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解決方法

 町から帰ってきた翌日、私はシンディに手紙を出したり料理をしたり、新しく依頼として受けた道具を作るために試作をしたりしていた。

 キヒカと一緒に、思いついたことを紙に書き連ねつつ今回の目的に合っていそうな形を探る。

 今回町で受けた依頼は、重い物を簡単に持ち上げられる道具はないか、という物だった。


 どういう形が好ましいかを探るためにも、話はそこそこ詳しく聞いてある。依頼人は仕事で何かと重い物を持つことが多く、腰痛に悩まされていると。だから、荷物を軽くしたいのだと。

 となると、道具の形は二つに分かれる。荷物を軽くするか、身体を強化するか、だ。


 荷物を軽くするとなると、身体への負担はあまりない。

 ただし、どういう形にするかという問題が大きい。何せ重たいただ一つを運びたいわけではなく、仕事で毎日のように使うのだから、設置や展開に時間がかかるのは避けたいところだ。

 ついでに、丈夫にしないとすぐに摩耗して駄目になるだろうし。


 続いて身体を強化する方だけれど、これは少しばかり身体への負担がある。

 依頼人は腰痛持ちだそうだから、出来れば避けたい形だ。身体を強化すると、確かに荷物は軽く感じるだろうし道具を使っている時は良いのだけれど、外した後に疲労感が一気に来たりする。

 動けると思って腰を酷使した結果、悪化してしまっては意味がないのだ。


「となると、荷物を軽くするしかないよね」

「ホー」


 荷物の運び方は、前に抱えるか肩に乗せるか、らしい。そこまで持ち上げる段階で腰に負担がかかっているんだろうか、なんて思いつつ、どういう形にするか、ぼんやりとペンを走らせる。

 荷物を運ぶだけなら、少し浮かぶ台車を作って、それを引っ張る形にするのが早いとは思う。けれどそれだと結局目的の場所に着いたら自力で下ろさないといけなくて、腰への負担は変わらなさそうだ。


「うーん……しゃがまないのが、理想だよねぇ」

「ホホー」


 流石に全くしゃがまないで物を動かす、というのは難しいかもしれないけれど、しゃがんだり立ったりの回数を減らせれば少しは楽になるのではないだろうか。

 ならば、運ぶものに最初にまとめて印をつけて、後から順番に浮かせれるようにするのがいいだろうか。……流石に魔法使い以外の人に浮かぶ何かを作るのは怖いから、軽くするくらいにするけれど。


「吸着の魔方陣、魔石でオンオフ切り替え……」

「ホー。ホホー、ホーホホ」

「うん、そうだね。木彫りか何かで、ロープと繋いで、いくつか作って……外し方を少し考えないと、かな?」

「ホー、ホー」

「棒なら確かに、引き上げれるか。じゃあ、持ち上げはそれで、軽くする方は……」

「ホー。ホホーホーホー」


 キヒカとの話し合いで、なんとなく作りたい形が定まってきた。

 形としては、三つの道具を組み合わせることになりそうだ。腰への負担を考えて、しゃがまずに物を持ち上げるために道具が二つ。軽くして持ち運ぶために、さらに一つ。

 ロープとまとめて軽くする部分も作ってしまえばいいのだろうけれど、あまりあれこれ纏めると不具合が出やすくなる。


 多少物が増えるのを許容できるのであれば別で用意した方が安定するし、壊れた時の交換も安易になるので、今回は別々で作ることにしよう。

 作る形が定まったら、後はそれに向けて他に必要な部分を考えていく。

 今回であれば、あとは物を軽くするために必要な魔力の供給方法だろうか。


「ロープを魔通素材にして、持ち上げる時の魔力を通す……と、それを外した時に発動が止まるか」

「ホー」


 さて、どうしようか。キヒカと一緒にあれこれ言い合いながら考えて、少し休憩したり別の物を作ったりしながら良い案が浮かぶのを待つ。

 ルルさんからマニキュアの注文も受けたので、ひとまずそれを作りながら考えようか。



 マニキュア作りは順調だ。材料は以前多めに作っておいたので、今回はそこまで時間もかからない。

 そんなわけで気ままにのんびり、ここ二日ほどマニキュアを作ったり道具の試作をしてみたりしていたのだけれど、今日は作業を途中で中断して家の中に戻ってきた。

 シンディから手紙の返事が来たのだ。ちょうど切りの良いところだったし、こちらを優先してもいいだろう。


「おわ、結構分厚い」

「ホー」


 リビングに手紙を持ってきたら、お昼寝中だったキヒカも気になるのか膝の上に乗ってきたので、手紙を開いて一緒に内容を確認する。

 手紙の内容は、道具作りの魔法使いとしての仕事が順調そうで嬉しい、というのと、けれど無理はしないでほしいという心配の言葉。そしてその後に、相談していた以来の受け方についての事が書かれている。


「依頼受け付けの場所を、別で作る……」

「ホー」

「受付に人を雇って、話を聞いてまとめて貰う」

「ホホー」

「確かに、この形が多いよねぇ」

「ホー」


 シンディからしても、その形がいいと思うのだろう。

 多くの道具工房で取られている形だけれど、それはつまり安定しているという事だ。

 私に直接つながると分かっている受付があるなら、依頼がある人はそっちに来てくれるだろうし……うん、やっぱり、これが安定なんだろう。


「人を雇う……」

「ホー。ホホーホー」

「そうだね、それも聞いてみようか」


 問題があるとすれば、私が人を雇えるのだろうかというところだけれど、それについてはシンディにお礼を言うのと一緒に聞いてみようという話になった。

 あとは受付の場所だけれど、これは候補としては二か所なので、確認も簡単だ。

 まだ完全ではなくても解決方法は見つかった、進展はあった、と言うことで気分は軽くなった。

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