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仕事の説明

 町から家まで移動して馬車を降りると、シエルが駆け寄ってきた。

 これからお向かいさんになる相手だし、気になっていたんだろう。ということでシエルの紹介もして、家の中に入る。

 まずは、家の方の玄関から入って荷物を置いてもらうことにした。店とも繋がっているけれど、ちゃんと家の方だけでも出入り出来るようにしてあるのだ。


「えっと、シンディから家具がある程度あった方がいいって聞いて、一応揃えておいたんですけど……他のが良ければ、入れ替えてください」

「いや、随分立派なのを用意してくれたな……?」

「ホー」


 鳴いたキヒカを撫でて、そっと目を逸らす。家具を選ぶのが楽しくなってしまってあれこれ揃えた、というのは内緒だ。

 だって、家の家具とは選ぶ基準が違って、あれこれ見ていたら楽しくなってしまったのだ。ちゃんと良い物を選んだから、その点で許してほしい。


「ベッドも二つって聞いてたので用意したんですけど、仮で置いてあるだけなので、別の部屋が良ければ言ってください。動かすので」

「お、おぉ……」

「ホー」

「わぁ、すごい、お庭もあるんですね」

「はい。あっちが、受付になります。廊下でも繋がってます」


 弟さん……ユージンさんが中庭を見て嬉しそうにしているのを見て、私も嬉しくなる。ここの地面は家を建てる前にシエルが整えて均しているから、ちょっとした家庭菜園は出来るようになっているはずだ。

 なんてことも説明しつつお店の方に続く廊下もお知らせして、その流れで受付を見に行くことになった。


「……ついでに、仕事の説明もしていいですか?」

「あぁ、頼む」

「えっと、お願いしたいのは道具の作成依頼について、詳細を聞いてほしいんです」


 言いつつ、カウンターの内側に置いておいたメモを手に取る。

 聞いておいてほしいこと、口頭説明だと私も忘れそうだからと、メモを作っておいたのだ。

 まずは何よりも、どういう道具が欲しいのか。乗せたい効果について詳しく聞いておかないと、後から違うと言われても困るので。


 それから形状にこだわりはあるのかどうか。どういった時に使う予定なのか。この辺で、作る形が決まってくる。

 そのほか細かいところもあるけれど、そういうのもメモに書いておいた。

 少し面倒かもしれないけれど、よろしくお願いします。ということで、メモはカウンターの上に戻して、その横に置いておいたものを手に取る。


「それは?」

「これは、簡易的な連絡装置というか……送った信号が私のところに来る道具です。何か困ったこととかがあった時はこの黄色いボタンを、とにかく助けが必要な時はこの赤いボタンを押してください。飛んできます」

「そりゃすごいな……その青いのは?」

「これは、依頼があった時に押してもらえると、依頼の内容をまとめた紙をキヒカが回収に来ます」

「ホー」


 キヒカ用の出入り口の位置もお知らせして、そこには物を置かないようにお願いしておく。

 さて、そこまで説明したので次にお店の奥側、受け渡しを待つ商品を置いておくための場所をお知らせして、ここにまとめて置いてあった物を手に取った。

 小さな木彫りの板で、真ん中で分かれるようになっている。それがいくつもあるのだ。


「依頼を受けたら、依頼者にこの札の片方を渡してください。もう片方は、依頼を纏めた紙と一緒にキヒカに渡してください。道具が完成したら、札をつけてここに持ってくるので、受け取りに来た人から札を受け取って、柄がしっかり合うか確認して受け渡してほしいです」

「なるほどな、分かった。札を持ってこなかったら渡せないってことでいいんだよな?」

「はい。逆に、札が合致したら、依頼を持ってきた人と違う人が受け取りに来ても渡してください。依頼者と受取人の関係とか、そのあたりの詮索は不要です」

「……どんなに怪しくても?」

「つつくと面倒なことも多いので……」


 明らかに不味ければ後から私を通してテルセロに連絡を入れるつもりだ。

 ……テルセロと言えば、ついに遠征を終えて王都に戻ってきたらしく、シンディから店を持つことにしたって聞いたけどマジかと連絡が来ていた。ので、マジですと返事をした。

 追伸として依頼があったらシンディに場所を聞いて、シエルのお店の向かい側にある建物に来てねとも書いておいた。


 まぁともかく、それは置いておいて。

 私の仕事は道具を作って、それを依頼者に渡した札を持つ人に渡すこと。それ以上踏み込むことはしないし、したら危険と面倒があることを知っている。

 関わりません、と最初から姿勢を決めておいて、それを貫いてしまう方が安全だ。何かあったらテルセロに連絡。それだけ守ればいいのである。テルセロ本人からも何かあったら連絡しろと言われているし。


 そんなわけで受付の説明を終えて、詳しいことは基本メモにしてあるから、と伝えておく。それに分からない事とか困ったことがあったら、いつでも呼んでくれれば飛んでくるので。

 と、そんな話をして、その後は家の方の内装を見て回って説明をした。

 ついでにベッドを中庭が見える部屋に動かしたりなどのお手伝いをして、夕方ごろに家に戻ってきた。


 あの家には調理道具や食材も用意してあるし、デリックさんにも確認してもらって問題ないと言ってもらっているので、向こうは問題ないはずだ。

 シエルもいるし、何かあれば連絡を飛ばしてくれることだろう。

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