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家具を買う

 町の中をウロチョロして、幾つか入ったことのないお店に入ってみた時に、それを見つけた。

 白を基調にした綺麗な家具。二つ揃いで作られたらしい、装飾も揃えられているそれ。

 見つけた瞬間に近付いて、近くでそれを確認する。私が一目で気に入ったのが分かったのか、キヒカは肩の上で一声鳴いた。


 一つ目は、クローゼット。そこそこの大きさで、下側には引き出しが二段ついている。

 木を白く塗装して、その上で磨いてあるようだ。金具は全て金で、細かい装飾も金で作られているようだ。模様も、金だけで二色のシンプルなつくりだが、それでもすごく綺麗で豪華だと思った。

 クローゼットの扉を開けてみたら、中はシンプルな木の色味でそこもまた気に入った。


 二つ目は、ドレッサー。鏡台と椅子がセットで、鏡の大きさはそれほど大きくはないが、引き出しが多くて深めの引き出しも付いている。

 こちらも白基調に、金の金具がついている。鏡の周りにも装飾がされていた。

 椅子は背もたれのない丸椅子。白い布が綺麗に張られていて、真ん中が少しくぼんでいる作りだ。


「お気に召しましたか?」

「はい。この二つ、頂いても良いですか?」


 店員さんに声を掛けられた時には心は決まっていて、そのまま買って帰ることにした。

 ドレッサーなんて使うのか、という思いもあるが、櫛を置く場所も定まらない今の家を思い出し、今後何かが増えるかもしれないし、と自分に言い聞かせるように考える。

 それに、家に今、鏡がないから。鏡は一つくらいあった方がいいだろう。


 クローゼットは元々探していたし、ちょうどいい。なんて思って、店員さんに引き出しの確認をしてもらったりもして、無事に購入した。

 ついでに、細かく編まれたレースの布を見つけて、それも買った。

 ドレッサーを使わない時は鏡にかけて埃よけにしようと思ったのだ。


 それに私は魔法使いなので、鏡が常に見えているのはちょっと落ち着かない。何かと使う時があるからこそ、他者から勝手に使われる可能性も考えてしまうのだ。

 なので使わない時は隠しておきたい。ちょうどいい感じの、ドレッサーにも合う白いレースも見つけられたことだし、買っておいた方がいいだろう。


 そんなわけで買った家具を纏めて布で包み、浮かせて運んでいく。うっかりぶつけたりしないように、気を付けておかないと。

 帰るまでに壊れたりしたら、私はショックで寝込んでしまう。寝込んでいる暇はないのに。

 そんなことを考えながらお店を出て、再び町の中をフラフラと歩きまわる。


「さて、薪棚探さないと」

「ホー」


 静かにはしていたが、ひとしきりはしゃいで満足したので脳が冷静になってきた。

 そう、今日は薪棚を探さないといけないのだ。ちょっと急ぎ目で。

 しかも三つ探さないといけないから、のんびりはしていられないだろう。この後食料も買いに行かないといけないのだから。


 なんて思いつつ歩きまわって、薪棚がありそうな店を覗いて回る。

 そうして歩き回っているうちに、大通りから外れて静かな通りに出たのだけれど、そこで少し大き目のお店を見つけたので入ってみることにした。

 扉を開けると付けられていた鈴がカラコロと音を立てて、少し暗かった店内に灯りが灯った。


 なんだか少しだけ魔法の気配がするお店だ。魔法の専門店ではないと思うのだけれど、何か魔法の守りなどがあるのだろうか。

 なんて考えながらお店の中を見ている間に、奥からはお店の人だろう男の人が出てきた。

 軽く頭を下げて置かれている物を見て回る。外から見た時に見えた薪棚以外にも、結構な量と種類がありそうだ。


 見ている間は放っておいてくれるらしい店員さんの視線が外れたのを感じながら、室内用と室外用に分けてある薪棚の間を移動する。

 家の外に置くのは、見た目よりも丈夫な物がいい。嵐で飛ばないくらいのしっかりしたもの。

 家の中に置くのは、やっぱり見た目も気に入った物がいい。あと、大小あってデザインが揃ってる物。


 そんなことを考えながら歩きまわって、まず決めたのは外に置く分。

 頑丈そうで、屋根なんかもしっかり作られている幅が広めの薪棚。これを家の壁際の風通しが良さそうな所に置いて、魔法陣を固定する。

 魔法との相性も悪くない素材なので、これが良いだろう。


「決まりました?」

「あ、はい。これを……あと、中に置く分も見たくて」

「分かりました、まずこれが確定ですね」

「はい」


 店員さんに声を掛けられて、ちょっと驚いたけれど確定なのは変わらないので、頷いて中に置く分の薪棚探しに戻った。

 購入決定の分は店員さんが何かしているので、邪魔しないようにしておく。

 そうして引き続き店の中を見て回って、黒色の細い金属製のものを見つけた。


 大小揃って二つ並んでおり、横の部分の装飾は細い金属で綺麗に作られているが、下側はしっかり太めの金属棒で組まれていて、安定感はありそうだ。

 それに、足の部分は床に傷をつけないためなのかカバーが付いている。魔法陣も仕込めそうだし、これが良いだろう。

 そう思って店員さんが居た方を見ると、思っていたよりも近くに店員さんが立っていてちょっとびっくりする。


「それにしますか?」

「はい、この二つを」

「分かりました」


 愛想があるわけではない店員さんだけれど、私は人の事を言えないから仕事が丁寧な人だ、なんて思いながら買い物を済ませた。

 買った薪棚三つを纏めて浮かせ、今日はまた一段と荷物が大きくなったな、なんて考える。

 荷物も増えたし、今日はもう食料を買って帰る支度をした方がいいだろう。

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