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あの後の話

 テルセロと約束した時間までまだ少しあるので、その間にシンディの所へ向かう。

 前から作ろうと思って調整していた魔法陣が最近ようやく完成して、シンディとの文通用の魔道具がついに出来上がったのだ。


「あ、フィフィ!」

「シンディ、今暇?」

「大丈夫、いつでも暇」

「ホー……」


 そんなことは無いと思うけれど、今時間があるのは確からしい。

 お店にいると邪魔になってしまうので、お部屋にお邪魔して持ってきた魔道具を机に乗せる。


「箱?」

「こっちは受け取り用。内側に魔法陣を彫り込んであって、この隙間から手紙が入ってくるの」

「反対側が開く……なるほど」

「窓の外とかに配置して、窓を開けて回収とかにして貰おうかなって」

「流石フィフィ……何がどうなってるのか分からないけど凄い」


 設置しやすいように紐とか釘をひっかけられる場所も作っておいたので、設置はやりやすいはずである。シンディなら多分出来るだろうし、自力で駄目だと思ったら周りを頼るのも早いので大丈夫だろう。

 そんなわけで多分大丈夫なので、続いてもう一つの道具を取り出す。

 こっちはシンディも見覚えのある物のはずだ。


「シーリングスタンプ?」

「うん。魔法陣を彫ってあるから、これを手紙に押してくれれば私の持ってる箱まで手紙が飛んでいくよ」

「またすごい物を作ってる……じゃあこの箱に手紙を飛ばすシーリングスタンプはフィフィが持ってるの?」

「ホー」

「うん。あ、シーリングワックス、魔力の籠ってる奴を使って」

「分かった!魔法陣分の魔力だね!」


 王都にならそういう物もいっぱいあるだろうし、私の方はヒヴィカのインクの店長さんに魔力の籠ってるシーリングワックスの仕入れをお願いしているので、問題ない。

 これでシンディとの文通もしやすくなる、とご機嫌にキヒカを撫でていたら、クリフさんがテルセロの来訪をお知らせしてくれた。


 私だけついていったらいいのか、と思っていたのだけれど、シンディも一緒で良いらしいのでそのままここで話すことなった。

 シンディは賑やかなのが好きだから、部屋の中の人数が増えてニコニコだ。


「王宮魔術師の仕事量がとんでもない事がついに公になった」

「わぁ」


 テルセロ的に一番大きな事件がこれらしい。確かにそれは、私にとっても衝撃の事実だけれど。

 遂にあれが知れ渡ったのか……とじんわり衝撃に包まれていたら、シンディが凄い頷いてることに気が付いた。もしかして既に知ってたんだろうか。流石シンディ。


「魔物の襲来時に、夜中にも関わらず王宮魔術師が大体全員仕事してたからな……流石におかしいって話になって、仕事量を調べたら他の数倍あった」

「まぁ、夜中なら普通に仕事してるよね……明け方に仮眠してるくらいで、あとは大体仕事してるし」

「フィフィ、おかしいからね、それ」

「うん、もうやりたくない」

「ホー」


 キヒカが居なかったら普通に精神が崩壊していた気がするからね、あの忙しさ。やってもやっても終わらない仕事の山。気付いたら増えてる仕事の山……

 考えていたら気分が沈んできたので、考えないようにしておく。

 もう終わったことだ。私は仕事を辞めて、家を直して住んでるんだから。春には畑も始めるんだから。


「で、そもそもなんであんなに仕事が多いのかって話になってな」

「魔法関係ない仕事もあるもんね!」

「何でシンディが知ってるの……?」

「ホー」

「本当だよ。なんで知ってんだよ。……で、その結果、他の部門の仕事が魔術師に流れてる事が分かった」


 ……だから他よりも圧倒的に仕事が多かったのか。

 こっちに増える分他は減るから、余計に差が生まれていたのだろう。


「元々は他が忙しい時に魔術部門が仕事を手伝ったのが始まりみたいでな、それを繰り返すうちに、忙しくなくても丸投げされはじめたらしい」

「うーん……なるほど……」

「今回の件でそれが発覚して、そもそも受け持つはずだった部門に仕事の再割り当てがされた。別の部門への手伝い、手出しも原則禁止になったし、定期的な見回りもされるようになった」

「わぁ……」

「ホー」


 大改善だ。ついにあのとんでもない忙しさから、先輩たちは解放されたらしい。

 良かった良かった、と小さく拍手していたら、キヒカが真似するように翼をバサバサ動かした。可愛い。


「そんで、王宮魔術師から伝言を預かってる」

「私に?」

「おう。元気そうで良かった、楽しく暮らしてくれってよ」

「……うん」


 突然仕事を辞めて飛び出した後輩を、先輩たちは気にしてくれていたらしい。

 そのうち、菓子折りか何か送ろうかな。今後はきっとゆっくり出来るだろうし、仕事にも余裕が出来るだろうから、休憩時に食べられるようなものを。

 なんて考えながら、何となく窓の外を見る。空は見事な晴天だ。なんとなく、節目にちょうどいい感じがする。


「……これからは、王都にも時々遊びに来るよ」

「うん!待ってるよ!」

「二人も暇な時遊びに来てね。屋根と外壁直したらになるけど」

「うん!!遊びに行くよ!!!」

「おう」


 これは気合を入れて屋根と壁を直さないと。

 来客用に色々増やす物もありそうだし、何が必要なのか、一回ちゃんと考えてリストを作って置いた方が良いかな。

 なんて、今後の予定をのんびり考えて、小さく笑う。楽しみな予定が増えるのはいい事だ。

書き始めた頃はここで終わる予定だったのですが、書きたいことが増えたのでまだしばらく続きます。

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