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依頼が来た

 嵐の間家に引きこもってあれこれと作業をして、嵐が止んだ後に町に買い物に行って。

 そうして道具を作ったり畑が嵐でやられた様を観察したり、そんなことをしていたら、デリックさんに渡していた連絡用道具からの反応があった。

 依頼者が来た、という合図だったので、キヒカに依頼書を受け取りがてら様子を見に行ってもらう。


 キヒカが帰って来るのを待ちつつ道具の作成を続けて、ぐっと身体を伸ばしたところでキヒカが戻ってきた。

 足で掴んでいた丸めた紙を差し出されたので受け取って、そのまま水を飲みに行ったのを見送る。

 そして、戻ってきたキヒカを膝に乗せて一緒に内容を確認する。


「ようやく最初の依頼だね」

「ホー。ホホー、ホーホーホゥホー」

「なるほど」


 移動の手間が出来たからこそ、本当に依頼をしたい人しか来なくなったのか。

 自分で依頼に行って、完成したものを受け取りに行って……となると、そこそこ面倒なのかもしれない。まぁ、依頼が減るなら減るで私は困らないので、問題はない。

 とにかく、デリックさんの初仕事だったわけだけれど、依頼書を見る限り問題はなさそうだ。見に行ってくれたキヒカからしても問題はなかったらしい。


「お守りか」

「ホー」

「そうだねぇ」


 多分今までにも言われていた、もっと強いお守りが欲しい、という人からの依頼だろう。

 ルルさんのところにも今まで通り二種類のお守りを置いてもらっているのだけれど、それよりも強い物を、という人には依頼に来てもらうことになったのだ。

 毎回断るのも大変だろうし、ルルさんも要るなら向こうへ、と言えるようになって楽になったと言ってくれた。今まで面倒な事をさせてしまっていて申し訳ない。


「えーっと……自動発動、魔力補充可能、物理と魔法と。……結構高くなりそう」

「ホホー」


 気軽に作って売ったりしたらアデラに怒られそうな感じだ。

 とはいえ、そこまで手間はかからない。お守りなら今までも散々作ってきたし、このくらいならばすぐに作れるだろう。

 材料も手元にある分で作れるな、と判断して、さっそく魔方陣を考える。


「そういえば、嵐の被害もなさそうだった?」

「ホー。ホホー」

「そっか、良かった」


 多分シエルが畑を守るためにあれこれ仕込んで、その範囲にお邪魔した感じになっているんだろう。

 畑を守るとなると道具作りよりも草薬の方が得意だし、草薬はその派生で土地を守ることも出来るから。一点特化で守るのなら、道具作りの方が得意だけれど。


「うちの畑の守りも、もうちょっと考えようか」

「ホー」


 今回はそこまで被害もなかった……まぁ、多少はあったけれど、そもそももううちの畑は今年の分は終わりになっているので問題はなかったけれど、今後広げていくなら守りも一緒に考えないといけない。

 あとは、そう。気を抜いていたら、肥やしにするために刈り取って放置していた草を大方食べてしまった鹿とか、その辺の対策もしないといけない。


「鹿は狩ろうね。狩って燻製肉と煮込み料理を作ろうね」

「ホホー!」


 キヒカもやる気十分だ。これは早速、明日にでも鹿狩りに出ることになりそう。

 なんて、のんびり予定を相談している間にも手を動かして、魔方陣の試作が完成する。

 一旦試してみようか、なんて言いながら魔方陣に魔力を籠めたり調整をしたり、ちょこっと弄っていれば魔方陣は完成した。


 後はこれをしっかり清書して、入れ物を作って魔力の再補充が可能な魔石と一緒に入れればお守りは完成だ。うん、すんなり終わった。

 終わってしまったので、それまで作っていた道具の作成に戻ることにする。

 デリックさんに渡すための暖房は二つほど作って、熱源になる魔石にも魔方陣を彫りこんである。


 なので、今作っているのは薪割用の道具だ。ちょっと大がかりになってしまったけれど、ちゃんと動く。はず。まだ試運転してないから、ちょっと分からないけれど、

 仕組みとしては問題なくても、ちょっと動きが大きかったり、そのせいで危なっかしく見えたりするから、その調整に手間がかかっているのだ。


 自動で斧が振り下ろされる道具を作るのは簡単だけれど、あれはちょっと、見た目が良くないというか……昔一度作って、テルセロとアデラに本気で止められたのだ。なのであれは駄目。

 となると自動で魔法が発射されるようにするのがいいのかな、と思うのだけれど、その魔法の出力調整が中々難しい。

 一回地面をすごい抉って切り込んでしまって、慌てて埋めなおしたりした。


「受け止め部分が必要?」

「ホー。ホホー、ホー」

「そうだね、安全対策も兼ねて……引き合うようにすればいいかな」

「ホー」


 うっかりすっぱり別の物を切ってしまわないように、安全対策はしっかりしないといけない。

 ……底と蓋に魔方陣を仕込んで、その間を魔法が通るようにすればどうにかなる、かな?


「一回やってみよう」

「ホー?」

「箱型にして、中に二つ魔方陣。箱形なら飛び散らないし」

「ホー」


 さっそく魔方陣を用意して、適当な箱の底と蓋に取り付けて動かしてみる。

 ……とりあえず誤作動はなかったな。もう少し、この形を試してみてもいいかもしれない。

 なんて、楽しく試行錯誤していたら日が暮れてきてしまったので、夕食の支度をすることにした。楽しいと時間の経過に気付けないのだけ、ちょっと大変だ。

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