土台完成
連日せっせと作り続けた外の作業場は、段々完成形が見えてきていた。
とはいえまだ土台も完成してはいないのだが、それでも土台作りが大変すぎて、そこを完成させれば大体出来上がったと言えるのではないか、と思っているのだ。
まだ完成ではないが、流し込み続けていたセコトは八割ほどまで埋まってきており、そろそろ枠の中がいっぱいになる。
途中雨が降った日などは作業も出来なかったのだけれど、それでも晴れた日には外でセコトを混ぜて流し込み、連日作業を続けていた。
セコトを混ぜるのが自動になったので、空いた時間を使って他の物を作ったりもしていた。おかげでお守りもだいぶ増えてきて、そろそろ持っていこうかと思っているくらいだ。
「出来れば完成させてから行きたいね」
「ホー。ホーホホー」
「そうだね、仕組みの説明もしないと」
自動セコト混ぜ器の仕組みについて、大工さんが気になっていたみたいだから、土台が出来たという報告と一緒に、セコト混ぜ器の作成が上手くいきましたと報告に行きたい。
そんなことを考えながら、ぐるぐる回っている混ぜ器の中を確認する。もうちょっとかな。
「土台が出来たら、柱を立てて、屋根を付けて……」
「ホホー」
「うん。そこまでやってから石窯……石窯まではまだ遠いね」
「ホー」
元々は石窯を作りたいからと始めた事だったけれど、そこに手を付けるまでにはやらないといけないことがいっぱいだ。
まぁ、作ったら絶対便利にはなるし、長く使う予定ではあるので、しっかり作っておきたいと思ったことを後悔はしていない。
「便利な道具も出来たし」
「ホー」
新しい道具を作る時というのは、いつだってそれが必要になった時だ。と、先生が言っていた。
家を直し始めて、学生時代に先生から言われたその言葉を思い出すことが増えた。自分でやっていると、やっぱり実感は強くなる。
道具でどうにか出来るのならば、道具でどうにかするべきだ。それをやっている時間で別の事が出来るし。
なんて思いつつ、混ざったセコトを枠の中に流し込む。
ふちのギリギリまで入れたら平らに均していく訳だが、まだそこまでは満ちていない。
もうそろそろ完成も見えてきているけど、結局まだまだ量は必要なのだろう。何せ、最初は無限に入るのではと思ったくらいな訳だし。
「……とりあえず、これを仕上げちゃおう」
「ホー」
次の分の材料を混ぜ器の中に入れて棒を固定し、樽を回し始める。ごとごと回り始めた樽を少し見守った後に、作りかけの物を作りに戻る。
大工さんに自動セコト混ぜ器の説明をするのに、図解だけだと分かりにくいかと思って、小さな模型のようなものを作ってみたのだ。
他に今作るものがなかったから、というのもあるが、こうして作ってみると中々楽しくてこだわり始めてしまっている。
なんなら、こうして小さいものを作って動くかどうかを確かめてみてから実際の物を作ってもよかったのではなかろうか、とすら思う。
と、そんな風にセコト混ぜ器の模型を作りつつ、ひたすら土台にセコトを流し込むこと数日。
ついに土台の枠の中はセコトで満たされていた。端の方はしっかり均し終わっていて、中央の方を均すのに上に乗るわけにもいかないので、魔法で均すのに使った木材を浮かせて、ちまちまと均している。
後はこれがしっかり乾けば、長かった土台作りもついに終了だ。
「終わる……!ついに終わる……!!」
「ホー」
微調整をしつつ枠いっぱいのセコトを均し終わったら、その開放感から均すのに使った木材を投げ飛ばして杖を上に掲げてしまった。
飛ばした木材はキヒカが回収してくれたので、受け取って適当に日当たりのいい場所に置きに行く。
均すのに使ったから表面にセコトがついており、今後何にするにも一旦乾かさないといけない。
「キヒカ、明日は町に買い物に行こう」
「ホホー」
土台作りを完了させてから町に行こう、と思っていた結果、食料がもうあんまりなかったり、お守りが溢れてしまっていたりと、ちょっと問題が発生し始めているのだ。
後は乾くのを待つだけ。となればもう、さっさと買い物に行ってもいいだろう。
浮かれ気分なのは自分でも分かっているが、それでもいいのでそのまま予定を決める。
「まずはルルさんのところにお守りを置きに行って、大工さんのところに寄って、食材を買って……」
「ホー。ホーホー」
「そうだね、アルパにも会いに行きたいね」
「ホー」
浮かれ気分で庭をウロチョロしながら予定を決めて、キヒカと一緒に家の中に戻る。
明日持っていく荷物をささっとまとめておいて、今日は早めに寝てしまうことにした。もうすでに夕方だし、夕食を作って食べて、お風呂に入ってしまおう。
土台作りは本当に時間がかかったから、細かい物作りはもう全部終わっていて、夜にやらないといけない作業もないのだ。
「明日は良いお肉でも買ってきて豪華な夕食にしようね」
「ホー!」
豪華な夕食の予定が出来たことでキヒカのテンションも上がってきたので、一人と一匹、揃って浮かれ気分での夕食となった。
楽しいのは良いことなので、たまにはこういう日があってもいいだろう。