表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/200

・王都の友人たち

 王都の空は今日も良く晴れて、街は人々の活気で賑わっている。

 今日は非番なのでその活気に釣られるように街に出て、商店街を進んだところで凄い速度でこちらへ走ってくる人影を見つけて思わず顔が引きつった。

 今日の用事の一つだったとはいえ、あの速度は明らかにもう既に知っている速度だ。


「テルセロォ!」

「叫ばなくても聞こえてる……」

「フィフィが仕事辞めたって、王都出たって!知っている事を全て話せぇ!」

「落ち着けよ、説明のために来たんだよ俺だって」


 服を掴んで揺さぶりながら叫ぶように言う友人に、予想はしていたがやっぱりこうなったか、とため息を吐く。なんで既に知っているんだ、とは言わない。なんか知らんが大体の事は知っているのだ、こいつは。

 掴みやすい所を掴んだから腹当たりの服を掴まれているが、この勢いは無理なく掴めるなら確実に胸倉を掴んで来ていた勢いだ。


「とりあえず無事だよ。シンディにも伝えてくれって連絡が来た」

「どこにいるの?」

「聞いてない。そのうち、落ち着いたら連絡するらしい」

「フィフィ~……えーん……」


 先ほどの勢いから一転、駄々を捏ねるように横に揺れるシンディに、とりあえず服放してくんねぇかなと思いつつもう一度ため息を吐く。

 同じ城勤めとは言え、仕事が被ることも無ければ偶然行き会うほど近い職場でもなかった結果、王宮魔術師になった友人がその職を辞して王都から飛び出した、と知ったのはそれなりに日数が経ってからだった。


 連絡手段はあったので連絡を取ってみたら、ひとまず元気では居るようだった。シンディにも伝えておいてくれと言われた時からこの騒ぎは予想していたが、やはり予想通りの荒れ具合だ。

 王都を飛び出した友人、フィフィーリアの学生時代の同室で親友である、このシンディという女は、フィフィーリアの事が大好きで大事で仕方がない生き物である。


「フィフィ……フィフィが辞めたって聞いたから、王宮魔術師のあれやこれやを調べたんだけどね」

「なんで調べられるんだよ」

「仕事の量がとんでもないって。他の数倍は普通にあって、魔法関係ないことまで仕事があるんだって」

「……確かにいつも、忙しそうではあるが……あれ魔法関係ないのか?」

「ないらしい。半分くらいは関係なくて、四分の一くらいは関係無くはないけど他でも出来る事だって」

「もう一回言うわ。なんで調べられてんだよ」


 フィフィーリア溺愛親友枠であるこのシンディという女、何故かありとあらゆるところに知り合いがいて意味が分からないほどのとんでもなく広い情報網を持っている。

 王都内の事は何でも、大抵調べようと思えば調べられるし、王都に限らずあらゆる地域の情報まで持っている事があるとんでもない女だ。


 これでフィフィーリアを意図的に害した者を見つけたりしたが最後、情報網からあらゆるところにそいつの悪評が届くので本当に恐ろしい。

 友人としてそれなりに良い関係が築けていることに、テルセロは何度胸を撫でおろしたことか。


「まぁ、フィーリアが限界迎えるくらいのものではあったんだろうなぁ……」

「テルセロから上層部におかしいだろォ!って言えないの?」

「言ったところで取り合われん。騎士なんて特に縦社会だからな」

「むーん……」


 話しながら、これ以上立ち話をするのも、ということで適当に歩くことにした。

 話題は当然、王都から飛び出した共通の友人であるフィフィーリアの事だ。


 フィフィーリアという名の魔法使いは、特徴としてまず何よりも、いつでも変わらない鉄仮面が上げられる。表情筋が死滅したのかと思うほどにいつも変わらない表情は、周りからの勘違いを加速させる一番の要因だった。

 それなりの時間一緒にいれば、何となく表情の変化も見て取れるようになるが、そこまで仲良くなるのが難しい、なんともとっつきにくい生き物である。


 表情筋が死滅していても、その顔立ちが整っていることに変わりはなく。本人の気質と合わない冷たい印象を抱かれ、無表情のまま淡々と与えられた課題をこなす故に余裕があると思われる。

 そして、その食い違いが限界を迎え、フィフィーリアがもうこれ以上は無理だ、と認識した瞬間に、爆発したように全てから手を引いて消えていくという特性がある。


 今回の辞職も王都出奔もその爆発だろう。

 人よりもかなり我慢強いので、そうなる事は珍しい。二人がその限界を迎えたフィフィーリアを知っていたのは、フィフィーリアが学生時代に他者の仕事まで全てを押し付けられたことがあったからだ。

 到底一人でこなせるようなものではないそれをひと月以上こなしたのちの爆発だったので、耐えられる上限値がとんでもなく高いことは知っている。


「フィフィ……大丈夫かな……」

「連絡してみる。まぁ、原因から離れて好きにやってるなら……大丈夫じゃねぇか?」

「そりゃ、フィフィは強いけどさ。でもだってあんなに可愛いんだよ!?ハニーブラウンの髪に蜂蜜色の目だよ!?もう蜂蜜の妖精さんじゃん!」

「落ち着けよ、お前はフィーリアの事好きすぎるんだよ」


 放っておくといつまでも語るので止めさせて、何と連絡を入れたものかと考える。

 とりあえず、シンディに伝えたことは書くべきだろう。あと、シンディが暴走しかけていると。それだけで、大体の事は伝わるはずだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ