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夜更かしする

 廃村の探索から戻ってきて、夕食の支度をしながら二人をおしゃべりをする。

 私が料理をしている姿に若干感動しているようなので、それまでの私がいかにそういった部分を疎かにしていたのかが伝わってくる。

 最近は料理もしてるよ、とか話しながら、仕込んでいた料理を温めなおしたり簡単なつまみなんかを作ったりして、机の上を埋めていった。


「ほれ」

「わ、お酒」

「フィフィ、こっちに来てからお酒飲んだ?」

「飲んでない。……卒業パーティーが最後かも」


 学校の卒業式の後に開催されていた卒業パーティーでは出されたお酒にちょっとだけ手を付けたけれど、それ以降飲むことはなかった。

 王宮魔術師時代はそんな時間はなかったし、王都を飛び出してこの家に来てからも、特に飲む必要は感じなかったし、そもそも買おうと思うこともなかったので。

 とはいえ、嫌いではないのだ。唯一飲んだのが卒業パーティーなので、友人たちと楽しく過ごした時間に飲んだもの、という記憶が強くて、嫌いではない。


「グラス……適当でいい?」

「いいよー!」

「まぁ家で飲むならそんくらいがいいよな」


 グラスは二人が遊びに来るのに合わせて買っておいたのだけれど、お酒用は考えていなかった。

 まぁ、マグじゃないだけマシか。なんて考えながら、キヒカにはお水と干し果実を出しておく。多分このまま宴会に参加してくれると思うので、キヒカの分も必要なのだ。

 そうして準備を整えて、にぎやかな夕食が始まった。


「美味しい!!フィフィ料理上手だねぇ」

「ありがとう。じっくり煮込むのはね、楽しいからね」

「それを楽しいって思うのが才能だよなぁ……待ってらんねぇもん」

「テルセロはすぐ強火で炙って焦がすからね」

「ホー」

「ほら、キヒカもこう言ってる」

「フィーリア、なんて言ってる?」

「そうだなって」


 ほら!と楽しそうに言ったシンディと、ちょっと納得していなさそうなテルセロを見比べて、キヒカと小さく笑いあう。

 数年前はこれが日常だったはずなのに、なんだかすごく懐かしい感じだ。

 もっとたくさんの時間が間に挟まっていたような気がする。


 やいのやいの言い合って、食事とお酒が消えていく。

 なんだかふわふわした頭で楽しいなぁとぼんやり考えて、皿洗いとかそういうことは全部後回しにすることにした。

 そしてなんとなく気分のままに三人で外に出て、丸太椅子に座って空を見上げる。


「おー、すごーい」

「王都とは比べ物にならねぇなぁ」

「そういえば星とか、見る余裕なかったなぁ……」

「そうなの?」

「うん……私、占い苦手だし……」


 占いが得意な魔法使いは星とかも日常的に気にするのだけれど、私は占いの才能はないのであんまり気にしたことがなかった。

 夜になったら早めに寝てしまうし、外に出ることも基本的になくて……もしかして、ちょっともったいないことをしていただろうか。


 これからは時々外に出てきて、星を眺めるのもいいかもしれない。

 ちょうどこれから、夜でもそこまで冷え込むわけではない季節になっていくし……外で座れる椅子も作ったし。

 キヒカが森に遊びに行く頃に、一緒に出てきてちょっと星を見上げて、家の中に戻って寝る。……うん、いいかもしれない。


「テルセロ、星座どこ?」

「あそこに水晶」

「どこ?」

「いっこ青いの光ってんだろ?」

「ホー」

「キヒカ、分かる?」

「ホー」


 一緒についてきて私の膝の上にいたキヒカが、空を見上げて楽しそうに鳴いた。どうやら分かるらしい。流石、夜に動きまわっているだけあって星は見慣れているのだろう。

 私も空を見上げてみたけれど、どれがどう繋がって星座になるのかは全く分からなかった。綺麗だ、とは思うのだけれど、それ以上を考えるのはどうにも苦手だ。


 なんて話しながらしばらく星を眺めて、身体が冷えてきてしまったので家の中に戻る。

 身体がちょっと冷えたからか、酔いもいい感じに醒めてきた。なので、とりあえず折り畳みベッドを広げて二人の寝る場所を確保する。

 シンディは寝室で、私のベッドの横に。テルセロはリビングで寝るらしい。


「お風呂の準備してくるね」

「うん!」

「おう」


 二人に声をかけて、お風呂にお湯を張りに行く。ついでに新しく買っておいたタオルなどを分かりやすい場所に出しておいて、あれこれ準備を整えた。

 湯船に水が溜まったら水を止めて、あとはお湯が沸くのを待つ。

 しばらく待たないといけないので、置きっぱなしになっていた物を片付けがてらリビングへと向かった。


「お湯沸くまで、もうちょっと待ってね」

「あ、じゃあその間にお風呂の順番決めよ!じゃん!」

「懐かしいなそれ」

「ホー」


 ソファに腰かけていた二人に声を掛けたら、シンディが学生時代によくやっていたボードゲームを取り出した。

 ソファのサイドテーブルを中央に持ってきて、キッチンから持ってきた折り畳みの椅子を反対側において三人で遊べるようにする。


 お風呂の順番決めなのでとりあえず一戦だけにするけれど、これはお風呂から上がった後も盛り上がりそうな予感がする。

 そうじゃなくても多分私とシンディはおしゃべりして夜更かしすることになるだろうし、今日は夜遅くまで遊ぶ感じになりそうだ。

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