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真面目にお仕事

 大工さんからセコト自動混ぜ器の作成を頼まれた日から数日が経ち、私は改めて町に行くことにしていた。

 この数日で道具の準備はしたし、シンディ経由でアデラに値段の相談をして問題ないと返事が来た。

 ちなみにアデラに相談料を払うべきな気がする、という件に関しては、そもそもが両親に渡されているお守りの代金であり、その分をまだ払い終わったと言えないのだから受け取れないと言われてしまっている。


 そんなに高い値段が付くんだろうか、あのお守り。確かに、ちょっと気合を入れて作ったけれども。

 でもシンディに渡したものよりかは手はかかっていないし、キヒカに持たせているものを基準に考えると、外装が特に何の効果もないただの入れ物なので、そんなに……?と思ってしまう。

 これを迂闊に口に出すと、比べる先がおかしいのだとお説教されてしまうのは流石の私も分かるので、何も言わないでおくことにした。


「よし、忘れ物はない……よね?」

「ホー」

「よし。じゃあ行こう」

「ホホー」


 キヒカと一緒に忘れ物確認をして、杖にまたがって空に上がる。

 いつも離陸と着陸をしている庭の一角からは、作りかけの屋外作業場が視界に入る。進捗はそこそこで、流し込んだ大量のセコトが完全に固まるのを待ちつつ、この数日で柱を立てる準備をしておいた。

 今回町に行って帰ってきたら、次はここに柱を立てる作業をすることになるだろう。


 なんて考えつつ空に上がって、いつも通り町に向かって飛んでいく。

 前回町に行ったときにアルパと話して魔法の練習についてもちょっと話をしたので、それに関する話もちょっとしてから帰りたいのだ。

 もしかしたら町に泊まることになるかな、とも思っているので、時間は気にせず用事を済ませることにしている。


 魔道具作りに時間制限を付けると、焦って雑な仕事をしかねないので、後の事は考えなくていい、くらいに思っておいた方がいいのだ。

 これは経験談なので、少なくとも私は魔道具作りをする時はその直後に予定を入れたりはしない。

 樽に魔方陣を一つ彫るだけならそんなに時間もかからないと思うけれど、まぁ、何があるかは分からないので。


「ホー」

「わ、本当だ」


 もうすぐ町に着く、というところで、ぽつぽつと雨が降り始めた。

 杖の先に座っていたキヒカが寄ってきたので、抱え込んで外套のフードを被る。

 朝起きた時は晴れていたんだけれど、天気が崩れてきてしまったようだ。この雨雲がこれから家の方に行くみたいなので、私が雨に向かって移動していた、ということになるんだろう。


 なんて考えている間に町に着いたので、地面に着地して門番さんに会釈をし、小走りで町の中に入る。

 これから人に会う用事があるからあまり濡れたくはない。多少濡れただけなら乾かせるけれど、魔法で直接微調整をするのがそこまで得意でもないので、出来れば濡れたくない。


「お、嬢ちゃん。降られたか」

「はい、もうちょっと早ければ濡れなかったんですけど……」

「まあそういう事もあるわな」


 小走りに大工さんのお店に向かっている途中で大工さんに会い、そのまま一緒にお店へ向かうことになった。大工さんもちょっと用事があって出かけた隙に雨に降られたらしい。

 お互い不運ですね、なんて言いながらお店にお邪魔して、レイラさんに差し出されたタオルで髪とキヒカを拭かせてもらう。外套は結構濡れたので、帰るまで干させてもらうことになった。


「さて、例の件だよな」

「はい。値段も、問題ないってお墨付きをもらいました」


 値段を伝えると、大工さんからも問題ないと言ってもらえたので、これで仕事に取り掛かれる。

 樽と土台も用意してあって、既にお店の裏の倉庫に届いているそうだ。仕事が早い。すごい。

 裏の倉庫は屋根が続いていてそのまま見に行けるらしいので、大工さんに案内されて初めてお店の裏に立ち入ることになった。


 倉庫と呼んでいるけれどここでちょっとした加工を行ったり、ここから休憩所に繋がっていたりもするらしく、結構な広さがあった。

 ついでに、初めて会う大工さんが何人か作業をしていた。みんな大工さんの部下の人らしい。いつもお世話になっている大工さんは、親方さんなのだ。知ってはいたけれど、部下の人に会うのは初めてだ。


 軽く挨拶をして、樽と土台を見せてもらう。

 案内された先にあったのは私が作った自動セコト混ぜ器をそのまんま大きくしたようなもので、しかし素人が作ったものではないから、細かいところの綺麗さが違って職人の腕を感じられる出来になっていた。

 用意されていた樽を乗っけてキヒカに軽く回してもらったら問題なく動いたので、これで魔方陣を彫ってしまって大丈夫そうだ、という確認も出来た。


「道具はあんのかい?」

「持ってきました。ここで作業しても大丈夫ですか?」

「おう。……何人か、見に来るかもしれねぇが……人払いするか?」

「いえ、大丈夫です。……そんなに、見てて面白いものではないと思いますけど」


 まぁ、作業を見られることも割と多かったので、その辺は気にならない。手を出されるのなら別だけれど、見られているだけなら集中している間に忘れてしまうので。

 なんて話をしつつ、樽をひっくり返させてもらう。

 樽の底面のふち部分には二つ穴が開いていて、ここにネットを通して魔石を固定する予定らしい。


 なるほど、確かにそれなら取り外しも簡単だ。

 と、感心しながらひっくり返した樽をキヒカに固定していてもらう。ついでに、キヒカの上に紙に書いた魔方陣を乗っけさせてもらった。

 でっかいものを作る時には時々やっていたことなので、キヒカは慣れた様子でそのまま寝る姿勢を整えている。


 キヒカが本格的に寝始める前には終わるといいな、と思いつつ、私は魔方陣の作成に取り掛かった。

 まずは下書きをして、それから掘り込みの作業だ。

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