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出来上がり

 パチン、と音を立ててハサミが閉じて、糸が切られて宙に浮いた。

 今日も今日とて行っていたお守り作りは、既に佳境に入っている。

 お守りの本体である魔方陣は完成し、そこに入れる魔石の用意も済んでおり、発動、破損した際に起動する知らせの魔方陣も必要数完成した。


 今は、お守りの外装になる袋を作っていたところだ。縫い合わせた二種類の魔物の皮を、縫い目が下になるようにひっくり返す。

 今回も魔法で縫ったのだが、流石に布のようにサクサク縫えはしないのでそれなりに時間がかかった。

 しかし、これが最後の一つ。これでお守りの外装も完成したので、もう完成……と、いうわけでもなく。もう一つ二つ、作らないといけない物があるのだ。


 まず一つは、お守りをどこかに付ける際に使う紐。これは依頼を受けた際に希望されていた部分で、つまりは装備品に括りつけてどこかへ行かないようにしたい、ということだ。

 なのでこの部分も切れてしまわないように、しっかりした素材で作る必要がある。

 これのための素材も用意してあるし準備も進んでいるのだが、ちょっと素材自体に魔法耐性を持たせたりとあれこれやっていたので、まだ手を付けていない部分なのだ。


 続いて二つ目は、判別のための数字を書き込むなり彫り込むなりするための物。

 普段ならお守りの外装である袋に直接縫い付けるが、今回は素材が素材なのでそれも難しい。出来なくはないが、穴を開けて耐久が下がっては意味がないので別で付けることにした。

 これについても、準備は既に進んでいる。


 アルパのおじいさんに依頼して、数字を彫り込んだ小さな木彫りの飾りを作っておいてもらったのだ。

 大きさとしては外装の袋の上部分に付ければちょうどいい大きさになっている。

 アルパのおじいさんに依頼したのだから当然木製で、ボタンのような大きさと形をしている。円形で、縁だけちょっと盛り上がっている感じだ。

 上部分に穴が開いているので、そこに紐を通してお守りに固定することになる。


 これも当然割れては困るので、現在強度を高めるために薬液に付けたり乾かしたり、あれこれやっているところである。そのせいで時間がかかっているが、その作業もそろそろ終わる……はずだ。

 次の満月の日に空が雲で覆われていたら、完成はもうちょっと先になる。

 でもまぁ、晴れそうだとシエルが言っていたので、多分大丈夫だろう。シエルも占いが特別得意と言うわけではないけれど、私よりは得意だから。


「ふー……ともかく、一番気を遣うところは終わった……」

「ホー、ホホ」

「ありがとう」


 労ってくれたキヒカを撫でて、作り終わった外装を纏めて仕舞う。

 受け渡しとそれまでの保管用に、今回は入れておくための箱もちゃんと用意したのだ。これは特に強化もしていない木の箱だけれど、見た目はとても美しい。

 アルパのおじいさんに色々と依頼をするようになってから、おじいさんが木工品のお店を教えてくれたのだ。お弟子さんがやっているお店なのだ、と。


 おじいさんは今はもう職人を引退して、日々気ままに好きなように木彫りの物を作っているけれど、数年前までは腕利きの職人として工房を持っていたのだという。

 その工房を引き継いだお弟子さんがいるから、気が向いたら行ってみてくれ、と教えてもらった。

 この木箱はそこで買ったものだ。二色の木が組み合わせられた上に、装飾の掘り込みがされている。


 ちなみに、おじいさんからその話を聞いたときに、もう引退した人にあれこれ頼むのは迷惑かと思って依頼はその工房にした方がいいか、と聞いたのだけれど、私が頼むような小規模なものは特に困りもしないから別にいい、と言ってもらった。

 アルパに魔法を教えてもらっているから、そのお礼もかねてと言われては遠慮する方が悪いかと思って、今回も依頼をさせてもらったのだ。


「さて……紐、乾いたかな」

「ホー」


 呟いて、次の作業に使う素材の状態を見に行くことにした。

 乾いていてもいなくても、今日はもう遅いから作業は明日になるだろうけれど。



 そうして、さらに数日。無事に満月が顔を出してくれて素材の強化も完了したので、いよいよお守り作りは最終段階になった。

 用意していた素材を編んで紐を作り、中に魔方陣と魔石を入れた袋の上部に紐を通し、しっかりと縫い閉じる。

 紐の上に番号の書かれた飾りを乗せて、これもしっかり縫って固定する。


 紐の端にはほつれ防止に飾りと金具。固定するのに紐で結んでもいいし、金具で止めてもいいように加工をしておいた。

 最後に一点、お守りの裏側、番号札の真逆の位置に小さな魔石を固定しておく。

 これはお守りの発動用ではなく、中に入れてある魔石の魔力がどれだけ残っているかを確認するためのものだ。


 角は削って丸くしてあるので当たっても痛くないし、割れても別の魔石で代用できるので、ここは簡易的でいい。

 ともかく、これで……


「でき、たー!」

「ホー」


 騎士団から依頼を受けたお守りの作成は、完了した。

 検品しながら一つずつ順番通りになるように木箱に入れていき、全て問題なかったのでテルセロに連絡を入れた。

 完全に勢いで連絡したけれど、まぁ、早い分にはいいだろう。多分。

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