表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
166/194

需要はあったらしい

 大工さんの奥様方に頼まれた自動回転魔道具、もとい洗濯機は無事に稼働して、奥様方に引き渡された。

 それに伴って私の手元には結構纏まった額の報酬が入り、これは今日の夕飯を豪華にしてしまってもいいのではないだろうか、とキヒカと話し合っていたのだけれど、そこで他の人から声を掛けられ、道具の制作を相談された。


 その人の話をしっかり聞いて、依頼の内容を纏めて、ざっくりした金額と作成にかかる期間を伝えて別れ、メモをちゃんと荷物に入れてルルさんのところへ向かう。

 お守りは相変わらず売れているようで、まだ変わらないペースで作り続けているのだ。


「こんにちは」

「ホー」

「いらっしゃい、待ってたよー」


 待たれていたらしい。お守りが売り切れたのだろうかと思ったけれど、カウンターの横にはまだお守りが残っているのが見える。

 じゃあほかに何か用事があったかな、と首を傾げつつカウンターに歩み寄り、とりあえず荷物からお守りの入っている小箱を引っ張り出す。


 ひとまずその精算を終わらせてからルルさんのお話を聞くことになったのだけれど、そこで出された話題で私は少し驚いて、ルルさんをじっと見つめてしまった。

 ルルさんもこっちをじっと見つめている。肩の上で、キヒカがホーと鳴いた。


「道具の作成依頼、ここに来てるんですか……」

「お守りとマニキュアがここにあるからかな、取り次いでくれっていう人が三人くらいね」

「ご迷惑をおかけしまして……」

「ホー」

「いいのよ、そんなに手間でもないし」


 私が道具作りの依頼を受け始めた、という話がじんわり広がって、依頼をしたいという人がロヒ・レメクにやってきていたらしい。

 私はこの町に住んではいないし、いつ来るのかも分からないから、確実に顔を出すだろうここに伝言を残している……という感じなのだろうか。

 確かに他に方法はなさそうだけれど、ルルさんに迷惑が掛かる前に対策を考えないといけなさそうだ。


 どうしたらいいだろうか、と考えながらルルさんから依頼の内容を聞いて、とりあえず次に来る日程を決めておく。

 依頼したい人が居たら、その日に噴水あたりで待っていてくれと言っておいてもらおう。

 対処法が思いつくまでルルさんには迷惑をかけてしまうので、何かお詫びとお礼を持ってこようかな。


 なんて考えながら、ルルさんに伝言をお願いして、どういう人が依頼を持ってきたのかを聞いておく。

 流石にどういう道具を欲しているのかまで話していく人はいなかったようだけれど、依頼人は町の人だそうなので、私が町に来る時には確実に会えるだろう。


「そういえば、マニキュアも売れたんですね」

「うん。在庫はまだあるけど、そろそろ追加もお願いしようかな」

「分かりました、作っておきます」


 そこそこ値が張るから売れるにしても時間がかかりそうだと思っていたのだけれど、思ったより売れているらしい。

 気に入って貰えているようで嬉しい限りだ。これは、学生時代から気に入ってくれる女の子が多かったし、あの頃と同じ評価が得られたのであれば嬉しい。

 そんなことを思いながらロヒ・レメクを出て、歩きながらキヒカに話しかける。


「道具作りの魔法使い、思ったより需要があったのかな」

「ホー」


 仕事の依頼が全くないよりも良いな、と思いつつ、今日受けた分の依頼に必要な物を揃えるためにのんびり町を進んでいく。

 とりあえず、一度ヒヴィカのインクに行って足りなくなりそうな物を揃えないといけない。

 その後に材料を改めて考えて、居るものをある程度買い集めて戻らないと……


「……依頼の受け方、どうしようか」

「ホー……ホホー、ホ」

「うーん、そうだね、そんなに頻繁には、来ないだろうし」

「ホホー、ホー、ホー」

「……そうだね、シンディに相談してみようか」

「ホー」


 町で誰かに伝言を頼むとなると二度手間だし、何より伝言を頼む人の負担になってしまう。

 ルルさんとレイラさんならば確実に私まで伝言が届くけれど、二人の負担にはなりたくないので何か別の方法を取りたい。

 とはいえ、書面でのやり取りはちょっと、確実性に欠けるというか何度もやり取りをしてどういう物を欲しているのか確かめないといけなくて大変なのだ。


 さてどうしたものか、と困ってしまったので、一度シンディに相談してみることにした。

 シンディならば、何かいい案を持っているかもしれない。なにせシンディは顔が広い。あらゆるところに知り合いがいるから、いろんな方法を知っているのだ。

 帰ったら手紙を書こう、と決めて内容を考えながら進み、ヒヴィカのインクで必要な物を揃える。


 ヒヴィカのインクの店主さんからは町の人たちが魔石を買いに来るようになった、という話を聞いたので、売り上げに多少の貢献は出来ているようで少し嬉しい。

 何かとお世話になっているから、私が道具を作って売っている影響がいい方向で出ていたらいいな、と思ってはいたのだ。


 魔石だけだとしても、そこそこの大きさの物ならそこそこの値もするし、売り上げとしては割と影響する部分なのではなかろうか。

 元々趣味のお店だとは聞いているけれど、今後も長く続いてほしいので売り上げがあるのは良いことだと信じておこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ