さあ帰ろう
シンディと一緒に三人であれやこれやと買い物をして回り、買わなければとメモしてきたものは全て見繕った後。その翌日も、買い物をしようと予定を立てていたので、二日目もやはりシンディと一緒に王都の中を歩いて回った。
昨日とは違って魔法関係のお店以外も見て回ったので、私はシンディとシエルについて回るだけだったのだけれど、まるで学生の頃に戻ったような感覚で大いに楽しんだ。
そんなわけで、二日間の買い物を終えて、買い忘れもないことを確認したので、私たちはガルラチの町へ帰ることにした。
シンディは、次は私が遊びに行くね!と言ってくれたので、またうちに来てくれるらしい。楽しみにしていよう。
そんな話をしてシンディと別れ、王都を出て荷物を浮かせる。
「ホー。ホホーホー」
「そう?じゃあお願いしようかな」
「ホー」
キヒカが私の荷物を先に家に置いてきてくれる、というので、それに甘えて荷物を一つにまとめる。
しっかり纏まったら、大きくなったキヒカがそれを掴んで飛んで行ったので、私はシエルの荷物を半分ほど運ぶことにした。ちょうど手が空いたからね。
「キヒカは本当にすごいですねぇ……」
「うん。キヒカは凄いんだよ」
「嬉しそうですねフィフィーリア先輩」
言いながら笑ったシエルに、だってキヒカは本当にすごいんだもの、と言葉を続ける。
私がキヒカの事を大好きなのは、知り合いならみんな知っていることなので、今更何をと思うかもしれないが、やっぱり何度でも言いたいだろう。
キヒカは何かと足りていない私の考えや行動を修正してくれるくらいだし、私より人間の生活に詳しいかもしれないフクロウなのだ。これを褒めなくてなんとする。
「フィフィーリア先輩とキヒカを見てると、私も使い魔が欲しくなるくらいですよ」
「フクロウ?」
「いやぁ、どうでしょう。猫とかも好きですよ。出来れば畑のお手伝いしてくれる子がいいです」
「なら、猫か。狼とかになると、どうだろう」
「まぁ結局その子に寄りますよね」
「そうだね」
魔法使いの使い魔というのは、何の制限もなく選べるわけではない。
双方の同意と魔力と相性など、確かめないといけないことはそこそこあるので、欲しいからと言ってすぐに選べるものでもないのだ。
使い魔との出会いは縁である、と学生時代に先生がよく言っていた。それで言うと、私がキヒカと出会えたのは縁があったからになるのだろう。
私はつくづく縁に恵まれて、それによって生かされているのだなぁとしみじみ考えながら、畑の手伝いをしてくれる子かぁ、と思考を回す。
魔法使いの使い魔となれば、動物は何であれある程度何かしらを手伝ってはくれるだろうけれど、出来れば元々そういう事と相性のいい種族が望ましいだろう。
フクロウ、いいと思うのだけれど。ネズミ退治とか得意だし。シエルが猫を上げたのは、そのあたりが理由だろうし。
「……猫と言えば、シエルは町の猫さんに会った?」
「町の……あ、前に言ってた、なにやら見守られている気配がする魔力の方。会ったことはないですね」
「うん。まだ会ってないのか。……人が多いと出て来にくいのかな……イリアス先輩の時は町中に来てたけど……」
「イリアス先輩とフィフィーリア先輩になら、そりゃ会いに来ると思いますよ。私はそこまで強くもないし、直接会いに来る必要もないから見守りの姿勢なのでは?」
行きと同じようにぴょんぴょん跳ねて移動しつつ、シエルの言葉に首を傾げる。
どうなのだろう。あの猫さんは、強さで見て会いに行くかどうかを決めるタイプには見えなかったけれど……でも、見守っているというのなら、確かにあの猫さんなのだろう。
町の守り方がかなり母性的というか、庇護の比率が高かった感じだから。……あぁ、それならむしろ……
「直接会った時の影響が不安だから、会いには来てないのか」
「あぁ、なるほどですねぇ」
猫さんは自分が強いのが分かっているから、魔力でなんとなく自分の存在を推し量れる魔法使いの前に出てくるのは相手を選ぶのだろう。
多分会いたいと言ったら出てきてくれるとは思うけれど、シエルも町の中に留まるわけではないし、猫さんの裁量に任せた方がいいだろう。
と、そんなことを話しながら移動していく事三日。行きと同じルート、同じ日程で問題なく町まで戻ってきた。
途中で荷物を置いたキヒカが戻ってきて一緒に移動したりもしていたので、楽しい移動時間ではあった。が、疲れるものは疲れる。
というわけで、シエルの荷物を町の宿に下ろした後は、町で食料を買ってキヒカと一緒に飛んで家に帰ることにした。
程々に長い外出だったと思うが、家の中は特に荒れてもなかったとキヒカが教えてくれたので、特に心配もなく家に戻り、とりあえず換気を行った。
「……ふぅ……帰ってきた……」
「ホー」
キヒカが屋外作業場に置いておいてくれた荷物も家の中に運び込んで、換気が終わったら窓を閉めて回る。
そうして、リビングのソファに腰を下ろして、キヒカと顔を見合わせた。
やっぱり我が家が落ち着くのだ。これで色々作れるようになったし、本格的に道具作りの魔法使いとして活動できそうだ。