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今年も冬が来た

 朝、寒さに負けそうになりながら目を覚まして、窓の外を見てみたら。

 外は白く染まっていて、今もなお空から雪が降ってきていた。


「初雪……このまま積もりそうだね」

「ホー」


 今年の初雪は遅かった気がするけど、その分この後積もるのかもしれない。

 なんて考えながらキヒカと一緒に窓の外を眺めて、少しぼんやりした後に朝ご飯を食べにキッチンへ行くことにした。

 昨日の夜に作ってちょっと残ったスープがあるのであれを温めるのと、パンを切って表面を焼いて、卵とベーコンを焼いて……


「キヒカ、朝ご飯食べる?」

「ホー……ホホー」


 食べるらしい。寒いからなのか、そういう気分なのかは分からないけれど、キヒカも食べるならベーコンは多めに焼こう。

 そんな風に今日の朝食の内容を決めたら、キッチンのかまどに薪を組んで火をつける。

 キッチンの薪棚にも薪を追加しないとな、と考えながらスープを温めて、空いているスペースにフライパンを置いてベーコンと卵を焼く。


 パンは残っている分が朝ご飯にちょうどよさそうだったので、手で二つに割いてバターを塗り、軽く表面を焼いておいた。

 お皿にパンを乗せて、そこに焼けた卵とベーコンを乗せ、スープを器によそう。

 これで鍋が空になったので、鍋とフライパンはシンクに下ろして、かまどにはケトルを乗せておいた。


「キヒカ、木の実いる?」

「ホー」


 キヒカ用のベーコンは小さめに切って器に入れる。木の実も別の器に入れて、お水も入れ替えたら朝ご飯の支度は完了だ。

 用意したものを食卓に運んで、キヒカと向かい合って座る。

 出来立てアツアツの食事を食べていると、寒さに震えていた身体もどんどん温まっていく感じがする。やっぱり食事は大事だ。冬は生きているだけでエネルギーを使うから。


「今日はどうしようか……」

「ホー。ホホー、ホー」

「そうだねぇ、外での活動は避けたいね」


 朝ご飯を食べながらキヒカと今日の予定について話し合う。

 ジリューロへの依頼は今は新規がなく、依頼があった分は既に作り終わって受付に運んであるので、現在はかなり余裕があるのだ。

 編み物を進めてもいいけれど、どうしようか。


「……あ、そういえばテルセロから連絡来てたね」

「ホー」


 昨日の夜、寝る前に気付いたけれど眠すぎて確認を後回しにしたのを、ふと思い出した。

 朝ご飯を食べ終わったらまずはあれの確認をしないと、なんて考えて、とりあえず手元のパンにかじりつく。

 キヒカもベーコンと木の実をつまんで、お水も飲んでご機嫌だ。もしかしたら昨日は寒さを感じて狩りを早めに切り上げていたのかもしれない。


 キヒカは私より体調管理がしっかりしているからな……なんて、去年の失態を思い出す。

 あれのせいなのか、今年もレイラさんに服屋さんへ連行されたのだ。連行先はいつものお姉さんのお店だった。

 そんなわけで去年しっかり買ったのに、今年も冬服が増えたので、今年は寒さのせいで風邪を引くことはないだろう。……多分。ないといいな。


「まぁ、今年はシエルから買った魔法薬もあるし」

「ホー……ホ」

「油断はしないよ、大丈夫」

「ホー」


 去年のような大騒ぎにはならない、という意味であって、薬があるから油断しても大丈夫、という意味ではないので安心してほしい。

 そんな私の言葉に納得してくれたのか、キヒカはジトっとした目を向けるのをやめてくれた。

 本当に反省したんだから。もうあんなことにはならないように、ちゃんと気を付けているのだ。


 さて、そんな話をしていたら朝ご飯を食べ終わったので、食器を片付けて沸かしておいたお湯でお茶を淹れる。

 蒸らしている間にテルセロとの連絡用魔道具を取りに行って、ダイニングに戻ってきた。

 キヒカはまだのんびりお水を飲んでいたけれど、ベーコンと木の実を入れていたお皿は空いていたのでそれは先にシンクへ持っていく。


「……わぁ、すごい……」

「ホー?」

「うん、騎士団から、正式に依頼が来るかもしれないって。王都にも魔道具工房はあるのにね」

「ホホー。ホー、ホーホゥ」

「なる、ほど……?」


 テルセロからの連絡は、騎士団からの正式な依頼が私の工房に来るかもしれない、という予告だった。騎士団全体ではないけれど、テルセロの所属している隊の分はまとめて頼むことになるから、余裕がなければ断っても平気だと。

 正式な依頼の前に、個人間でやり取りがあるテルセロからのお問い合わせをって事だったみたいだ。


 どうして王都の魔道具工房ではなく、王宮魔術師でもなく、私なのだろうかという疑問はあるけれど……キヒカが言うには、王宮魔術師の環境改善前に仕事を辞めて王都を飛び出した私との関係改善の面もあるのでは、との事だった。

 私一人くらい放っておいてもいい気はするけれど、そうも言っていられないのかもしれない。


 まぁ、なんであれ依頼は大歓迎だ。今なら割と暇だ、と返事を送って、騎士団からの依頼が来たら流石に私も受付に行かないといけないかな、なんて考える。

 詳しく話を聞かないといけないし、量も多いだろうし。


「……とりあえず、今日は編み物でもしようか」

「ホー」


 まぁそれもすぐには来ないだろうから、今日のところはのんびり編み物の続きをしよう。

 今作っているブランケットが結構大きくなってきたのだ。このままどんどん大きくしていって、掛布団の上に重ねる予定なのである。

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