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肝試し

 畑に行ったり、庭に植えた花を観察したり、ちょっと森の中を進んでみたり。

 そんな風に三人でのんびり外を散策して、庭で丸太椅子に座ってぼんやり駄弁ったりして。

 学生時代に戻ったみたいだ、なんて思うような時間を過ごして、気付いたら夕方になっていた。


 キヒカが家から出て来て、肩に止まる。お昼寝は十分らしい。くちばしが濡れているから、出てくる前にお水を飲んできたのだろう。

 まだちょっと眠そう、可愛い。なんて思ってキヒカを撫でていたら、シンディがふと何かに気付いたように目を輝かせた。


「ねえフィフィ、ここって廃村の外れなんだよね?」

「そうだよ」

「じゃあ、ちょっと進んだら廃村があるんだね……!」

「ホー」

「おいシンディ……」

「肝試しに行こう!」


 立ち上がったシンディに手を引っ張られて、もたもたと立ち上がる。

 こうなったシンディを止める事は非常に難しいので、もうせめて日が沈む前に行って戻ってくる方がいいだろう。

 その考えはテルセロも一緒なのか、ため息を吐きつつ立ち上がった。


 ご機嫌なシンディに手を引っ張られつつ、反対の手に杖を持って村の方へ向かう。

 キヒカはテルセロの肩へと移動してしまった。シンディと手を繋いでいるから揺れる、とかそういう理由だろうか。

 ともかく私の肩には居ないけれどキヒカも一緒なので、特に心配もせず足を進めた。


「こっち?」

「うん、そのまま真っすぐ」


 森の中を突っ切って、廃村の中心部へ向かう。秋の嵐で家屋に木が刺さったりしていたのもそのまま放置しているけれど、まぁ近付かなければ危険もないだろう。

 なんて思いつつ森を抜けて、夕日に照らされた廃村へと足を踏み入れた。

 日の差し方の所為か、前に来た時より不気味な雰囲気がある。


 肝試しらしいしこのくらいの方がいいのかな、なんてぼんやり考えつつ村の中を歩いていたら、テルセロに肩を掴まれた。

 何かあっただろうか、とシンディを引っ張って足を止めて貰い、テルセロの方を振り返って見上げる。

 うん、何かあったらしい。顔色が良くないし、普段剣があるあたりに手を持って行っている。


「テルセロ?どうしたの?」

「……フィーリア、お前、前にもこの村入ったか?」

「うん。三回くらい」

「それで何もなかったのか……いや、フィーリアには干渉できない程度のもんなのか……」

「お?もしかして何か居る!?」


 テルセロは騎士団の仕事で霊系の魔物とも戦うし、元々それ系に対しての勘が鋭いから、私が全く感じ取れない何かを感じ取ったようだ。

 そうなんだ、この村、何か居るんだ。

 全然気付かなかったな……と思いつつ杖を回して、一旦周りに魔力を撒いておく。多少の壁にはなるだろう。


「まずいもの?」

「フィーリアだけならなんの影響もないだろうな。……だがまぁ……どうにか出来んなら、どうにかしちまいたいな……」

「なるほど」


 私は霊系に強い、というか、干渉されにくいらしく、端的に言うとすっごい鈍いのだ。真横に居ても気付かないくらいには、鈍い。察知すら出来ない。

 なので、何か問題があるというのなら、それを判別できるテルセロがいる間にそれを明確にしておきたいところだ。

 あと、シンディの目がキラキラしているので、もうちょっとくらい肝試しを続けたいし。


「村全体に何かある?」

「ちょっと待ってろ……おう、村全体……建物のある範囲、だろうな」

「キヒカ」

「ホー」


 キヒカは私より察知も出来るし、範囲が明確ならどうなっているかの確認くらいは出来るはずだ。

 と、いうわけでキヒカに境目を確かめに行ってもらい、その間に村の中央にある井戸を確認してみることにした。

 村の中央の井戸、となると何かしらはありそうだから、確認しておいた方が良いだろう。


「どう?何かある?」

「シンディ、危ないよ」


 井戸を覗き込むシンディを引っ張って落ちたりしないように気を付けながら、同じく井戸を覗き込んでいたテルセロの方を見る。

 ……すごく渋い顔をしている。熟れた美味しい果実だと思って齧ったものがとんでもなく渋くて食べれたもんじゃなかった時と同じ顔だ。


「何かあるっつうか……ここが中心っつうか……」

「文字通り?」

「文字通り。人を惹き付けて、じわじわ奪ってくタイプのやつだな」

「なるほど!ヤベェやつだ!」

「だからここ廃村なんだ……」

「ホー」

「あ、おかえりキヒカ」


 戻って来たキヒカから探索の結果を聞く。どうやら、テルセロの言う通り家のある範囲に嫌な魔力が漂っているらしい。

 村であることが重要なんだろうか。村の範囲が拡大したら、その分だけ強くなるとか、そういうのもたまにいるし、ここにいる何かもそれなんだろうか。


「……つまり、ここを更地にしたらいい」

「フィフィ?」

「前から、やるなら更地化だよなぁって思ってたんだよね」

「ホー」

「規模がでけぇんだよなぁ毎回……まぁ、その方が良いとは思うが」

「じゃあ更地にして封印しておくね。任せて、封印得意」

「流石フィフィ。すっごい硬い封印になりそう」


 この村を再興させる予定もなかったし、悪い物がいるなら更地にして井戸跡地にはしっかり封印を施させてもらおう。

 どうやら私の家は私が囲ったこともあり全く影響を受けていないようなので、今後じっくり更地にしていくことにする。ちょうど家も直し終わって時間もあるし、ちょうどいいだろう。

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