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棚を探して

 買った物を浮かせて運んで、気の向くままに町を歩く。

 キヒカは肩の上で楽しそうに揺れていた。話題に出すたび別に要らないと言っていたけれど、止まり木を購入出来て嬉しいのかもしれない。

 そんなことを考えながら分かれ道を適当に選んで進む。なんだか学生時代を思い出すなぁ。


 あの頃も、王都の中を意味も無く探索する時があった。シンディやテルセロと一緒に行ったこともある。

 二人は元気だろうか。テルセロが何だか忙しいらしいのは、魔道具のやり取りで知っているんだけれど、シンディにはまた手紙を出さないと。

 ……王都と家は、とんでもなく離れているわけではない。何かしらで手紙だけを飛ばすような魔道具でも考えてみようか。


 二点を真っすぐ結ぶだけなら、どうにかならないかな。

 新しく何かを作るとなると流石に道具も設備も足らないだろうか。揃えたっていいけど、多分王都に買いに行かないと道具は揃わない。

 どうしたものかな、なんて思いつつ、再び分かれ道。ふと横を見たら階段があったので、上がってみることにした。


「ホー」

「うん、木の香りだ」


 進んだ先では、なにやら伐りたての木の香りがした。

 いい香りだ、とつられるように足を進める。キヒカも興味があるみたいで、肩の上でちょっと身体を伸ばしていた。

 先に見て来たっていいのに、律儀なフクロウである。可愛い。


「……家具屋さん?」

「ホー」


 進んだ先にあったのは大きな家具たちと加工中の木。間違いなく香りの元はここのようだ。

 本当に知らない家具屋さんを見つけられたなぁ、と自分の直感に感心していたら、木の加工をしていた人がこちらに気付いたのか振り返った。

 目が合って、一瞬の間があった後に私たちが上がってきた階段とは逆の方を指さされる。


「店はあっち」

「あ、ありがとうごさいます」


 ぺこりと頭を下げて、示された方に歩き出す。

 その後ろでお前はもっと愛想よく出来ねぇのか!と怒られている声が聞こえるけれど、そこには触れないでおく。仲裁できるほどの愛想は私にもないので。

 お店のある方向を教えて貰えただけでも十分だ、と少し歩いたら、先ほどの工房だろう建物の隣に家具屋さんの看板が出ていた。


 中に入ると、木のいい香りがふわりと漂ってくる。

 磨き上げられた木の家具。表面は薄っすらと色がついて艶があるけれど、木目はそのままで美しい。

 わぁ、と思わず声が零れた。キヒカの羽より少しだけ濃い色で、飾り気が少ないからこその美しさがある。装飾や飾り彫りはほとんどない。必要な分だけの取手などがあるだけだ。


 大きな家具だけでなく、小物もあるようだ。

 その全てが木で出来ていて、他の素材で出来た物は見当たらない。

 どれも綺麗だ、と店の中を見て回っていたら、大きな棚を見つけた。上は一部ガラスがはめ込まれた両開きの扉で、その下は戸のない台になっている。


 一番下は少しだけ飾りの入った木の扉、こちらも両開きで、開けてみたら中には仕切りの棚板が三枚入っていた。

 どうやら棚板は外すことも出来るようだ。

 扉を閉じて、もう一度棚の全体を眺める。木目の美しい、しっかりとした作り。


「キヒカ、これにしよう」

「ホー」


 ずっと買わないとと思っていて、気に入ったものが見つからなかったキッチンの食器棚。

 棚の下側は食糧庫にする予定なので、これは本当にちょうどいい。真ん中の部分には何を置くのが良いだろうか。現状置くものが思いつかないので、なんかいい感じの小物を探してもいいかもしれない。

 なんて、浮かれ気分で考えつつ店員さんを探すことにした。


 そのついでに、もう少し店の中を見て回る。

 何か他にも……そう、作業台の横に置くチェストとか、そういう物も見つかるんじゃなかろうかと、そう思ったのだ。

 後は単に、店の中を見て回るのが楽しい。このお店は好きだ。並んでいる物も、雰囲気も。


 そんなわけでフラフラ歩いていると店員さんらしき人が居たので、声を掛けて先ほどの棚を買わせてもらう。

 ついでにチェストも探してるのだと口にすると、チェストが集まっている一角へ案内してくれた。

 大小さまざま、足がついていたりいなかったりと、デザインも様々なチェストが並んでいる。


「……キヒカ、机の詳しい高さ分かる?」

「ホー」


 机に合わせる必要もないかもしれないけれど、一応気にはしておく。

 そうしていくつかのチェストを見て行って、最終的には食器棚と同じ色合いの、脚付きの物を購入することにした。

 引き出しの数は五個。四列で、一番上だけ引き出しが二つになっている。


 インクやら筆やらはここに入れることになりそうだ、と思いつつ会計を済ませて、ざっくりと布で包んで貰った家具を二つ浮かせて運ぶ。

 かなりの重量感。作りがしっかりしている証拠だなぁ、なんて考えて、お店を出て機嫌よく歩き出す。

 欲しかったものは入手できたし、この後はいつもの大通りに戻るとしよう。


 戻る道は、通ったことのない所を選んで進んでみることにする。

 探索だ。荷物は増えたけれど、機嫌は良いので足取りは軽い。

 このあとは資材屋さんに行って屋根材を追加購入したいのと、食料も買わないといけない。帰りがけ、噴水広場にも行ってみよう。

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