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まずは掃除から

 畑を作ってから、朝起きて着替えて顔を洗って朝ご飯を食べた後に、外に出て杖とじょうろを持って畑まで水やりに行く、というルーティーンが追加された。

 花壇にも水をやって、それから今日は何をしようかと考える。

 とはいえ、今日のやることは決まっているのだけれど。


「まずは、掃除から」

「ホー」


 買ってきた道具を持って、私は家の外壁と向き合っていた。

 今日から遂に、家の外壁修理を始めるのだ。その最初の段階として、まずは壁を綺麗にしないといけないので、買ってきた専用の洗剤と掃除用のブラシを持って家の外に出てきた、という訳だ。

 ちなみにブラシは短めの柄が付いている物にした。長いと取り回しにくいけれど、柄が無いと高い所が磨けないので。


 水で希釈した洗剤をブラシに付けて、とにかく壁を擦っていく。

 せっせと擦ると泡が出て来て、その泡がみるみる黒くなっていく。……思ってたよりも汚れていたのかもしれない。やっぱり洗剤も買ってきてしっかりやって正解だった。

 キヒカに杖を持っていてもらって、ブラシを両手でしっかり力を入れて壁を擦る。


「思ったより、重労働……」

「ホー」


 私も家の掃除はほとんど毎日しているけれど、それとは何かが違うようだ。

 壁だからだろうか。腕を上げ続けているのが辛さの原因だろうか。

 なんて考えながら、せっせと壁を磨いていく。


 ある程度擦って壁が黒い泡に包まれたら、そこに水をかけて壁の洗剤を落とす。残っていると良くないらしいので丁寧に落としていたら、壁の色が明らかに磨く前と違う事に気が付いた。

 すぐ横がまだの場所なので、余計に変化が分かりやすい。


「これは、結構やる気になるかも」

「ホホー」


 変化が目に見えるというのは良い。分かりやすい進捗はやる気に繋がるのだ。

 続きも頑張ろう、と気合を入れ直しつつ、元はこんな色だったのか、と知らなかった家の一面にちょっと感動する。

 まぁ、この後また別の色になるんだけれど。


「よし、続きも頑張ろう」

「ホー」


 ブラシを持ち直して、洗剤を付けて壁へ向かう。

 中々時間のかかりそうな作業だけれど、やっていればいつかは終わるのだ。私はここまで家を直してきたことで、それをよく知っている。

 そんなわけでとりあえずせっせと手を動かして、壁を磨いて汚れを落としていく。


 それをお昼まで続けて、玄関周りはとりあえずある程度綺麗になったので、お昼休憩にすることにした。

 家の中に入って、靴を履き替えて手をしっかり洗う。

 この間町に行った時に、いつも食材を買うお店のお姉さんが簡単で美味しいご飯のレシピを教えてくれたので、今日はそれを作るとしよう。


 まずは葉野菜をむしって、しっかり水で洗って水気を切って置いておく。

 そしてお姉さんのお店で買った干し魚の身をほぐして、深めのお皿に入れる。

 そこに調味料を入れていって、ちょっと味見。もうちょっと塩気が欲しいので追加して、入れると美味しいと聞いたのでセピの搾り汁を追加。うん、さっきよりさっぱりした。


 続いてパンを出して、薄くバターを塗って表面を……炙ろうと思ったけれど、今かまどに火を入れていないんだった。炙らなくても美味しいから、このままにしよう。

 と、言うわけでバターを塗ったパンに、葉野菜と魚のほぐし身を乗せて、もう一枚のパンを乗せてぎゅっと押す。

 これで今日のお昼ご飯は出来上がりだ。お皿に乗せて、お水をコップに入れたらそれらを持って机に向かう。


 キヒカはお水だけで良いらしいので、水皿のお水を入れ替えてキヒカの前に置いておいた。

 向かい合って椅子に腰かけ、サンドイッチを手に取る。

 一口齧ると、しゃきしゃきの葉野菜と魚のほぐし身が一気に口の中に入って来た。

 これは、中々に美味しい。干し魚は今まであまり買っていなかったけれど、今後は買ってみてもいいかもしれない。


 良いレシピを教えて貰った……と感動しつつサンドイッチを食べ進める。

 セピの搾り汁がいいのか、さっぱりしていて食べやすい。そういえばたまにセピを使ったお菓子とかも見かけるし、今度見かけたら買ってみようか。

 なんて考えながらお昼ご飯を食べて、ちょっと休憩してからお皿を洗う。


 お皿を洗い終わったらもうちょっと休憩して、その後に壁の掃除を再開した。

 午後になって日差しは段々強くなり、日向で動き回っていると大分あっついくらいの気温だ。

 それでも日陰に入ったり風が吹いたりすると寒いので、そんなところでも春を感じながらひたすら壁を磨いていく。


 夕方まで壁を磨き続けて進捗は四分の一程だったので、やはり時間はかかりそうだ。

 なんならしっかり磨ききるために二回目もやろうと思っているので、単純計算で八日かかる。

 まだ第一段階なのだけれど、そんなにかかるとは。これは思ったより時間が掛かるかもしれない。


「春のうちにシンディ呼べるかな……?」

「ホー。ホーホホー」

「そうだね、焦らずにやろう」


 もしかしたら夏になるかもしれないけれど、それならそれで。

 もしその頃になるんだとしたら畑や花壇の進捗も見せられるし、早めに終わっても時間が掛かってもいい方に考えよう。

 焦ったところで進み具合は変わらないし、出来栄えも考えてじっくりやった方が良いはずだ。

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