表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/200

お風呂の直し方

 キッチンを直したことで温かいご飯を食べられるようになったけれど、設備が整ってくると色々欲しい物が出てくる。

 そんなわけで、また町に買い物に行くことにした。

 欲しいものはキッチン関係だけではない。前回買わなかった浴室の物も色々買いたいので、今回もしっかり買い物リストを作っておく。


「あとは……」

「ホー」

「あ、そうだね、それも持って行こう」


 キヒカが咥えてきた紙も荷物に入れて、忘れずにしっかりと浴室の大きさを計った時のメモも入れておく。これを忘れたらまた浴槽が買えないからね。

 今は大き目の水桶に水を入れて沸かして、それで身体とか髪を洗っているから、しっかりお湯に浸かって休めてはいないのだ。そろそろちゃんとしっかり湯舟に浸かりたい。


 それから、浴室の事で大工さんに相談したいことがあったので、前に教えて貰ったお店に行ってみようとも思っている。今回も中々用事は多そうだ。

 前回と同じく朝早くに出て、夜に帰ってくることになるだろう。

 今回も野営の道具は持って行くとして、小鍋などはキッチンに持って行ってしまったので回収しないといけない。


「……よし、これでいいかな」

「ホー」


 支度を終えて、明日は朝早くに起きて出発になるので早めに就寝する。

 キヒカに寝過ごしてたら起こしてね、と声を掛けておいてベッドに潜り込み、目を閉じた。




 翌朝、日が昇るより少し早くに起きて支度をし、杖に跨って町へと向かった。

 キヒカは相変わらず杖の上に乗っていて、自分では飛んでいない。多分今回も帰りの為の体力温存なんだろう。機嫌良さそうに風を浴びているから、ただ楽しんでいるだけの可能性もあるけれど。

 まぁ、どっちでもなんでもいい。機嫌の良いキヒカは可愛いという、それだけで何だっていい。機嫌が悪くたって可愛いけれど。


 時々指先でキヒカを構いながら空を飛んで町へ向かい、悪目立ちしないように町に入る前に地上に降りて肩に移動してきたキヒカを撫でた。

 ついでに懐から買い物メモを取り出して、まずはどこから行こうか、と考えながら町に入る。


「……浴槽、の前に浴室の相談だよね」

「ホー」


 今回の一番の目的は、やっぱりお風呂だ。暖かいお湯に肩まで浸かって一日の疲れを癒したいのだ。

 そのためにはまず浴室の事を相談しに、大工さんの所に行くことにした。

 このあたりにお店があると言っていたはず、と記憶を辿って町を歩き、それらしきお店を見つけて足を止める。多分ここ、だろうと思うのだけれど、合っているだろうか。


 何か確かめる術がないか、と考えて足を止めていたら、扉が開いて中から人が出てきた。

 偶然か、店の外に不審な人影があると判断されたのか。ちょっとびっくりして後ろに跳んでしまったけれど、悪いことは何もしていないのだから堂々としていていいはずだ。

 なんて思いつつ開いた扉の方に目をやったら、あの時の大工さんが立っていた。


「おう、どうした嬢ちゃん。困りごとか?」

「はい、ちょっと相談したいことがあって」

「とりあえず中入りな。……今日はえらく細いな」

「あ、私が急に動いたから……ごめんねキヒカ」


 急に後ろに跳んだせいでびっくりしたらしいキヒカが細くなって固まっているので、撫でつつ大工さんに案内されてお店の中に入る。

 中にある椅子に言われるがまま腰を下ろし、膝の上に来たキヒカを撫でた。

 もうすっかり元の太さに戻っている。ふくふくしていて可愛い。


「キッチンは直ったか?」

「はい。シンクもかまども使えるようになりました」

「そりゃよかった。で、今日はどうした?」

「浴槽を新しくしたくて……あと、お風呂の水捌けが悪くって」


 ここ数日、浴槽には浸かれなくても浴室を使っていて気付いたのだが、あのお風呂水捌けが悪い。床の一部が変に凹んでいるのかそこに水が溜まるし、他の所の水も中々流れて行かない。

 排水に問題があるのかと、魔法で水を作って流してみたが、そっちには問題が無かったので詰まっているとかではなく単に水捌けが悪いようなのだ。


 そんな説明をして、出してもらったお茶を一口飲む。

 大工さんの奥さんっぽい人が出してくれたのだけれど、その人も凄く良い人の気配がした。私の膝の上でとろけるキヒカをすごく優しい目で見ていたので、これはもう優しい人だろう。


「風呂の勾配が付いてねぇんだろうな……床の材料は分かるかい」

「石……?あの、土台とかと同じ感じのやつです」

「なるほどな。かまど作った時のセコトは余ってるか?」

「はい」


 セコト、はあの接着用粘土の名前だったはずだ。あれなら、まだそこそこ余っている。でっかい袋でしか売ってなかったから、でっかいのを買ったのだ。

 なのでまだある。結構ある。どうしたもんかとちょっと困っていたので、使えるなら使いたい。


「風呂の床にセコトを撒いて、排水溝の方が低くなるように勾配付けていくんだが……」

「……なるほど」


 もしかして、これは中々素人には難しい作業だったりするだろうか。

 勾配は水が流れるくらい、人が立っても分からないくらいでいいらしいのだが、それがむしろ難しそうだ。

 ともかくやり方を教わって、注意点なども教えて貰ってメモを取る。


 失敗しても困るのは私だけだし、とりあえずやってみよう。

 どっちにしろやってみないと湯舟には浸かれないのだから、とりあえずやってみるべきなのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ