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建物の準備

 シエルの家の向かい側に建物を建てて欲しい、という依頼を大工さんのところに持っていき、その詳細について話し合い、明日、より詳しく場所を決めてその範囲の伐採を行うために、シエルの家の方で合流することになった。

 これでまず一つ目の用事が終わったので、続いて依頼されていた道具を納品に向かう。


 今は私が依頼人を探して納品に行っているけれど、受付が完成したら受け渡しもそちらで出来るようになるだろう。

 それだけでも楽になりそうだな、なんて考えながら町の中をのんびりと進んでいき、依頼人へ声をかけた。働いているお店の場所を聞いておいたから、思ったよりも簡単に見つけることが出来た。


「えっと、いくつかあるので説明しますね」

「おう」


 そこそこの量になったからまとめて浮かせて運んできたものを下ろして、順番に説明する。

 まず一つ目が、浮かせる荷物を指定して引き上げるためにロープと接続させる、木の板に彫り込んだ魔方陣。

 一つだけお手本としてロープを通してあるけれど、残りはそのままなので、そちらにはご自分でロープを通してもらう。


 二つ目、その魔方陣と引き合う、持ち上げる方の魔方陣。こちらが引く側だ。

 これは棒の中にロープを通して、魔方陣の逆側から出ているロープを引くと魔石が魔方陣から離れて効果がなくなる、というようにしておいた。

 魔石の魔力が切れたらロープを全て引き出して、別の魔石に取り換えればその後も使える。


 そして、物を軽くする魔方陣を刺しゅうした布。これはロープを繋ぐ木彫りの魔方陣と同じ数を用意してある。

 最後に、その布の魔方陣を発動させるための魔石を触れさせるのを楽にする目的で作った手袋。ちょっと石が手のひらに食い込んで痛いかもしれないけれど、そもそも軽くしてあるから大丈夫だと思う。一応、手のひら側の布は厚くしておいた。


 それらの説明をして、使い方を一通り見せる。

 続いてやってみてもらって、問題がなさそうだったので道具を受け渡して代金を受け取った。

 これまた中々に纏まった額だ。割と面倒な部分もあったけれど楽しく作れたので、その結果がこれだと思うと嬉しくなる。


 そんなわけでルンルンで、その後はルルさんにマニキュアを納品に行ったり、ヒヴィカのインクで足りなくなりそうな消耗品を買い込んだり、食料と今日の夕食を買ったりして家に戻った。

 そして、翌日。外が良く晴れているのを確かめて、着替えて日課を終わらせた後はシエルの家へ向かう。


 正確にはそのお向かいに用事があるのだが、まぁあそこにはまだシエルの家と基本無人の簡易宿しかないので、シエルの家としか言いようがないのだ。

 建物が増えてきたらそのうち別の呼び方が付いたりするだろうか、なんて考えながら杖に跨って空を飛び、杖の先に相乗りして風を浴びているキヒカを撫でる。


「あ、フィフィーリアせんぱーい!おはようございまーす!」

「おはようシエル」

「ホー」

「キヒカもおはようございます。大工さん、休憩所に来てますよ!」

「分かった、ありがとう」


 約束していた時間よりまだ少し早いけれど、大工さんは到着済みらしい。

 お待たせしちゃってたら悪いな、と思いつつ杖から肩に移動してきたキヒカを撫でて、休憩所に向かった。ここは結局休憩所なのか。まぁ、宿ではないのか。無人だし、お金は取っていないし。

 そのうち、ここを訪れる人が増えたりしたら、ちゃんと宿になったりするんだろうか。


「ホー」

「おぉ、キヒカ。嬢ちゃんもおはようさん」

「おはようございます」

「ホー」


 キヒカは大工さんにかなり懐いているので、休憩所の外で座っていた大工さんを見つけて、そちらに飛んで行った。

 大工さんの横に着地して、少し撫でられて戻ってくる。……懐いているなぁ……

 私以外に積極的に撫でられに行くキヒカを見るのは、学生時代以来だ。あの頃は先生にたまに撫でてもらっていた。


 懐かしい、先生はお元気だろうか。なんて、学生時代に思いを馳せつつ、大工さんと一緒に建物の予定地に向かう。

 相も変わらず周りは森なので、場所と範囲を決めたら木を伐採していく。

 シエルの家を建てた時と同じように、この木は町まで運んで資材にしてもらう予定だ。


 範囲を決めて、今回もシエルに手伝って貰って根元の方から木を伐る。

 伐り終わったら木の枝を落として丸太にして、それを浮かせて町まで運ぶ用意をする。こちらはキヒカが手伝ってくれて、何なら町まで置きに行ってくれた。

 なので、大きくなって木を運んでいくキヒカを見送って、次は残された枝などの後処理をして、地面の状態を整えることになった。


「シエル、やり方教えてくれる?」

「はい!任せてください!」


 土づくりは草薬の魔法使いの領域なので、シエルにやり方を聞きながら作業を進めていく。

 まずは枝を一か所に集めて燃やし、灰を地面に撒いて耕して……そんな作業をしながら大工さんと家の構造やら、向きやら何やらの話を進める。

 あらかじめ家の設計図は用意してはいたけれど、実際の土地を見てどうするかという話だ。


 私としては住みやすい家、使いやすい店であればいいなと思う程度なので、何か気になる部分があるのなら大工さんにお任せしたい。

 ただでさえ急いでもらってしまっているし、私からはこれ以上の我儘とかは言うつもりはないのだ。

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