畑周りの改造
町であれこれ買い物をしてきて、何からやろうかと考えたのだけれど、まずは畑の水を汲みやすくすることから始めることにした。
外壁が一番やりたい所ではあるけど、畑の水やりは毎日やることなので、やりやすくしてから他の作業をする方が良いだろう、と思ったのだ。
そんなわけで、今日もお弁当をこしらえて畑に向かう。
運んできた物を下ろしして、お弁当と杖をベンチの上に乗せたらとりあえず畑に水をやって小川の手前、使いやすい位置に印をつけた。
その後杖を持ってきて、ちょっと浮いて位置に問題が無い事を確認する。
「えーっと……位置は問題ないね」
「ホー」
印をつけた位置の真上に浮いて、真下に杖を向ける。
威力を調整して畑に影響が出ないように魔法を放ち、出来た穴に町で買ってきたでっかい器をはめ込んだ。
これは前に浴槽を買ったお店で買ったもので、屋外で水を溜めておく用に作られた物なんだそうだ。
一定以上水が溜まったら流れていくように穴も開いている。ちなみに開いていない物もあった。
畑に置くものは、一定以上は川に流れを戻したいので穴が開いている物にした。
そんなわけで、穴の位置をしっかり見極めて設置した。魔法で掘り起こして避けておいた土を穴と器の隙間に戻して、ズレない事を確認する。
「うん、いい高さ」
「ホー」
器の縁が、ちょうど私の腰のあたりに来ている。
川辺にしゃがんで水を汲んでいたのに比べれると、かなり楽になるんじゃないだろうか。
さて、後はこれを川と接続するだけだ。そのためのパイプは既に作ってあるので、用意してきた物を接続していく。
川から水を引いて来るためのパイプには魔法陣を仕込んであり、これはお風呂に置いてあるのと同じ魔法陣にしてある。
それに、足などをつけ足して、川底に対応させたバージョンだ。
一定以上溜まった水を川に戻すのは特に細工も必要ないので、ただのパイプを用意してある。
「えーっと……キヒカ、ここ押さえててくれる?」
「ホー」
器の縁にパイプをひっかけて、キヒカに押さえてもらってパイプの逆端を川に沈めに行く。
よいせ、とパイプを沈めて接続を調整し、キヒカに確認して問題が無かったので、用意していた魔石を真ん中に括りつけた。
これで常に発動して、川の水を引き込んでくれるはずだ。
「ホー」
「お、問題なさそう」
「ホホー」
「……うん、川の水量も大丈夫そう」
「ホー」
川を干からびさせるほどのパイプの太さはないので、これで問題なさそうだ。
確認を終えて、そういえばまだ接続が終わっていなかった、と慌てて川に水を戻す用のパイプも繋げる。
最後にパイプがズレないように固定したら、畑の改造は終了である。
思ったよりも時間が掛からなかったので、持ってきたお弁当は持って戻ることになりそうだ。
まぁ、それならそれでいい。戻って次の作業を始めるとしよう。
次の作業は、これまた水汲み関係だ。
家の敷地の中に花壇を作ろう作戦の最初の段階として、水やりの為の水を確保しようと思って、さっき畑に設置した器と似たものをもう一つ買ってあるのだ。
こちらは水を流す穴が開いていないタイプで、雨水を溜めるためのものなので畑の物より深さがある。
なので、深めに穴を掘って調整しないといけない。
「位置はここで……いや、あっちの方が良いかな?」
「ホー。ホホーホー」
「そうだね、石窯を作るならここがいいから……」
「ホー」
「あそこが花壇、ここは薪割り……」
「ホー」
「うん、ここがいいね」
位置を決めて、さっきよりも鋭く作った魔法で地面を抉る。出来上がった穴に器を下ろして、高さを確認してちょっと調整をした後に水平を確認して、穴との隙間を土で埋めた。
そして、こっちには魔法陣を彫り込んだ魔石を入れておく。集水と浄水の魔法陣だ。雨水が溜まって藻が生えたとか、そういう事になりそうなので先に浄水も付けておいた。
「よし……あとは雨が降ったら水が溜まるね」
「ホー。ホー?」
「うん、花壇作ろう」
水確保の目途が立ったので、この後は花壇を作るのだ。
花壇の縁に使おうと思って、淡い赤色のレンガを買ってきてある。
「さて……鍬でやった方が良いかな」
「ホー」
家も柵も近いし、この規模ならとりあえず鍬でやった方が良さそうだ。
という訳で鍬を持ってきて、レンガを仮置きして分かりやすくして置いた範囲をせっせと耕していく。
これにはなかなか時間が掛かって、最終的に種まきは夕方になった。それでも花の種を撒くところまでは出来たので、あとは雑草を取り除いたり水をやったりすればいい……はずだ。
「明日からは外壁修理だね」
「ホー」
これで、先にやっておきたかった作業は全部。明日からは外壁の修理を始めて、どのくらいで終わるだろう。
まだ始めてもいない事の終わりを考えるのは気が早すぎるかもしれないけれど、それでも外壁の修理が終わったらシンディを呼べる、ということで気が逸るのも確かだ。
終わりが見えてきたらまた詳しく考えるけれど、今から楽しみに考えるくらいは良いだろう。