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場所の確保

 シエルと約束をしていた日になったので、私は町に向かっていた。

 シエルの新居候補地は街道沿いで探したので、私がいつも飛んでいる町と家の直線状からは少し外れた場所になる。

 ここからでも見えるかな、なんて考えながら飛んでみたのだけれど、傍から見るとただの森なのでよく分からなかった。家が建ったら分かるようになるだろうか。


 なんて考えながら空を飛んで、いつも通り町の外で地面に降りる。

 門番さんに会釈をして町の中に入れば、門の見える位置にある木陰のベンチに座っているシエルと目が合った。

 駆け寄ってきたシエルに手を振って、元気よく頭を下げたシエルと目を合わせる。


「おはようございます!」

「おはようシエル」

「ホー」


 このまま大工さんのところに行こうか、と言う話になったので、頷きつつ移動する前に荷物からお守りを引っ張り出す。

 キヒカとも話し合った結果、そこそこの効果に留まっているはずのお守りである。

 使うときは魔力込めてね、と伝えてお守りを渡すと、なんだかすごい深々と頭を下げられた。


「ありがとうございます……!」

「そこまで強くはしてないよ……?」

「先輩の判断基準だとそうなるんでしょうけど、私はこれ自力で作れないですから。もう本当に何から何までありがとうございます」

「うん、喜んでくれたならよかった」


 とりあえず嫌そうではないし、受け取ってくれたからそれでいいか。

 なんて思いつつ、並んで歩き出す。大工さんのお店に向かい、扉を開けると大工さんと目があった。

 おわ、と静かにびっくりしていたらそのまま大工さんが外に出てきて、お店の奥からはレイラさんが出てきて手を振られる。


「特別準備とかなけりゃすぐに行けるが、なんかあるか?」

「私は特に」

「私も大丈夫です!」

「ホー」

「なら行くか」


 今日は家の場所を決めたい、と事前に話をしてあったので、話の進みがスムーズだ。

 候補地について話しながら門を潜って町を出て、大きくなったキヒカを撫でる。

 大工さんにはキヒカに乗ってもらって、シエルは私が抱えて飛ぶことにした。シエルは魔法使いなので飛行魔法に相乗りするのにも慣れているし、キヒカも人を乗せるのには慣れている。


 これが一番早くて安全だろう、ということでこの形になったのだけれど、大工さんが大きなキヒカに乗るのに少し苦労している感じがあった。

 ……そっか、普通はこの大きさの鳥に乗る事なんてないもんな。シンディが乗れてるから、割と誰でも乗れるものだと思ってたな。


「大丈夫そうですか?」

「おぉ……俺は大丈夫だが、キヒカは大丈夫なのか?」

「ホー」

「軽いもんだそうです」

「そうか……」


 キヒカは力持ちだから、なんて思いつつ私もシエルを抱えて空に上がる。

 ゆっくり追いかけてきたキヒカと並んで、シエルの新居候補地へと向かった。

 街道沿いを飛んで、そこから少し外れたところに着地する。シエルを地面に下ろして、大工さんがキヒカから降りるのを手伝った。


「ここが、第一候補地です」


 今回候補地は、優先順位が高い順に回る予定になっている。

 なので、ここで大丈夫と確認が出来れば、他は回らずに終わることになる。

 まぁ、もしかしたらそのうちシエルが畑など広げに行く可能性はあるが、そうなるとしても数年後とかの話になるだろう。


「魔法使いの新居なんて作ったことねえからな……何基準で選んでんだ?」

「土地の魔力量とか、私は畑作るので土の状態とか……ですかね。ここは地下に水脈もありそうなので、井戸が掘れそうなところも目安にはしてます」

「なるほどな……基本は変わらねぇのか」


 話しながら確認に行った二人についていき、小さくなって肩に乗ってきたキヒカを撫でる。

 話し合いは何やら土地の範囲だとかの話になっていたので、ここで大丈夫だとしてどのくらいの範囲がいるのかって話になったのだろうか。

 と、木漏れ日を浴びつつのんびり考えていたら、シエルが元気よく戻ってきた。


 目前で止まったシエルの頭にとりあえず手を乗せつつ、ご機嫌な後輩の言葉を待つ。

 まぁ、このご機嫌具合からして、ここで問題ないって話になったんだろうなという予想は出来た。

 実際ここで問題はない、という事だったので、木を伐採したい範囲を確認して、杖を構える。キヒカは大工さんの方へ避難……というか、保護に行ったようだ。


「印付けました!見えますか?」

「うん、そのまま維持してて」

「はい!」


 シエルが魔法で付けた印に合わせて、杖を向ける。

 今回は廃村のように消し飛ばしはせず、木材は刈り取って回収する予定なので、威力と魔法を選ばなくてはいけない。


「……攻撃(シビャ) 弱化(ベネ) 回転(ショビュス) (レアエ) 平行(ゴナゴ) 追尾(シダシャ) (クアン) 一段(キョン) 発射(ビュゼ)


 地面と平行に回転のかかった、薄い刃状の魔法が飛んでいく。

 勢いよく飛んで行った魔法が行き過ぎないうちに誘導用の光を作って、範囲内を滑るように移動する攻撃魔法(今回に限って言えば伐採魔法)を動かし、範囲内の森を平地へと変えていった。

 うん、我ながら良い感じに調整できた。これなら木も使えるだろう、と満足しながら範囲内の伐採を終え、魔法を二つとも消してシエルを振り返る。


「これで範囲内の伐採は終わったと思うけど……どう?」

「お見事です。流石は先輩。弱化かけてあれなんだぁといういつもの感動をありがとうございます」

「どういたしまして……?」


 とりあえず問題はなかったようなので、後は伐採した木をどうするかだ。

 これは大工さんに聞いて、枝を落とした状態で町まで運ぶことになった。

 枝を落とすのは私とシエル、そしてキヒカにも手伝って貰ってサクサク魔法で終わらせて、丸太を浮かせて町まで戻る。


 早めに場所も決まったことでまだ時間があるので、他に何かすることがないか確認して、とりあえずシエルと二人で敷地内の木の根っこを掘り返すことにした。

 何をするにも、切り株と木の根は邪魔になるので。

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