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屋根作り

 マニキュアの材料を作りつつ、作業場に屋根を敷いていく。

 それがここ最近の、日中の過ごし方だ。

 昨日は雨が降っていたので家の中でお守り作りに精を出していたのだけれど、今日は晴れたので外に出て屋根作りの続きをやっていくことにした。


 まずはマニキュア作りのための材料を作るための準備をして、いつものように地面にレンガを置いて火をつけたのだけれど……ちょっと、弱い。

 やっぱり昨日の雨で地面が濡れているのが原因だろうか、と考えながら、とりあえずは使いたい部分だけ魔法で地面を乾かした。


「作業場が出来れば、これも解決だね」

「ホー」


 一度火を消してレンガを退けて、地面を魔法で乾かした後で同じところにレンガを再設置して火をつける。

 そうしてやっといい感じに燃え始めた薪を眺めて、ぼんやりとつぶやいた。

 作業場が出来ればこうして外で何かを煮るところは屋根の下に入るので、よほど横殴りの雨でも降らない限りは影響が出ない……はずだ。


 ともかく、早めに作業場を完成させたい、という思いに変わりはないので、鍋と火の番はキヒカに任せて、私は屋根作りに集中することにした。

 材料と道具を浮かせて、杖にまたがって屋根の上まで浮き上がる。

 そして着地と同時にちょっと滑って、地上の丸太椅子の上からこっちを見ていたキヒカに大きな声を出させてしまった。


「大丈夫、ちょっと滑っただけ」

「ホー……」

「うん、気を付けるよ」


 雨で滑りやすくなっているのか、と今更ながら足元の状況を確かめて、作業の前に魔法で乾かすことにした。

 濡れたまま上に屋根材を重ねてしまったら、何かしら問題があるかもしれない。

 今後長く使っていく予定の物なので、小さなことでも油断せずにちゃんとやった方がいいだろう。


 というわけで、杖に跨りなおして、屋根の少し上に浮かぶ。

 そうして魔法を起こして、屋根の上の水気を乾かしていった。しっかり全体が乾くまで風を吹かせて、乾いたのを確認して再度屋根の上に立つ。今度は滑らなかった。

 手でも触って確かめて、ちゃんと乾いていたので浮かせていた屋根材と工具を下ろして、杖から工具に持ち替えて作業に取り掛かる。


 もうすでに、屋根は半分敷き終わっており、残り半分とてっぺんを作れば完成なのだ。

 今日まで私も連日ちまちま頑張っていたのである。

 半面終わらせて、次に取り掛かる面の一番下の列も敷いてある。なので今日は、二列目からの作業だ。


 道具を構えて、よし、と小さく気合を入れる。そして屋根材を並べて、それを固定していった。

 そうして無心で作業を続けて、キヒカに呼ばれたら鍋の様子を見に行く。それを繰り返して、屋根は大分完成に近づいてきた。

 今日で八割ほどまで進んだので、明日には作業も終わるだろう。


「こっちもいい感じに進んだね」

「ホホー」


 屋根の進みも良かったけれど、マニキュアの材料作りも中々いい感じに進んでいる。

 今日だけで五種類ほど材料を作ることが出来たので、そろそろ材料作りからマニキュア作りへと作業段階を進められそうだ。

 良い感じだ、と機嫌よく家の中に戻り、今日も今日とて私はご飯を食べてお風呂に入った後すぐに眠りについた。抗えない疲労感が、心地よい眠気を連れてくるのだ。




 ぐっすり眠った翌日も、昨日と同じくよく晴れていたので、問題なく作業の続きに取り掛かることが出来た。

 今日はマニキュアの材料作りは一旦置いておいて、屋根の作業に集中する予定だ。

 というか、マニキュアの材料であと残っているものは、他の作業をしながら作れるようなものではないのだ。残りはじっくり眺めながら作らないといけない。


 そんな事情もあり、今日は屋根作りの日だ。これで屋根が完成すれば、まだ作るものは色々あるけれど、屋外作業場としては一旦完成と言ってもよくなる。

 なので頑張ろう、と久々にキヒカと一緒に屋根に上がって、さっそく作業に取り掛かった。

 と、張り切って作業に取り組んだ結果、一番上の他とは違う形の屋根材を固定し終わった時、まだ日は高くて暑さのピークであろう時間だった。


「思ったよりも早く終わった……」

「ホー」


 キヒカにも同意されるくらいには、早く終わった。もしかして私、屋根を作るのがとても手早くなったのではないだろうか。

 やはりやっていると慣れるものなんだな、と一人納得しながら、屋根の上に持って上がった道具を纏めて浮かせ、地上に降りる。


 少し歩いて、振り返って完成した屋根を見る。家と同じ色の屋根が家の少し先に広がって、なんだか家が広がったような気分だ。

 とても満足、とご機嫌に声をこぼして、一度道具を置きに行く。

 そのついでに、準備したのが大分前になってしまった石窯の設計図を持ってきた。


 石窯の材料も、もうすでに揃えてあるのだ。取り掛かるのがずいぶんと遅くなってしまったけれど、屋外作業場が出来た以上、石窯作りにも取り掛かれるのである。

 ついに……ついにだ。と、浮かれる私の顔に、キヒカが翼を当ててきた。


「ホー……ホホー、ホーホー」

「……そうだね、まずはそっちからやった方がいいか」

「ホー」


 キヒカに、石窯よりも外用の簡易的なかまどを優先するべきだ、と言われてしまった。

 けれどそれはその通りで、何せ今私はマニキュア作りを進めている。

 まだまだ作業は残っている以上、安定して簡単に作業をするために、先にそちらを作るのがいいのは分かり切ったことだった。

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