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・受付の人

 フィフィーリアから依頼の受け方について相談を受けてからひと月以上時間が経ち、シンディの元は進展があったという手紙が届いた。

 それに返事を書きつつ、シンディはフィフィーリアへの依頼受付の人員について思いを馳せる。

 最初に相談を受けた時から、あの人がいいだろうな、というのは何となく考えていたのだ。


 なので、家に家具はある程度あった方がいいだろうか、という相談にはあった方がいいだろう、特にベッドは二つあった方がいいと思う、と具体的に返事を書いていく。

 そして手紙を書き終えて、しっかり封をしてフィフィーリアの元に飛んでいく手紙を見送って、気合を入れて立ち上がった。

 受付に人を雇う、ということになって、一番張り切っていたのはシンディだ。


 理由は単純にフィフィーリアに頼られたから。シンディがお前の本職は情報屋だろうとかなんとか言われるくらいにあちこちの情報を集めているのは、何かあった時にフィフィーリアに頼られたいからだ。

 シンディはなんでも知っているねぇ、と目をキラキラさせていた学生時代、まだ学校に入学したばかり、十二歳だったフィフィーリアが本当に可愛くて、初めてその目を向けられた時から、何でも知っているシンディで居続けようと決心した。


 割とくだらないと自分でも思っているが、それだけでテルセロから本気で引いた目を向けられるくらいにあちこちの情報を集められているのだから、動機なんてその程度で良いのだ。

 ともかく、シンディはフィフィーリアに頼られたかった。そして、この度見事に頼って貰えたのでとても張り切っていた。

 しかも今回は、フィフィーリアへ道具作成の依頼をする受付の人を探すというのだから、いつも以上に気合が入る。


「周りに迷惑かけないようにね」

「分かった!」

「シンディ」

「大丈夫だよ、私がそこまで大きな迷惑をかけた事って実は無いでしょ!」

「それはそうだけどねぇ……」


 兄から心配そうな……というよりかは、暴走してんなぁという諦めの目を向けられながら、シンディは家を出た。

 先ほども言った通り、受付の人には既に目星をつけてある。

 フィフィーリアと依頼者の間に入ってやり取りをする人、ということで、まず何よりフィフィーリアとの相性が悪いといけない。その点でシンディは人を絞り込んでいった。


 後は真面目に仕事をすることも大前提だ。フィフィーリアが人を雇うなんて言い出すのは初めての事ななので、ここで下手に仕事に不真面目な人間を紹介してしまうと、フィフィーリアが「人を雇うというのはそういう事なんだなぁ」とのんびり変な誤学習をしてしまう。

 フィフィーリアはそこで仕事に不真面目な事に怒ったりしないでそのまま受け入れてしまうので、ちゃんと仕事をする人を選ばないといけないのだ。


 真面目であれば、多少不慣れでも不手際があっても、その後に改善してくれればいいのだ。

 フィフィーリアはそのあたりにかなり寛容……というか、他人の行動に対しては大体のことを「そういうもの」としてとりあえず受け入れてしまうから、問題はない。

 とまぁ、そんなわけで、候補を絞り込んでいくのは早かった。


「あ、居た居た。おーい、デリックさーん」

「あ?シンディか。なんだ?」


 声をかけた相手は、日雇いの仕事が張り出されている掲示板を見ていた青年だ。

 今日の仕事はまだ決まっていないようなので、手早くこちらの用事を伝える。


「デリックさん、王都の外で住み込みで働く気ってあります?」

「……お前、俺の事情分かって言ってんだよな?」

「もちろん!一人で行けなんて言いませんよ!」


 シンディは人を雇うというフィフィーリアに、ざっくりで良いから給料が月いくらになるか教えてほしい、と先に連絡してあった。

 何度かの手紙のやり取りで修正も入り、今シンディの手元には正確な月給の記されたメモがあるのである。

 そのメモをデリックに見せて、にっこり笑う。


「これが月給で、行ってすぐは家具とか色々必要だから別でお金出してくれるそうです。その他にも何か困った時には相談したら多分どうにかしてくれます」

「妙にいい条件だけどよ……仕事の内容は?」

「道具作りの魔法使いへの作成依頼の受付です。デリックさん文字の読み書き出来ますよね?」

「簡単なのならな」

「じゃあ問題ないです!」


 条件はかなりいい仕事だが、デリックは悩むような顔をしつつ頷かない。

 その理由もシンディは当然知っていて声をかけているので、メモをしまいつつ言葉を続ける。


「場所は王都から西に行ったところにある、ガルラチの町のさらに西です。町までは、馬車で一時間ってところですね。開拓され始めたばっかりの場所で、周りは森です。んで、お向かいさんには草薬の魔法使いが住んでます。どうですか?」

「草薬の……」

「そっちの腕も保証しますよ」


 まだ悩んでいそうなデリックに、どうするか決めたら教えてくれと言い残してシンディはご機嫌にその場を去った。

 無理やり勧誘するのではなく、自分から行きたいと言って欲しいのだ。その方が仕事のやる気も出るだろうし。


 というわけで、その後は王都の中をウロウロして顔見知りと話したりよく行くカフェに寄ったりして、今日は何をしているのかと聞かれたら親友が人を雇いたいらしいから、そのお手伝いをしているのだと答えておいた。

 その翌日、デリックから誘いを受けると返事をもらったシンディは、フィフィーリアに受付の人が決まったからいつ行けばいいかを教えてくれ、と手紙を出したのだった。

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