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まずは杭立て

 屋根の張替えがついに完了し、我が家はキヒカ色の屋根になった。

 一部だけが張り替えられていた時はつぎはぎでなんだかなぁと思う見た目だったが、全てを張り替え終わった後は見違えるほどに綺麗になった。

 元が廃屋だったとは分からないほどじゃないだろうか。


 そんなわけで、ついに家を直す工程は残り外壁だけになり、それをやるには大工さんに教えを請わないといけない、ということで、その前に畑を始めることにした。

 まずは、家と同じように周囲を杭で囲んで、杭の間をロープでつないで安全を確保していく。

 とはいえ、家とは違い畑の方が守るのは難しい。全ての侵入者を弾くわけにはいかないし、虫や獣は悪意を持って入ってくるわけでもないので弾きにくいのだ。


 なのでひとまず、杭に刻む物を決めるところから始めなくてはいけない。

 畑を荒らすのは獣な気がするから一定以上の大きさを弾くようにしたらいいのかもしれないけれど、農家さんがたまに「虫が!!食いよる!!」と叫んでいるところを見かけてもいたから、獣だけ避けても駄目な気もする。


「うーん」

「ホー」


 悩みに悩んで、キヒカとも相談した結果、獣や虫の被害よりも嵐で全滅しないように守る方が良いのでは、という結論に至った。

 なので、刻むのは嵐の時に窓を塞ぐ板に書いているのと同じ魔法陣。

 一定以上強い衝撃の物を弾いて、中を守る魔法陣だ。これならもし猪が突撃してきても守れるので、ちょうどいい。


 魔法陣が決まったら、あとは彫り込んでいくだけだ。

 何を刻むか考えながら先端は削って尖らせてあるので、無心で魔法陣を刻んでいく。

 せっせを彫り込み終わったら、次は魔法陣の周りに打ち込む魔石を選んでいく。このためにしっかり屑石も買い足してきたから、量も心配ない。


「そうだ、キヒカのお守りもそろそろ確認しないとね」

「ホー。ホホー」


 小さな魔石をより分けながら、春になったらやらなきゃいけないことを思い出した。

 私は何かあるとすぐにお守りを作って人に渡す癖のある道具作りの魔法使いなので、当然キヒカにもお守りは持たせている。

 ちなみに自分用もある。いつも持ち歩いている荷物の中に入れてあるのだ。


 キヒカ用のお守りは、特に気合を入れて作ったものだ。

 攻撃から守るのはもちろんとして、炎などからも守れるようにと効果を追加してある。ついでに何度でも使えるように調整したし、発動が派手だと潜伏中にバレるかもしれないから、としっかり発動しつつも目立たないように、減光して魔力の流れをギリギリに絞って、出来る限り目立たないようにしたのだ。


 あれは流石に人に売るようにはできないなぁ、と私でも分かるくらいの気合の入ったお守りである。

 キヒカは強いのであまり発動もしないのだけれど、それでもたまには何かに反応して効果を発揮していたりもするので、年に一回は破損が無いか確認することにしている。

 それが、大体春なのだ。確認のタイミングで魔石に魔力を追加もするので、忘れてはいけない。


「ホー」

「うん、自分のもまとめてやるよ」


 キヒカ的にも、キヒカのお守りを確認する時じゃないと私が自分用のお守りを確認しないから、大事な用事になっているようなのだ。

 確かに大体ほったらかしなので、心配される気持ちも分からなくはない。でも、自分用の物を高頻度で確認するかって言われたら、しないのだ。面倒というか、忘れているので。


 そんな話をしながら魔石をせっせとより分けて、性質の近い物を並べていく。

 家の周りに杭を立てた時と同じように、杭の頭には数字を彫っていって順番が分かるようにしておき、魔法陣を囲むように魔石を打ち込む。

 全てに魔石を打ち込み終わって外を見たら、ちょうど夕焼けが見えた。続きは明日にした方が良さそうだ。




 翌朝、少し雲は出ているけれど雨が降りそうな感じではないので、朝ご飯を食べた後杭と木槌を持って畑に向かった。

 ふんふん鼻歌を歌いながら畑に行って、あらかじめ決めていた通り耕した範囲の一回り外側に杭を打っていく。


「ふぅ……今日中に終わりそうだね」

「ホー」


 家に比べて範囲も狭いので、午前中だけで半分ほどが終わった。これなら一日で終わりそうだ。

 そんな話をしながら、キヒカに持っていてもらった荷物を受け取る。

 今日は、せっかくだし外でお昼ご飯を食べようと思って朝ごはんと一緒に作ったものを持ってきたのだ。


「椅子とか置いてもいいかもね」

「ホホー」


 休憩がてら外で食べるお昼ご飯は中々に良い物だった。

 今回は川べりの方に移動して地面に座って食べたけれど、椅子くらいは置いておいてもいいかもしれない。休憩用にもなるし、物を置いておく場所にもなるし。


「そのくらいなら作れるかな……木材ってどれくらい残ってたっけ」

「ホー……ホー、ホホー」

「……うん、作れそう。明日晴れてたらやってみようか」

「ホー」

「確かに、種まきが先だね」

「ホー」


 屋根を直し終わったので、それ用に買っておいた木材は他に使っても問題がない。

 なので椅子を作るくらいの材料はあるけれど、その前にまずは種まきを終わらせてしまわないといけない。杭を立てて安全を確保してから、と思ってまだ撒いていないのだ。


「春はやることがいっぱいだ」

「ホー」


 何度目かの呟きを零しつつ、立ち上がって杭と木槌を手に取る。

 何はともあれ、まずは杭を立てきってしまわないと。

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