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浴室完成

 浴室の修復二日目は、しっかり床を作るのが主な作業になって行く。

 ちなみに床の乾燥が一日では終わらず、二日ほど放置して乾かしてからの作業再開になった。外にちょっとだけ漏れ出しかけていた部分もどうにかなっているので、この後の作業は多分大丈夫なはずだ。

 そして、ここからが難しい作業になる。床にちょっとだけ勾配を付けないといけないのだ。


 これ、本当に素人が出来る事なんだろうか。なんて考えながら、暇だった二日で私は色々と考えた。

 パッと見て分かるくらいの勾配がついていると多分入浴時に危ないので、水が流れるくらいの、歩いても分からないくらいの勾配がいい。

 考えた末に、木片を平たくしてちょっとだけ勾配がつくように表面を削って、それを基準にどうにか床の勾配がつけられないか、と思いついた。


 この木片の勾配を壁に書いていって、そこに合わせてセコトを均す。どうだろう、いけるんじゃないだろうか。

 駄目だったらまたやり直すことになるけれど、でももう他に方法も思いつかないのでそれでやってみることにした。


 壁の両側に線を引いて、セコトを練っていく。

 それを流し込む前にキッチンを直した時に余っていた排水パイプを持ってきて、短く切って排水溝の上に被せておいた。これは後から引っこ抜くつもりだけれど、こうしておけばうっかり排水溝が埋まることも無いだろう。


「よし、やろう」

「ホー」


 キヒカの応援も受けて、床にセコトを撒いていく。そしてかまどを組むときにも使った道具を使って床を平たくしていく。

 ちょっと道具が小さくて床全面を均すのにはなかなか骨が折れるけれど、それでも頑張ってどうにかそれっぽく見えるくらいには床を作り終えた。


 奥の方からちまちま頑張って均して、終わる頃には日が暮れていたしずっとしゃがんでいたから腰が痛いけれど、とりあえず出来はしたのでこれで一度乾燥させる。

 完全に乾いたら水を流してみて、流れない所は後からもう一度直していく。そうして水が流れるまで修正をしていくのだ。これなら、一応水は流れるようになるし素人でもどうにか出来る。きっと。




 そんなわけで床を一晩乾燥させて、翌日に水を流してみることにした。

 今回はそこまで分厚く床を塗ったわけでもないので、一晩で乾燥しきったのだ。早くて助かる。

 早速水道のレバーを弄って水を出し、魔法で浮かせて壁側から流してみる。……大半は大丈夫そうだが、一部に水が溜まってしまっているのでそこをもうちょっとだけ盛らないといけなさそうだ。


 排水溝を埋めないようにはめていた排水パイプを引っこ抜いて水が流れるようにして、濡らした床を乾かしていく。乾いたらセコトを塗って、もう一度乾燥だ。

 ほんの一部だけれど、これもまた一晩乾燥させた方が確実だろうか。

 まぁ、下手に弄ってやり直しになっても嫌なので一日乾燥させるとしよう。


 そうして、一日時間を置いて冷静になった時、私はとんでもないことに気が付いた。

 これはもう、とんでもない。やってしまった。あまりのやらかしに、一瞬頭は真っ白になったし一度冷静になるためにすべてを忘れようかと思ったくらいには、とんでもない。


「かんっぜんにやらかした」

「ホー」


 現在地は浴室。今日塗った床の部分を踏まないように覗き込んだ浴槽の底には、パッと見ただけでは分からないけれど、ちゃんと見れば分かる排水用の栓がある。

 私、これの事をすっかり忘れて床を作ってしまった。つまり、この排水の栓は何の役目も果たせない見せかけの物になってしまったのだ。だってこの下、セコトがぎっしりだもの。


「あぁ……本当に馬鹿……」

「ホー」


 慰めてくれるキヒカを撫でながら、どうしたもんかと考える。

 排水の出来ない浴槽は、ちょっと流石に駄目だろう。衛生的にも駄目だろう。清潔になりたくて入るお風呂が不衛生なのは、論外だろう。そんな風呂を作ったわけだ、私は。

 とんでもない……なんで排水の事忘れてたんだ……排水改善のためにお風呂直してるのに……


「……魔法陣か……?」

「ホー、ホー」

「だよね、全部魔法で浮かせて排水するのは手間だし……」


 魔法で水を浮かせて排水することは、まぁできる。でも一度に流せる水の量を考えると、自力でやるのはちょっと面倒くさい。毎日使うものこそ効率化するべきなのだ。

 つまり、これは魔法陣でどうにかする方法を考えるべきだろう。魔法陣は大体の事を解決してくれるのだ。魔法陣が描けるタイプの人間で良かった。


「水……水持ち上げて、こっち側に落とせばいいよね」

「ホー」

「下の方に繋がないとだから……排水パイプに彫り込んだら早い?」

「ホー、ホー」

「うん、買いに行かないと」


 パイプに魔法陣を書きこむのが一番早そうなので、次の買い物の時にそれ用の排水パイプを買ってこないといけない。それまで、湯舟に浸かるのはお預けだ。

 次からはもっとちゃんと色々考えてからやった方がいいという教訓を得たことにして、そのくらいは甘んじて受け入れよう。


 そんな失敗もあったが、床はどうにか無事に水が流れるようになった。

 仕上げに床に浴室用の床材シートとかいう物を張って、壁との境目の隙間も埋めて浴室は一応完成した。さっさと買い物に行って、お風呂も使えるようにしたいところだ。

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