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嵐の被害確認

 嵐の到来から三日が経つと雨は上がって風だけが残り、四日目には風も落ち着いて晴れ間が見えるようになった。

 今回の嵐は過ぎ去ったらしい、と判断した私とキヒカは外に出て、久々の外の空気を思い切り吸い込んで身体を動かしている。


「キヒカ、行ってくる?」

「ホー!」


 元気に飛んでいったキヒカを見送って、杖を両手で持ち上げ身体を左右に揺らす。

 私も運動不足を感じてうずうずしていたけれど、キヒカの方が動きたくてうずうずしていたのだろう。何せキヒカは普段、私が寝ている間は外で活動しているのだから。

 そんなわけでキヒカは久々の森を楽しんで来るだろうから、私はその間に家の外周を確認してくることにした。


 今回、嵐の三日目くらいから廊下の一部とまだ手を付けていないリビングの一部で雨漏りが発生しているので屋根も見に行きたいのだけれど、まずは外回りだ。

 窓の被害は一枚だけだったけれど、さて外側は何がどこまで壊れているのだろうか。


 杖を片手にのんびり歩いて家の外側を見て回ると、物が当たったのか凹んだ壁があったり、元々家に置かれていた物を最初に投げ飛ばして築いた元家具の山が散り散りになっていたり、リビングの暖炉だろうレンガが崩れていたりと、そこそこ被害があったのが確認できた。

 どこからやろう、と考えているところでキヒカが戻ってきたので、一緒に飛んで屋根の上に上がる。


「わぁ」

「ホー」


 屋根の惨状を見て、思わずキヒカと揃って声を出す。

 恐らく雨漏りしている場所だろうか、屋根の一部が捲れてしまっており、屋根の役割を果たせなくなっていた。

 この状態であの程度の雨漏りなのだとしたら、むしろこの屋根は凄く頑張っている方なのだろう。


「直すのは屋根からだね」

「ホー」


 これは、何よりも優先して直さないといけない。

 屋根の惨状をメモして、壊れた屋根の一部を持って地面に降りる。買い物は早めに行かないといけないので、被害をメモして必要な物は町で大工さんに聞いてみた方が良さそうだ。

 ……町の被害状況によっては、大工さんも忙しくて相談出来ないかもしれないけれど。


 食料も買わないといけないので、今回は大荷物になりそうだ。毎回大荷物だけれど。

 急ぎではない物は後に回して、修理のための資材を優先して、それでどのくらいの量になるだろうか。

 あれこれと考えながらメモを書き足して、明日にでも買い物に行かないとなぁと肩の上のキヒカを撫でる。


「明日は早起きだね」

「ホー」


 キヒカも気合十分に、再び森の方へと飛んでいった。明日の早起きに備えて腹ごしらえにでも行ったのだろうか。朝には帰ってくるだろうから、私は私で準備をしないといけない。

 割れた窓を枠ごと外して、空いた空間は板で塞いでおいた。窓の直し方は分からないし、大きさを測っても正確に伝えられる気はしないので、実際の物を持って行ってしまおうという作戦である。


 後は何がいるだろう、とあれこれ確認している間に夜になり、戻って来たキヒカと一緒にお風呂に入って早めにベッドに入った。

 キヒカもベッドの傍に居るので、今日はこのまま家の中に居るのかもしれない。




 そして翌朝、朝日を浴びて気持ち良く目覚めた後は支度を整えて、杖に跨り町を目指す。

 いつも通るあたりを眺めながら進んでいると、あちらこちらに嵐の痕跡が見えた。道を塞ぐ用に倒れた木などを見て、あれは中々大変そうだと思いつつ急いでいるので手は出さずに進む。

 そのうち、今回壊れたところを直し終わってもまだ残っているなら、撤去を手伝うことにしよう。


 なんて思いつつ飛んでいると、いつもよりも賑やかな気がする町に到着した。

 地面に降りて、杖の上から肩の上に移動してきたキヒカを撫でる。

 いつものようにメモを引っ張り出して町に入ると、すぐに修理中の家が視界に入った。


「やっぱり被害は出てるよね」

「ホー」

「お?嬢ちゃん!買い物か?」

「あ、大工さん。家があちこち壊れて……」

「そうか、ちょっと待ってろ」


 修理中の家を見ていたら、別の修理中の家から聞きなれた声がかけられた。

 そちらを見ると、予想通りいつも相談に乗ってもらっている大工さんが作業道具を持って立っている。

 荷物を置いてこっちへ来てくれる大工さんに面倒見がいい……なんて思いながら近付き、見上げつつキヒカが落ちないように手を添えた。


「一番に直したいのはどこだ?」

「屋根です。雨漏りしてて……屋根もちょっと捲れて、壊れてるんです」


 言いながら、何となく持ってきた屋根材の欠片を見せる。

 大工さんはその屋根材を見て、おぉ……とちょっと声を零した。なんだろうか、この何となく持ってきた屋根材の欠片で何かが分かるのだろうか。


「結構古いな……いつ建てた家なんだ?」

「とりあえず、水引の魔道具は二十年前くらいの物でした」

「そんくらいか。今ならもっと軽い屋根材があるから、そっち使った方がいいぞ」

「そうなんですね」


 大工さん曰く、この屋根材は古くて防腐やら撥水やらが大分駄目になってきているんだそうだ。

 なんと、そんなことまで分かるなんて。持ってきて良かった屋根の欠片。

 なんて思っていたら、大工さんはちょうど買い出しに行かないといけない物もあるから、と資材屋さんについて来てくれることになった。


 毎度毎度、どこまでもお世話になっていて申し訳なくなってくるけれど、一人では何がどれだか分からないと目を回す未来が見えるので、お言葉に甘えることにした。

 そのまま道中で他に壊れた所、直したい所の話もして、いつもの資材屋さんへと足を運ぶのだった。

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