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去年との違い

 シンディとテルセロが遊びに来る日に合わせて、私はあれこれと準備をしていた。

 テルセロが纏まった休みを取れる日が手紙を送ってから少し先になってしまったということもあり、畑に新たな休憩場所を作ったり木を植えたりもしていたけれど、それも全て終わらせて昨日は一日家でパンを焼いたり今日使う分の生地を捏ねたり鍋でぐつぐつ肉を煮込んだりしていたのだ。


 そして、あれこれ準備して折り畳みの家具も広げて、ウキウキで二人を迎えに行くため家を出た。

 今回の待ち合わせ場所は、町ではなくジリューロの受付とシエルのお店があるあの場所だ。

 まだ村と呼べるほどの規模ではないからちゃんとした呼び名がないけれど、多分近いうちに正式に村になると思う。


 既に四軒目の建物である宿屋が作られ始めているし、なんなら五軒目の建物も建つ予定があるらしいので。ちなみに五軒目は商店になるそうだ。

 今は町から出張営業が来て休憩所で仮営業しているけれど、それがちゃんとしたお店を持っての営業になるんだとか。


 道から少しだけ外れているけれど、王都に向かう旅人たちが使う街道沿いではある場所なので、思ったよりも人が来るのだとシエルが言っていた。

 だからこそ宿も急いで作っているんだろうし……シエルも手伝っているみたいだけれど、シエルは子猫の相手で割と忙しいから、そのうち私も手伝いに行こう。


 なんて考えながら杖に跨って空を飛び、いつも通りジリューロの前に着地する。

 ここ、私の持ち家ということになっているので、着地しても迷惑が掛からないのだ。なんならデリックさんが私の着地用に物を避けておいてくれているので、ここ以外には降りないようにしている。


「二人は最初の馬車で来るって言ってたよね」

「ホー」


 町とここを往復している乗り合い馬車は、最初は朝に来て夕方に町に戻っていたのだけれど、最近では朝に来て昼前に一度町に戻り、昼過ぎにもう一度来て夕方に戻っていく、という二往復が基本になっている。

 それだけ人の往来が増えたのだ。私への依頼も、そこそこ貰っている。


 なんて考えつつぼんやりしていたら、デリックさんが気付いたようで外に出てきてくれた。

 デリックさんは元々シンディの紹介なので、これからシンディが来ますよと言ったら店の中に戻ってしまった。

 ……仲、悪いんだろうか。そんな風には見えなかったけれど。というか、シンディは仲の悪い人を紹介してきたりはしないと思うのだけれど。


 と、少し悩んでいる間に馬車がやってきた。

 荷物をいっぱい抱えているのは休憩所で営業している商人さんだろうか、と降りてくる人を観察して、見慣れた二人が降りてきたところで馬車に近付く。


「フィフィ~!!」

「シンディ、久しぶり」

「久しぶり~!!」

「ホー」

「ようフィーリア」

「テルセロはそんなに久しぶりって感じしないね」

「まぁ冬に会ったしな」

「ホー」


 抱き着いてきたシンディを受け止めて、そのままテルセロを見上げる。

 うん、テルセロはお守りの受け渡しの時にも会ったから、そんなに久しぶりって感じはしない。シンディとは手紙のやり取りはしているけれど会うのは一年ぶりなので、すごく久しぶりという感じがする。

 なんて考えている間に、キヒカがテルセロの肩に乗った。シンディが抱き着いてくる前に飛び立って、そのまま着地場所を探していたのだろう。


「それにしても……なんだかすごく開発が進んでるねぇ」

「そっか、シンディは見るの初めてなんだね」

「うん。話は聞いてたけどね」


 シンディが離れて、あたりを見渡しているのに合わせて私も周囲を見渡してみる。

 建物はまだ三軒しかないけれど、それでも人の往来があるから凄く賑わって見えるのだ。

 大工さんたちがさっそく今日の作業を始めていたりもするし、これから発展していくんだろうなぁ、という賑やかさである。


「ここがフィフィのお店だよね」

「うん」

「じゃあ中にデリックさん居るんだ!顔見ていこー!」


 元気よく建物の中に入っていったシンディを追いかけたら、カウンターの内側で読書中だったらしいデリックさんがすごく面倒くさそうな顔をしていた。

 ……あの顔は知っている。テルセロがよくやってる。つまりは、本当に面倒だと思っているというよりかは、一旦そういう反応をしておこうかな、という顔だ。

 やっぱり仲が悪いわけではないらしい。


「フィフィ、ここにもお守り置いてるの?」

「うん。ルルさんのところに置いてもらってるのよりは強いけど、特別な効果が乗ってるわけじゃないお守りは作り置きしてるの」

「ホー」


 お守りが欲しくて来る人も結構いるので、何か特別な効果を付与したいわけではないなら事足りるくらいの効果のお守りを作っておいて、ここにストックしているのだ。

 これも三種類くらいあるけれど、まぁそんなに手間ではない。作った後はキヒカが持って行ってくれたりもするし。

 そんな話もしつつ、シエルにも声をかけた後で家に向かうことにした。


 今回も、二人はキヒカに乗ってもらう。

 ……やっぱり、なにか鞍のようなものを作るべきだろうか。なんだかんだキヒカに人を運んでもらうこともあるし……

 少し考えておこうかな。シンディに相談したら、いい案がもらえるかもしれないし。

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