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フクロウの置物

 テーブルセットを購入した後は食料を買いこんでいく。色々やってみたくはあるけれど、いきなり全部やるのは無理なのでパンやらなんやら、いつも買っているものと同じような日持ちのする物を選んで購入した。

 本格的に料理をしようと思ったら、まずは料理道具から揃えないといけない。


 今ある道具は野営の時に使う物だけれど、あれでもどうにか出来るだろうか。やっぱりちゃんとやろうと思ったら揃えたほうがいいんだろうか。

 丈夫で嵩張らない、が何より優先される野営道具とは選ぶ基準も違いそうだ。なんて考えながら買った食料の箱を積み重ねて、紐で縛って一纏めにする。


 中々重くなった荷物を浮かせて向かう先は、噴水広場の芝生の上だ。今日の一番最初に声を掛けたお爺さんの所に寄って、そうしたら後は帰るだけになる。

 そろそろ日が暮れる頃なので、時間的には良い感じだろうか。色々と見て回った割には遅くならずに戻れそうだ。


 キヒカはさっき寄ったお店で可愛い可愛いともてはやされて木の実を貰ったからご機嫌だ。肩の上で機嫌良さそうにしているから、指先で構いつつ広場に向かう。

 広場の縁石の外側、芝生の上のおんなじ場所にお爺さんは座っていた。

 近付いて行くと、お爺さんの横に座っていた女の子がこっちを向いた。……なんだろう、すごく見られている。


「こんにちは!」

「こんにちは」


 元気よく挨拶をされたので、とりあえず返事をしておく。

 お孫さんかな、なんて考えている間に、女の子は靴を履いて立ち上がる。


「お姉さん、魔法使い?」

「そうだよ」


 答えたら、目がキラキラと輝き始める。もしかして魔法使いが珍しいんだろうか。確かに今日町を歩き回っていても見かけなかったけれど、でもそこまで珍しい存在じゃないと思うんだけれど。

 いや、珍しいのか?どうなんだろう。王都には溢れんばかりに魔法使いが居たから、ちょっと私の基準がズレているのかもしれない。


「私、アルパです!」

「私はフィフィーリア。この子はキヒカ」

「ホー」


 お行儀よく返事をしたキヒカに、アルパは更に目を輝かせる。

 そうでしょう、可愛いでしょうキヒカは。こんなに賢くて可愛いフクロウは早々いないんだから。なんて得意げになっていたらキヒカが肩から降りて、お爺さんの前まで移動した。

 自分がモデルになった木彫りの置物が気になるんだろうか。


 キヒカを追いかけてお爺さんの前にしゃがむと、横に置かれていた箱の中から置物が一つ取り出されて差し出された。

 受け取って、手の中を転がるそれを確かめる。

 柔らかな木の色が、キヒカの色とそっくりだ。丸くふくふくしているそのフクロウはとても可愛らしく、キヒカだと分かる特徴がしっかり捉えられている。


「可愛い……」

「ホー」

「キヒカ、ほら、キヒカだよ」

「ホー」


 キヒカに見せてみると、首を傾げて手の中の置物を観察し始めた。

 目の前に置いたら追従して目線が動くので、そのままにしてお爺さんに置物の代金を払う。とても良い物を作ってもらった。どこに置こうかな。あの家、今棚も何も無いんだけれど。

 ベッドに持ち込んでしまおうか、なんて考えつつ置物を回収して懐に仕舞いこむ。


 これで後は帰るだけ、と思ったのだけれど、アルパが何かもじもじしながらこっちを見ていることに気が付いた。首を傾げて言葉を待ってみるけれど、次の言葉はない。

 ……どうしたらいいだろうか。私は基本的に受動的な会話しかしてこなかったから、なんと声を掛けたらいいのかも分からないのだけれど。


 こんな時に親友が居てくれたら二秒で話が進むのに、なんて思って心の中でヘルプコールを出してみたけれど、ここから王都までは流石に届かないだろうし届いても来てもらうことは出来ない。駄目だ、八方ふさがりだ。


「あの……」

「うん」


 もじもじしながらアルパが声を出してくれたので、とりあえず返事はしておく。聞いているよと示すのは大事だと学生時代に覚えたのだ。

 キヒカもホーと鳴きつつ肩の上に乗ってきた。


「魔法使いって、どうやったらなれるの……?」

「うーん……まずは、自分の魔力を調べて貰う必要があるかな」

「魔力を?」

「うん。私は学校に入学する時に調べて貰ったけど……他にも調べられる場所はあるはず?」


 初めて魔法を使った時の事なんかを思い出してみたけれど、私は全部学校に入学した時に決められている流れでやったからそれ以前に何かとなるとちょっと分からない。

 けれど、なんであれまずは自分の魔力について調べる所から始めないといけないのは確かだろう。


 そういう調べ物が得意な魔法使いもいるのだけれど、私はその辺はあまり得意ではない。

 他者干渉は苦手なのだ。道具を作ったり攻撃したり、そういう単独行動は得意だけれども。さらに言うと魔法陣や魔道具作りが一番得意なので、本当に向いていない。

 調べるための魔法陣があるんだっけ?と古い記憶を掘り起こしていたら、お爺さんがアルパを呼びつつこっちを向いた。


「今日はそろそろ帰らんといけないんじゃないかい?」

「あ、そうですね、そろそろ」

「もう行っちゃうの?」

「うん、家が遠いから」

「……また来る?」

「来るよ。多分近いうちに」


 浴槽を買わないといけないからね。それに、食料だって買いに来ないといけない。

 パッと明るくなったアルパの顔を見て、次に来るまでに使える魔法陣が無いか調べておこうと決めた。

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