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ようこそ我が家へ

 朝一、畑に行って水やりと収穫を済ませる。

 熟れたトマトと、そろそろ最後だろうロピュを摘んで、軽く水洗いして籠に入れて家まで運ぶ。

 ロピュを植えていたところは、収穫を終えて残った部分が枯れたらヒロゾ芋を植える予定だ。夏に収穫して秋まで寝かせて、焼いてほくほくにして食べるのだ。


 トマトはいつまで収穫出来るんだったか、なんて考えながら収穫したロピュとトマトが入った籠をキッチンに置き、身支度を整えて杖を持ち上げた。

 家の掃除は昨日隅から隅までやったし、必要な物は見える位置に出してあるし、準備は万端だ。

 鞄を肩にかけて、中に必要な物が入っている事を確かめる。いつもは持って行かない物も、忘れずきちんと入れてある。


「よし、行こうキヒカ」

「ホー」


 キヒカを肩に止めて家の外に出て、杖に跨る。

 今日も行きは杖に相乗りするらしいキヒカを撫でて、ふわりと空へ舞い上がった。

 町まで向かう道すがら、ぽこぽこ脳内に浮かんでくる考えを風に流して、小さく笑いを零す。我ながらなかなかの浮かれ気分だ。


「ホー」

「うん、連絡は入れたよ」


 キヒカからテルセロに連絡は入れたのかと確認されたので、返事をしておく。

 いつもは寝室に置きっぱなしの連絡用魔道具だけれど、今日はしっかり持ってきている。合流に手間取らないためにも、随時連絡を取れた方がいいだろう、という話になったのだ。

 まぁ無くてもキヒカが空から探してくれるけれど、あった方が便利なのは確かなので。


 そんなわけで今町に向かっている、としっかり報告もしているので、問題はない。

 二人が昨日無事に町に着いたのは連絡を貰って知っているし、合流時間もざっくりだけど決めてある。

 私が町に向かっている時間で食べたい物や足りない物などあったら買っておいてくれるらしいので、合流後はそのまま家に向かうことになるだろう。



 時折キヒカと話しながら、いつも通り飛んできた町の前。いつも通りの場所で地面に降りて、荷物から連絡用魔道具を引っ張り出してテルセロについた、と連絡しておく。

 そして門番さんに会釈をして町の中に入り、噴水の所で合流と送られてきた文字に了解を返す。

 噴水前でちょっと待っていると、遠くから走ってくる人影が見えた。


「フィフィ~!!」

「シンディ」

「久しぶり~!わーい!」

「うん、久しぶり。元気そうでよかった」

「ホー」


 走って来たシンディを受け止めて、勢いを殺すためにクルクルと二回ほど回っておく。

 そしてシンディの来た方からのんびり歩いて来るテルセロを見つけて、片手を上げて挨拶されたので手を振り返しておいた。


「よう」

「テルセロも久しぶり」

「ホー」


 のんびり歩いてきたテルセロは、手に荷物を持っていた。シンディも荷物を背負っているけれど、それとはまた別な感じだ。

 待っている間に買ったものだろうか。食べ物とかちょっと買っておくって連絡も来ていたし。

 一応色々買って、作ったりもしてあるけれど、テルセロは騎士団なこともあっていっぱい食べるので、多めにあっても困ることは無いのだ。


「何か町で用事とかある?」

「いや、もう大体済ませた」

「私も!必要な物は多分全部持ってきたし!」

「そっか、じゃあこのまま、家まで行こう」

「うん!!」


 抱き着いて来るシンディの手を引いて、町の外まで移動する。

 門番さんに再度会釈。一瞬疑問の顔をしていたけれど、私がシンディの手を引っ張っているからかすぐに納得の顔で会釈を返してくれた。

 私たちがそんなやり取りをしている間に、キヒカはいつもの場所で既に身体を大きくし始めている。


「テルセロ、キヒカと杖どっちに乗る?」

「キヒカ。シンディ一人だと落ちそうだしな……」

「そこまでポンコツじゃないけど!?キヒカに落とされたことないし!」

「ホー」


 でっかくなったキヒカが乗りやすいように身体をかがめてくれているので、シンディが乗るのを手伝ってから私も杖に跨った。

 テルセロは手伝わなくても乗れるし、乗馬とか凄い上手だから心配は要らない。

 まぁ、乗っているのがキヒカな時点で心配はしていないけれど。


 そんなわけでやんややんや言いながら空へ上がり、来た道を引き返して家へと向かう。

 いつも通りの道を辿るので下に見える道から時々外れて最短距離を進むのだけれど、シンディはひたすら空を楽しんでいたし、テルセロは道から外れてもどのあたりにいるのか何となく把握しているようで、時々頷いているのが見えた。


 移動中に何か話したりは無かったけれど、行きよりも賑やかで楽しい時間を過ごし、体感ではいつもより早く家に到着した。

 キヒカが速度を緩めたので私が先に着地し、後から降りてきたキヒカから二人が降りるのを手伝う。

 家の敷地内に他の人がいるのは初めてだ。


「ようこそ、我が家へ」

「ここがフィフィのお家……!」

「フィーリアお前、これ全部直したのか……」

「うん。杭も立てた」

「ホー」


 ふふん、と胸を張って、シンディの手を引っ張って家の中に向かう。

 玄関で中履きの靴に履き替えて、とりあえずリビングに入ることにした。キヒカがリビングの出入り口から入ってくるようなので、合流の為だ。

 あと、荷物下ろしたいだろうし。場所が広いのはリビングなので、とりあえずリビングは間違っていないだろう。

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