外に置くもの
町の守り主だろう猫さんと出会った後、私は元々の目的である物を探して町の中を再び散策していた。
手に持っていた花は、しっかり包んで荷物の中に入れてある。すごく貴重なものだったから、思わずちょっと手が震えた。キヒカもちょっと震えていた。
震えつつもちゃんと荷物に入れたので、探し物を再開する。
今回探しているのは、屋外作業場に置く机だ。
やっぱり机はあった方が何かと便利なので、ひとつくらい置いておこうと思って探しているのだ。お店の目星はついていて、今リビングに置いてある作業台を買ったお店に行ってみようと思っている。
あの机も天板が石で、かなりの重さがあって頑丈なものだった。だから、屋外に置くにもちょうどいいのではと思ったのだ。
そんなわけで、流石に寄り道はここまでにしようかとキヒカとも頷きあって、目的のお店に向かうことにした。
お店には予想通り、頑丈でシンプルな作りの机がいくつもあり、その中から大きさがちょうどよくて色味の気に入った物を購入した。
一応店員さんに、屋根はあるけど屋外に置いて使う予定なのだと言って、おすすめも教えてもらった上で選んだので、これで今回の目的の一つは達成である。
ついでに椅子も買おうかと思ったのだけれど、それは一旦後回しにする。椅子ならばまぁ、適当に作れないこともないので。
そんなわけでお店を後にして、買った机を浮かせて運ぶ。キヒカがさっそく机の上に乗りに行ったので、それを見届けてから歩き出した。
あと買うものは食材くらいなので、いつも通り市場の方へ向かう。
何をどれだけ買って帰ろうか、と家にある食料を思い出しつつ市場に向かうと、市場のお姉さんたちが声をかけてくれた。
「あらいらっしゃい!魚の干物あるわよ!」
「わ、前と同じやつですか?」
「前のとは少し違うけど、これも美味しいよ。前のに比べると、少し塩気が強いかな」
「なるほど」
前に買った魚の干物は美味しかったし、これも買ってみようかな。
お姉さんがおすすめしてくれたもので美味しくなかったものはないので、素直に信じてしまっていいだろう。
というわけで魚の干物を買い、ついでにニビュと麦粉も買っておく。
他のお店もいくつか回って食料を調達したら、それらを浮かせて噴水広場に向かう。
今日は夏なのもあってまだ日が高いから、いる可能性は高いだろう。
そろそろアルパにも、何かしら連絡用の道具を渡すべきだろうか。なんて考えながら噴水広場を覗いてみると、アルパとおじいさんが座っているのが見えた。
「あ、フィフィーリアさん!」
「こんにちはアルパ」
「ホー」
私に気付いて駆け寄ってきたアルパの頭を撫でて、おじいさんにも挨拶をする。
そして、しゃがんでアルパと目線を合わせて、荷物の中から手紙を引っ張り出した。
この手紙はシンディ経由で送られてきた、私の先輩からの手紙である。
「前に、回復魔法について話したの覚えてる?」
「うん」
「その時に話した先輩から、一日だけなら予定を開けられるって返事が来たの。だから、アルパの都合のいい日を教えて欲しいな」
言いながら、先輩がアルパにと送ってきた手紙を手渡す。私にも手紙をくれたけれど、教えているという子に渡してね、と別でちょっとしたメッセージをくれたのだ。
相変わらず面倒見のいい人だなぁ、と感心しつつ、私が手紙を送る前にシンディから聞いたよ、と先んじて手紙を送ってくるのにはびっくりした。とても。
ともかく教えに来てくれるらしいので、アルパと先輩の都合を合わせて、私もそれに合わせて町に来る予定だ。
と、そんな感じの事をアルパとおじいさんに伝えて、日程を考える。
アルパは基本的にいつでも大丈夫らしいので、どちらかというと保護者の都合のいい日を考えるべきだろう。
「いつでも大丈夫、というわけでもないだろう?」
「えっと、休みの日を調整出来る人なんです。非常時に休みがなくなる分、普段は結構自由らしいので」
「ホー」
わくわくと身体を揺らしているアルパを撫でながら、おじいさんと日程を話し合い、決まった日を持ってきていた別の手紙に書いてキヒカの足に結ぶ。
キヒカにはこのまま先輩のところまで飛んでもらい、決めた日程を知らせてもらう予定だ。
ついでに自分用にもメモをして、キヒカを撫でる。
「じゃあ、お願いね」
「ホー」
飛び立ったキヒカを見送って、アルパに向き直る。……なんだかすごく目を輝かせているけれど、そういえばキヒカに手紙を運んでもらうのを見るのは初めてなのか。
私はそれなりに頼むことなので当たり前に受け取っていたけれど、初めて見たらすごい物に見えるのかもしれない。
なんて考えつつ、アルパの魔法の練習も少し見て、遅くならないうちに帰ることにした。
普段はキヒカが荷物を運んでくれるけれど、今日は自分で浮かせて運ばないといけないので、いつもより時間がかかる……かも、しれない。
正直そんなに変わらないと思うけれど、まぁ遅くなる前に帰るべきではあるので、アルパにはまた今度、と声をかけて町を後にした。