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屋根の修理

 町に買い物に行った翌日、私は早速家を直すために張り切って早起きしていた。

 昨日はあの後、他にも必要そうなものと食料を買いこんで帰ってきたのだ。噴水広場を覗いてみたけれど、アルパとお爺さんは居なかったのでそのまま帰ってきた。

 そしてお風呂に入ってご飯を食べて、モフモフのベッドに潜り込んで寝た。


 そのままぐっすり朝まで眠って、今だ。

 そう、今日はこれから、とりあえずさっさとご飯を食べたら家の修理をするのである。

 気合十分。一緒に気合を入れてくれたキヒカも、毛をふっくら膨らませている。


「さあ、やろうキヒカ」

「ホー」


 気合を入れて、まず最初に手に取ったのは新しくなった窓だ。職人さんのところで作ってもらった時に、窓は二枚の作りかと聞かれてそうだと答えたら、合わせて二枚作ってくれたのだ。

 なのでまずはこれを古い物と入れ替える。簡易的だが鍵まで付けて貰った。

 古い窓を枠から外して、窓が無くなったので打ち付けていた板を剥がす。


 そして開いた場所に新しく作ってもらった窓をはめると、そこだけ一気に綺麗になった気がした。窓が問題なく動き、派手な隙間も無い事を確かめたら、これで窓は完成だ。何という手軽さ。

 やっぱり職人さんに頼むと早いし正確だ、なんて思いながら、今度は屋根材を纏めて浮かせて家を出た。

 道具もしっかり持って、向かう先は屋根の上だ。


 屋根の上に上がったら、杖を落とさないようにキヒカに持っていてもらって道具を手に取る。

 まずはこの、雨漏りしている部分の屋根を剥がして下地も剥がして張り替えるのだ。その時に下地の下、土台になる木の板が腐食していたら、そこも替えてしまった方がいいらしいので木の板もしっかりもってきた。


「まずは、これを剥がす」

「ホー」

「よい、せ」


 魔法でやると一気に剥がれすぎるのでは、という不安があったので、今回は手作業でやっている。工具を使ってせっせを剥がしていくのだが、これが何とも、普段魔法で全てをどうにかしている私には辛い作業だった。筋力が足りない。圧倒的に。


 今後家を直していくうえで、筋力と体力も付けた方がいいだろうか。それとも、特別何かしなくてもこうして家を直していれば必要分は身につくのだろうか。

 そんなことを考えながら雨漏り一か所目の屋根を剥がす頃には、すっかり息が上がっていた。


 息を整えつつ、下地に切れ込みを入れてこれも剥がしていく。釘が手に刺さらないように気を付けながら引っぺがして、ひいひい言いながら土台の木を確認する。

 ちょっと弱っているだろうか。雨漏りしていたところだし、水分にやられているのかもしれない。


「替えた、方が、いいかな」

「ホー」


 呼吸は全然整わないけれど、それでも道具を持ち変えて駄目になっている部分の木を切っていく。

 その作業をするためにもう少し屋根を引っぺがしたり何だりと作業が増え、新しい木をはめ込んで固定する所まで作業が進んだ時には既に太陽は頂点に登っていた。

 お腹が空いてきたので道具を置いて一時撤退、キヒカから杖を受け取り、屋根から跳んで地面に着地してお昼ご飯を食べてくる。


 さっさとお昼ご飯を食べて、少し休憩したら再び屋根の上に戻ってきて作業再開だ。

 ちなみに今回の買い出しで柔らかいパンとベーコンと卵を買ってきたので、やっとフライパンが本格的に使われ始めている。

 さっき食べたお昼ご飯もベーコンと卵を焼いて、パンの表面を火で炙った簡単な物だった。簡単だけれど美味しいから大満足だ。


 そんなわけで腹ごしらえも終わったので、作業の続きに手を付ける。午前中に土台は完成させることが出来たので、あとは下地を張って、屋根を作っていく作業になる。

 下地は今後屋根を全面張り替えたいという思考もあって古い物との境目をどうしようかと考えていたのだけれど、少し大きめに切って端を余らせておき、下地材が無い場所が発生しないようにすればいいだろうという結論に至った。


「さあ、やろう」

「ホー」


 気合を入れて、新しく下地材を張る部分に合わせて丸まって一枚になっている下地材を広げて切っていく。これも中々大変だったけれど、キヒカが魔法で大きくなって押さえてくれたのでどうにかなった。

 切った下地材を木材に釘で固定していく。トンカチで指を叩かないように慎重に進めていると、作業の進みはかなり遅い。


 けれどどうにか出来てはいるので、このまま進めて行く。

 時間をかけて下地を固定し終わったら、いよいよ屋根だ。今は一部だけが新しくなって不格好だけれど、そのうち全面張り替えるので気にしない。

 まずは雨漏りをどうにかしないといけないからね、そこを塞ぎ終わったら、次は端からやっていこう。


 そんなことを考えながら、屋根材を一枚ずつ並べていく。教わった通りに溝同士が噛み合うように設置して、一列並べ終わったら固定する。

 固定は専用の、細い糸が付いた釘みたいなものを使う。これも魔物素材らしく、こんなに細いのに屋根がズレたり飛んだりするのを押さえられるくらいには頑丈らしい。


 下から順に並べて行って、一列出来たら固定して。初めてにしては意外といい出来なのでは、と穴の埋まった屋根を眺める頃には、当たりはすっかりオレンジ色に染まっていた。

 夕方にはなってしまったけれど、屋根に穴が開いたまま夜を越さなくていいのは助かった。今後もこの調子で、一部ずつ順番に張り替えていこう。

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