表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/194

道具を買いに

 シエルの新居建築が始まり、私はちょろちょろと町に行っては建材を運ぶのを手伝い、建築の進捗を眺め、すごいなぁこれがプロの技かぁとぼんやり感想を呟く日々を送っていた。

 そしてシエルは、私と同じように建材運びを手伝ったり、徐々に出来ていく我が家に感嘆の声を溢したり、私の畑の相談に乗って畑を見に来てくれたりしている。

 彼女も魔法使いなので、飛ばないにしても建材を浮かべて運ぶくらいは当然出来るのだ。


 畑の方も、おかげさまで随分と順調である。次に育てるものや、畑を広げる時の相談にまで乗ってもらった。やっぱり草薬の魔法使いは頼れる存在だ。

 と、そんな風に進んでいく建築を眺めてざっくりひと月ほど。重い建材を運んだり、それを持ち上げたり使うところまで魔法で浮かせたり、そんな風に魔法使い二人でちょろちょろお手伝いしていたら、建築は非常に順調に進んだらしい。


 秋の嵐が来る前に全てが終わりそうだ、と聞いてシエルと二人で喜び、ついでに予定を立てた。

 何かというと、前から家の目途が立ったら行こうと言っていた、魔道具と魔法薬のための道具を買いに行くのだ。

 シエルが新居の家具を見に行くのについて行って、私も買おうと思っていた蒸留器などを置く机や素材を入れる棚を購入している。つまりは、後は道具を揃えるだけなのだ。


 というわけで、王都に買い物に行く。

 日程が決まったのでシンディに手紙を送ったら、すぐに休みを取るから一緒に回ろうと返事が来た。とても早かった。シエルとシンディは面識もあるし、仲も良かったはずだ。

 ……いや、仲がいいというか、二人ともコミュニケーション能力が高いから話に困らなくて、なんとなく波長が合うって感じだったか。……それはもう仲がいいと言っていいか。


 まぁとにかく、シエルにも伝えたところ嫌がる様子はなく、嬉しそうにしていたので王都ではシンディも加わって三人で色々見て回ることになるだろう。

 テルセロにも連絡してみたけれど、テルセロは今遠征中で王都にはいないらしい。

 相変わらず騎士団は忙しそうだ。




 そんな風に予定を立てておいたので、約束していた日は朝早くに起きてあれこれと支度をしてから町に行ってシエルと合流する。

 私が一人で王都に行くならば飛んでいくんだけれど、今回はシエルと一緒なので徒歩だ。

 とはいえ、魔法使い二人。徒歩とは言いつつ徒歩と飛行の間くらいの感じで、ちょっと浮いて移動する。


「フィフィーリア先輩って、王都までどのくらいで行けるんですか?」

「うーん……本気で急げば、六時間くらい」

「早……どのくらい速度出してるんですかそれ……」

「目視で物が避けれないくらい?」

「ホー」

「そうだね、キヒカならもっと早く行けるね」


 シエルと並んで、ウサギのように地面を蹴っては跳んで進んでいく。

 これは飛行魔法と似た系統の別の魔法で、飛行魔法と違って身体強化系統の魔法だ。

 私はこれを使うのなら飛んだ方が早いかなと思うので飛ぶが、長時間休憩なしで飛び続けるのは魔法とは別の適性が必要らしく、並走出来る人はあんまりいない。


 なので、人と移動するときは割とこの魔法の時も多い。たまに私の熟練度だと置いて行かれてしまうくらいに速度を出せる人もいて、そういう時は飛んでいる。その方が速度出るので。

 それでもキヒカの方が早いからな、なんて呟いていたら、シエルに速度の基準が狂ってると言われてしまった。

 うん、たまに言われるから、多分基準がおかしいんだろうなとは思っている。


「王都では宿に泊まるんですか?シンディ先輩、泊まりにおいでって言いそうですけど」

「今回は二人分、宿を取っておくって言ってたよ」

「ホー」

「私の分まで……!ありがとうございます!」


 あと、新しく出来たお店を調べておく、とも言っていた。多分これでシンディは王都内のお店を全て把握したんだと思う。そうなんだろうという圧倒的な信頼がある。

 何せシンディは、ただでさえ王都に居ながら王都以外の場所の情報まで網羅しているのだ。

 一体何を目指してるんだ……ってテルセロが頭を抱えるくらいの情報網を持っているのだから、王都の中のお店を全て把握していてもおかしくはないのである。


 そんな話をしながら、王都へと続く草原をそこそこの速さで、時々休憩を挟みつつ三日ほどぴょんぴょん移動してきた。

 近いとはいえ、時間は掛かるしそこそこ遠い。普通にちょっと疲れたな、なんて考えながら王都の門を潜って中に入ると、すぐに誰かが走ってくる気配がした。


「あ、シンディ」

「フィフィ~!久しぶり~!」

「ホー」

「キヒカとシエルも久しぶり!なんだか大変だったみたいだね」

「はい、お久しぶりですシンディ先輩!」


 飛びついてきたシンディを受け止めて地面に下ろし、抱き着かれるのはそのままにして話を進める。

 今日到着の予定だ、とは伝えていたけれど、まさかこんなにすぐに飛びつかれるとは。流石シンディ。何で察していたのか全く分からないけど、何かで察していたんだろう。

 なんて思いつつ、とりあえずはシンディの取ってくれた宿に行って、荷物を下ろしてのんびりご飯を食べることにした。流石に移動で疲れたので、買い物は明日になってから、だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ