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夜更かし日和

 ご飯を食べた後、予定通り元廃村、現更地に足を運び、ついでに封印の確認もしておくことにした。

 猫さんが奥へ押し込んでおいた、と言っていたし心配はないと思うのだけれど、まぁ確認しておいて損もないだろう。

 私と違ってキヒカは時々確認しているみたいだから、本当に心配はない。何かあったらキヒカが知らせてくれるはずなので。


「わあ、なんて綺麗な更地」

「フィーリアお前、廃屋をどこへやったんだ……?」

「火力間違えて塵にしちゃった」

「ホホー」


 他の人に聞かれたら、流石にちょっとは誤魔化したりして答えると思うけれど、二人ならいいかなと思って事実をそのまま声に出す。

 まぁ、最終的には選んで塵にしていた気もするけれど、最初に火力を間違えたのは本当だ。

 そのせいで削られた地面は未だそのままで、雨が降るたびにちょっとした池のようになっている、とキヒカが言っていた。


「流石フィフィ、素晴らしい火力だ」

「これでお前が狩猟の魔法使いじゃないの、時々マジで信じられなくなるんだよな」

「ホー。ホホー」

「まぁ、魔力の固さ的には狩猟にもなれたしね……」

「私はフィフィが道具作りの魔法使いなのすごく素敵だと思うけどな。創造も破壊も出来るじゃん」

「ホー」


 あまりにも破壊の威力が強くて創造がかすまないかな、なんて思った後に、シンディが素敵だと言ってくれるなら何でもいいかと思い直す。

 私は狩猟の魔法使いになったら、多分本当に破壊しか出来ないと思うので、物も作れるという点を誇っていこう。


「……そうだ、テルセロ。どう?嫌な感じする?」

「いや、全く。本当に同じ場所なのか疑うくらいだな」

「そっか。ちなみに封印はあそこ」

「ホー」

「……これ破れるやついないだろ……」


 井戸も潰して封印にしてあるので、場所が分からないかなと思って石の前まで案内する。

 テルセロの顔が若干引き攣っている気もするけれど、それくらい固い封印になっているという事だろう。それならまぁ、悪いことではないはずだ。

 私だけの力じゃなくて、猫さんの助力もあったわけだし、本当に封印は固いはず。


 ということで、今では森にぽっかり空いている更地と化した元廃村の探索はそこそこにして家に戻る。

 もう更地にしてしまったから、見渡せば大体全部見えるし探索するほどの物もないのだ。肝試しがしたかったシンディには悪いけれど、もうあそこで肝試しは出来ないだろう。森の方が雰囲気ある。


 家に戻ってきた後は、家の中ではなく屋外作業場でかまどに火を入れて、お茶を飲みつつおしゃべりに興じることにした。

 ついでに石窯にも火を入れて、焼く直前までの作業は終わらせていたパイを焼く準備をする。

 冬の間に散々作ったから、パイも美味しく作れるようになったのだ。


「そういえば、フィフィはエルベス先輩には会った?」

「エルベス先輩?……去年の初夏の頃に会ったかな」

「ホー?」


 シンディが出した名前は、学生時代の先輩だ。

 そういえば去年に会った時には、まだ仕事の受付もしていなくて、やらないのかと聞かれたような覚えがある。

 もしかしてその件かな、なんて思いつつお茶を飲んだら、シンディはニコニコしながら話の続きを声に出した。


「エルベス先輩、毎年同じころに王都まで来るんだけど、今年はフィフィが依頼の受付始めたって話を聞いたらしくてね、多分依頼に来ると思うよ」

「そうなんだ。去年も何か頼みたいものがあるみたいだったし、何だろう」

「あの人、フロリフの魔法警備の隊長だろ?海とか船とかの関係じゃねえのか?」

「ホー……ホホー?」


 なんであれ、会えるのなら嬉しい。お仕事も、貰えるなら期待に応えられるように頑張ろう。

 キヒカも毎回逃げる割にはエルベス先輩のことは好きなようで、会えるかもと聞いて嬉しそうにしている。


「というかシンディはなんでそんなことまで知ってんだよ」

「フロリフには知り合いがいるからね!」

「距離の問題をそれで解決できると思うなよ」


 テルセロの言葉にハッとする。確かに、何の違和感もなく話を聞いていたけれど、シンディはフロリフの話題まで集められるのか。

 王都からフロリフまでは結構距離があるのだけれど、シンディに距離は関係ないのかもしれない。

 ……もしかして、国の中なら何でも調べられたりするんだろうか。


 なんて考えながらとりあえずパイを焼いて、焼けたパイをおやつにおしゃべりを続ける。

 結局そのまま夕食も外で食べ、夕食を食べ終えた後もしばらく星を見ながら雑談をしていた。

 今日はよく晴れていて星も見えるし、そこまで冷え込んでもいないので夜更かしにはいい日だ。


「……そういやフィーリア、昔星の位置を知らせる道具作ってなかったか?」

「あぁ……作ったかも」

「フィフィが星を気にするの珍しいよね。誰かの依頼だったんだっけ」

「ホー」

「ううん、授業で提出する魔法薬を作るのに星の位置を調べないといけなかったんだけど、見ても全然分からないから道具作って出てきたら分かるようにしたの」

「その方が難易度高いだろ……」


 星に関する懐かしい話題が出たところで、そういえばあの道具はどうしたんだったか、とふと思った。

 今手持ちにない事だけは確かなんだけれど……卒業するときに、学校において来たんだっけ。


「ホー。ホホーホゥホー」

「あ、そっか。エーギルに渡したんだ」

「なんでエーギルに?」

「星が分からんって泣くから」


 学生時代の後輩の事を思い出して、思わず笑う。

 卒業するときにあれこれとお古の道具を渡したけれど、その中の一つがあれだったのだ。

 道具作りの魔法使いの後輩ということでほしがった道具は渡してきたけれど、あれらは役立っているだろうか。ひとつでも役に立っているならいいのだけれど。

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