保したい。

 必要な大きさ、長さを考えながら歩いていたら、道中で本屋さんを見つけた。

 ふらりと寄って行ったらキヒカがちょっと呆れたような声を出したけれど、本棚はあるし、まだスカスカなのでいいだろう。


「ホー」

「分かった、ありがとう」

「ホホー」

「うん、分かった」


 外で荷物番をしてくれるらしいキヒカからあまり時間をかけ過ぎないように、と釘を刺されたので、怒られないくらいの時間で出てこないといけない。

 まぁちょっと長くなったところでキヒカは怒らないけれど、あまり外で待たせるのもな、と思うのでそこそこで切り上げよう。

 なんて思いつつ、興味のままに本の並んだ棚へと歩みを進めた。

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