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シエルからの緊急連絡

 家で依頼の品の試作をしたり、気分転換にちょっと強めのお守りを作ったりしていたら、キヒカが何かを掴んで飛んできた。

 そんなに慌ててどうしたんだろうか、と思ったら、掴んでいた物を差し出される。

 確認してみたら、シエルとの簡易連絡用魔道具だった。それが、非常時の色に光っている。


 意味を理解して、勢いよく立ち上がる。椅子が倒れたけれどそんな事に構っている余裕はないので無視だ。

 大慌てで靴を履き替えて上着を着こんで、杖を持って家の外に出る。

 外は雪がちらついていたが、それも無視。杖に跨って地面を蹴ると、キヒカが相乗りしてきた。


 速度を上げて、シエルの家へと向かう。

 キヒカが雪除けに魔法を張ってくれたのか、雪が張り付く感覚はない。大急ぎで飛んでいるから付きにくいだけかもしれないけれど、キヒカが何かしらの魔法を使ったのは確かだ。

 そんなことを考えつつ、かなり速度を出した結果もう見えてきたシエルの家に着地するため、徐々に速度を落とし始める。


「……シエルは、家に居るのかな」

「ホー」


 着地して、周囲の様子を確認する。シエルの家には明かりがついているようだから、家に居るのだろう。

 とりあえず、何か荒らされたりした様子はないけれど……と周りを見渡してから、シエルの家の扉をノックする。

 少しして、扉が開いてシエルが顔を出した。すごく驚いた顔をしている。


「わ、先輩!来てくれたんですね!?」

「緊急だったみたいだから……何があったの?」

「とりあえず中にどうぞ!雪降ってたし、寒いでしょう!?」

「ホー」


 とりあえず怪我があったりはしないみたいだけれど、何か緊急事態が発生したのは確かなようだ。普段は整理整頓されているシエルの家のリビングに物が色々出ている。

 一体何が?とキヒカと顔を見合わせていたら、シエルがパタパタとどこかへ行って、籠を持って戻ってきた。


 何の変哲もない普通の籠だ。私もいくつか持っているような、ごく普通の。

 なので、大事なのはこの籠ではなく中身の方なのだろう。シエルがそれを机に置いたので、傍に寄って中を覗き込む。

 そこには布が沢山敷かれていて、その中央に、もぞもぞ動く小さな生き物がいた。


「……猫?」

「そうなんです、子猫なんです。この時期にいるの、流石におかしくないですか?というかこの辺りそもそも猫とか見た事ないのに、子猫が居て……」

「このくらいの子なら自力ではそんなに移動できないと思うけど、そんなに弱ってないね。どこにいたの?」

「うちの玄関の前に……」

「ホー」


 そんなに分かりやすいところに、子猫が一匹で居たのか。

 誰かが捨てていったのだろうか、と思ったけれど、シエル曰く見つけたのは朝で、町から定期の馬車が来る前だったそうだ。

 それなら、誰かが捨てていったとは考えにくい。滞在している人が居ればすぐに分かるくらいには人も建物も少ない村なので。


「ホー。ホホ」

「……本当だ」

「何かありましたか?」

「この子、魔力が宿ってる。もしかしたらそれでこんな時期に生まれたし、親から見捨てられたのかな」

「あー……魔力のある動物って、他から避けられやすいんでしたっけ」

「ホー」


 身近なところで言うとキヒカが魔力を持った動物だが、キヒカ曰く普通の動物は魔力を恐れて攻撃したり避けたりするらしい。

 魔力を持たない普通の動物から魔力を持った動物が生まれると、その気配を嫌がった親が育児放棄をしてしまうことも珍しくないんだとか。


 成体になるまで育っている野生の魔力持ちの動物、というのは、大体すごく幼い頃に親から見捨てられたのに生き残った個体なのだ。

 キヒカもそうだったけれど、魔法を使ってどうにか生き抜いてきて、結果としてすごく強くなっていることが多い。強くないと生き残れないからだ。


 人が繁殖させた個体だったり、親が魔力持ちであればちゃんと庇護を受けて育てるのだけれど……この子は一匹でいたみたいだし、見捨てられてしまった子なのだろう。

 ……けれど、それなら何故シエルの家の前なんて分かりやすいところに居たのだろうか。

 そのおかげでこうして保護されているけれど、疑問は残る。


「魔力のある、猫……もしかして、猫さんが連れてきた?」

「ホー、ホーホホ」

「猫さん、って町の守り猫さんですか?その猫さんが?」

「うん……猫さん、魔力のある場所なら自由に出入りできるみたいだから。少なくとも、私が廃村の井戸に封印をしたのは分かってて、奥に押し込んでおいてくれたみたいだし」

「おわ……それなら、ここくらいは余裕で活動範囲内ですね……もしかして王都の守りも……?」

「どうなんだろう?あの町が好きで見守ってるんだと思うけど」

「ホー」


 魔力のある猫、と言えば、町にいるあの猫さんだ。

 ある程度の魔力がある場所なら好きに出入り口を作れるみたいだし、捨てられた子猫を拾って連れてくるくらい簡単だろう。

 とはいえ、本当に猫さんが関わっているのかは分からないけれど……


 でも、魔力を持って生まれたから親に捨てられた子猫を見つけたら、猫さんならば保護するような気がしている。すごく母性的な雰囲気があったから。

 シエルのところに連れてきたのも、シエルが魔法使いだからなのではないだろうか。

 つまるところ、使い魔にどう?というオススメなのではないか……と、そんなことを考えた。

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