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来客に備えて

 初夏の風が吹く、良く晴れた日。

 私はついに家の外壁を塗り終えて、とんでもない達成感に包まれていた。

 両手を上に上げて静かに喜びを噛みしめつつ、大きく見た目が変わった我が家を眺める。


「……見違えたなぁ」

「ホー」


 最初、ここに住み着くと決めた時と同じ家だとは思えないくらい、ピカピカになった。屋根も壁も直し終わって色が変わったし、家の周りは囲んで整えたし。

 まぁ、壁は出来るだけ平らにならしたつもりだけれど、近くでしっかり見ると凹凸が出来ていたりもする。それも味だ。素人が一人でせっせと直した家なのだから、そういう所があってもいいだろう。


 なんて思いつつ、とりあえずシンディとテルセロに家直った報告をするか、と道具を持って家の中に入った。二人からは予定を合わせて遊びに行く、と返事を貰っているので、あとは詳しい日程を決めるだけだ。

 日程を決めたらその日に町まで二人を迎えに行くとして、その前にやるべきことがある。


「よし、キヒカ。明日は町に買い物に行こう」

「ホー」


 魔道具でテルセロへ、手紙を書いてシンディへのお知らせを完了して、キヒカと明日の予定を決める。

 家の修理は終わったけれど、まだまだこのままでは来客を迎えるには不足している物が多すぎるので、それらを揃えに買い物に行くことにした。

 欲しい物が売っていそうなお店には心当たりがあるので、困る事はない……と、思う。


 もしなかったら、大慌てで町を回ることになるだろうけれど、まぁ、多分大丈夫だ。

 楽観視かもしれないけれど、キヒカが何も言ってこないあたりキヒカも同意見のはずなので、私が油断している、という訳でもないだろう。

 というわけで、今日は早めに寝て、明日は早起きして町へ向かうことにした。




 翌朝、ちょっと曇り空ではあるけれど、雨が降る様子はない空を見上げる。

 これなら問題はないだろう、と一つ頷いてから身支度を整えて、朝ごはんを食べたらとりあえず畑と花壇に水をやりに行ってから、杖に跨って空へと上がった。

 荷物持ったし、畑の確認もしたし、これでよし。さあ町へ行こう。


 いつも通り杖に相乗りしてきたキヒカを撫でつつ空を飛んで町へ向かい、まずはいつも通りロヒ・レメクだな、と予定を組み立てていく。

 お守りはそれほど手間もかからないので、息抜きや暇潰し、意識の切り替えにとちまちま作っていたら小箱がいっぱいになったのだ。


「まだまだお守り売れるのかな……?」

「ホー」


 そのうち落ち着くだろうと思っていたのに、いつまでも需要は高いままなようだ。

 なんて考えている間に町へ到着したので、地面におりてキヒカを肩に止めて、門番さんに会釈をして町へと入った。

 そしてそのままロヒ・レメクへと向かい、ルルさんにお守りを買い取ってもらう。


 今回も前に置いて行ったお守りはほとんど売り切れて、弱い方のお守りが一つ残っているだけだった。

 そんなに欲しい物だろうか……?と疑問に思いつつも、欲しがられるのなら有難いかと納得しておく。

 ルルさんからもまだまだ沢山作って大丈夫だと言われたので、次回も小箱にぎっしり作ってくることにして、今回は何も買わずにロヒ・レメクを後にした。


「……さて、今回の本題だ」

「ホー」


 キヒカを撫でて、向かう先を思い出しつつ足を動かす。

 これから向かうのは、前に一度行ったことのある折り畳み式の家具を売っていたお店だ。

 前に椅子二つを買った時に、こうして来客用の家具をそろえるためにもう一度行くことになるだろうと思っていたのである。


 使う頻度はそう多くないだろうから折り畳みが良いな、とシンディとテルセロを家に招きたいと思った時から考えてはいたのだ。

 なので、あのお店を冬の間に見つけられたのはとても幸運だったのである。

 ベッドが二つと、椅子もあった方がいいだろうか。なんて考えながらお店の扉を押し開けて、二度目ましてのお店の中に入った。


「いらっしゃい。何をお探し?」

「えっと、ベッドを二つ……あと、折り畳みの机と椅子があれば、見たいんですが」

「はいはい。ベッドはこっちに色々あるよ」


 店員さんに案内されて、並んでいる折り畳みベッドを見せてもらう。

 シンディは私と大きく変わらない身長なので、それほど大きなベッドじゃなくても大丈夫だけれど……テルセロはでっかいから、でっかいのじゃないと足がはみ出すだろう。

 というわけで、大きくて丈夫なのを一つと、そこそこの大きさで丈夫なのを一つ、とりあえず買うことにした。


 ベッド二つを確定させて、その後机と椅子を見せてもらう。

 机はどうしようか迷ったのだけれど、今家に置いてあるのは二人用で、三人で食事をとなったらちょっと狭いかもしれないので、追加できる折り畳みの物があった方が良いだろうと判断した。

 椅子は、既に買った折り畳みの椅子があるのであれでもいいのだけれど、高さが合うか分からないので、どうせなら一緒に高さの合う物を買ってこようかと思ったのだ。


 そんなわけで、見せて貰った机と椅子のなかで気に入ったものを買い、纏めて浮かせてお店を後にする。折り畳みなので思ったより嵩張らなくて良い感じだ。

 この後は、来客用の布団を二組と、あとは食器類を買いに行く予定だ。

 食器とカトラリー、自分の分の最低限しかないので。


「他に何か、いるものあるっけ」

「ホー……ホー」


 キヒカと話しつつ寝具を売っているお店に向かい、買ったばかりのベッドに合う物を選んで貰う。

 このお店は冬に風邪を引いて布団を買い替えることになったときにも来たので、お店を探して迷子になることもなかった。

 あれも悪いばっかりのことではなかったのだ、と、思っておくことにする。

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