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買い物に行く

 朝日を浴びつつ髪を纏める。お風呂にはまだ入れないけど、ぬるま湯を作って身体と髪を洗うくらいはしたので多少はすっきりした気分だ。

 今日は帰りが大荷物になる予定だから、行きの荷物は少なくする。

 うっかり帰り損ねた時の為に野営の道具と、財布を持ったらそれでおしまいだ。


 家の荷物には盗み防止の魔法陣を仕込んで安全対策をしておいた。まだギリギリ空き家みたいな家だけれど、ここにあるのが私の荷物の全てなので盗まれるのは困るのだ。

 魔法陣は昨日寝る前に準備した。即席で作ったにしては中々いい出来だ。魔法陣描くの得意で良かった、と昨日は改めて思った。


「よし、行こう」

「ホー」


 杖を持って荷物を背負って寝室を出ると、キヒカが肩に止まった。

 今日は飛ばないで乗って行くんだろうか。その辺はキヒカの気分だから、好きにしてくれて構わないけれども。

 考えながら家を出て、扉を閉める。そういえば玄関の鍵も内側から閉められるものしかないから、何か考えないといけない。魔法錠でも作ったらいいだろうか。


 それはまた後で考えよう、と後回しにして、杖に跨って風を起こす。

 杖を中心に魔法を展開していき、ふわりと浮き上がったところで向きを変えた。向かうのは王都の方だ。とはいえ、王都とは近いわけでもない。


「ん、キヒカも乗る?」

「ホー」


 杖の先に止まったキヒカがこのまま行くというので、軽く撫でてから上昇をやめて前に進み始めた。これも結構なので、速度はかなり出る。

 もっと急ごうと思えば急げるのだけれど、疲れるし寒いし早い以外にいい事は無いので速度はほどほど、疲れない程度に留めておく。あんまり速度を出すと、キヒカも落ちちゃうかもしれないし。


 そんなわけで景色もギリギリ楽しめるくらいの速度で飛んでいき、町が見えたのは昼前だった。これならギリギリ日帰りで帰れるだろうか。

 あまり遅くなるようなら野営にしよう、と心に決めつつ、それなら帰れるくらいの時間で買い物を済ませなければ、と思考を切り替える。


 町の前で高度を落として着地すると、キヒカは杖から肩に移動してきた。出会った頃から時々こうして杖に乗るけれど、普段は並走している事の方が多い。

 今日は……気分もあるかもしれないけれど、帰りの事を考えて体力を温存することにしたのかもしれない。ただそういう気分だった、という可能性は、普通にあるけれど。


「買い物リスト……よし」

「ホー」


 上着のポケットに入れておいた買い物リストを手に持って、町の中に入る。向かうのはこの間来た時にベッドを買ったお店だ。あそこなら、きっと何かしら良い物があるだろう。

 この前来た時は疲れた脳が新しい生活の始まりにいいベッドを買おうと言ったので、町の中をフラフラと歩きまわっていくつかの家具屋さんを覗いたのだ。その末に見つけた物なので、かなり質がいい。


 今回はその時の記憶があるから、まずあの店を目指す。だって良い物があるって知ってるから。その途中で気になる物やキヒカが気にする物があれば見ていこう。

 そう決めて歩いていると、早速何か気になる物があった。

 町に入って少し進んだところにある噴水のある広場の端、縁石の外側の芝生の上にシートを広げて、何かを売っている人が居るのだ。


 嫌な気配は感じないし、キヒカも警戒していない。だから危ない人ではないだろうと判断して、何を売っているのか気になったので近付いて行く。

 小さなものが色々と置いてあるけれど、なんだろう。近付いて行くと、そのシートの上に座っていたお爺さんがこちらを見上げた。

 手には木片と彫刻刀を持っている。


「こんにちは」

「こんにちは。見ていくかい?」

「置物ですか?」

「そうだよ。木彫りだから、全部模様が違う」


 お爺さんが売っていたのは木彫りの置物で、片手に収まるくらいの大きさだ。

 動物の形が多い。特に多いのは、猫だろうか。伸びをしていたり丸まって寝ていたり、すごく可愛い作りだ。せっかくなら何か買って行きたい、と思ってそれらを眺めつつ、肩の上から首を傾げてそれを見ているキヒカを撫でる。


「キヒカ、どれがいいかな」

「ホー」


 よく分からないらしい。それはそうか。私の好きな動物はキヒカ、もといフクロウなのだけれど、流石にここにはなさそうだ。

 それなら猫かな、と思っていたら、お爺さんがキヒカを見ていることに気が付いた。フクロウが珍しいんだろうか。まぁ、普通人の肩に止まって一緒に町の中まで来るフクロウなんて見たことがないか。


「その子を彫ろうか」

「……良いんですか?」

「いいとも。町にはいつくらいまで居るんだい?」

「今日はとりあえず夕方くらいまで……またそのうち来ると思います」

「なら、帰る前にまたおいで」

「はい」


 お爺さんに頭を下げて、一度広場を離れる。思わぬ良い物に出会ったけれど、元々の目的だった買い物もまだ何も終わっていないのだ。

 まずはその買い物をしないといけない。特に急ぎなのはお風呂とキッチンの修復なので、それに必要な物から探していこう。

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