第六話 夢の話
?「…い…ーい…」
…?何…だ?誰かが…呼んでる…?
んん…まだ寝かせて…
・ ・ ・
ん?何で寝てんの、俺?
んーっと…
これがこうしてこうなって…
っ!神大…!
?「おーい。もおぉ。起きてよー。」
俺「神大!」 ゴツんッ
?「いっ…たぁ〜!」 俺「ゥガハッ!イッ…ツァァ…」
痛ってぇ…
ったく…誰だよ?頭ぶつけるようなとこに顔置いてやがんのは…
って!
うえぇ!なんだこれぇ?!
まるで人型の雲みてぇな見た目してやがる!
それに!所々に…何だ?蓮…?みてぇなの付いてっし!
ってか、さっきしゃべってた?!気のせいか?
それに、ここ何処だよ?!
辺り一面雲だらけ…
ん?
『辺り一面雲だらけ』…?
何?俺、もしかして死んだ?
・ ・ ・
『辺り一面雲だらけ』…
『天国』…?
なんで俺が…?
なんで?
なんでなんでなんで!!!!
人を殺そうとする下衆野郎だぞ!
ろくに働かねぇ人間のゴミだぞ!
何も知らずに、息子に我慢ばっかさせてたクズだぞ!
母親の愛情を知らなくて、俺なんかよりもっとつらいはずなのに、自分の気持ちばっかり優先してた自己中だぞ!
そんな俺が…!
なんで…
?「もぉ!頭ぶつけたじゃん!何してくれてんの!」
俺「あぁ、すみません…」
?「え?あぁ、こちらこそごめんなさい。
どうしたの?
前回より元気ないね?
敬語だからそう見えるだけ?
いや、前回も敬語だったもんね。」
前回…?
俺はここへ来たことがあるのか…?
死んだことはないし…
俺「あの…
ここはどこですか…?
そしてあなたは…?」
?「え?
あ、そっか覚えてないのか。
はぁ…だから言おうとしたのに、聞かないから…
はぁ…
しょーがないなぁ…僕はヒュプノス。夢の神。此処は…」
俺「いやいやいやいやいやいや。待て、待て、待て。
う〜んっと…頭、大丈夫かな?」
ヒュプノス「急に敬語外れるなぁ?!
僕だって神様なんだよ?!
てか、大丈夫かって聞くぐらいなら君はどうなんだよ!中二病のことを散々否定しておいて、さりげなぁ〜く、最初からなぁ〜んにも疑ってなかったかのように中二病ライフ楽しんじゃってさ!」
俺「(ギクっ!)」
ヒュプノス「言っとくけど、この会話2回目だし、さっきの会話も2回目だからね?」
俺「待って?何で2回目なのに覚えてないn…
あー。
いや。
なんかあったような気がするなぁ…こんな感じの。」
改めて説明してもらいながら、頑張って思い出してみた。
まず、俺は『睡蓮の夢』で寝ちまった訳だ。
したらば、ここ『神の国』へ辿り着くわけだ。
んで、この(ちょっと)キッショいのと出会う。
さっきと同じ会話をする。
コイツに『ヒュプノスの加護』をつけてもらう。
結果貰ったんが、『睡』属性と、魔力少々。
(遥の”アレ”でブッ飛ばなかったのもそのおかげだな。)
んで、『睡』を使う時には条件があって、
『自分の睡眠時間を削って、その分を相手に貼り付ける』ってのらしい。
使った時の例として、
1.『過去の睡眠時間を削れば、睡眠時間を補おうとするから、削った瞬間眠くなる。』
2.『未来のを削れば、しばらく眠いまま、眠れない地獄を味わう。』
3.『寝てる瞬間に削れば、目覚めて、削った分の時間が経った後、眠くなる。』
で、条件みたいなもんがもう一つあって、
『睡眠時間を削ると、見ていた夢を忘れてしまう。』らしい。
んで、その説明を最後まで聞かずに、俺は削っちまった訳だ。
ふむふむ。
なるほど〜。
ヒュプノス「どう…かな?
思い出した?」
俺「うん。初耳。」
ヒュプノス「(ズコーッ)」
俺「まぁ、話はわかった。
俺がA相手に十分戦えたのには、そーゆー理由があったのね?」
ヒュプノス「まぁ、君も努力してたんだけどね。」
俺「んで、何で呼んだの?」
・ ・ ・
ヒュプノス「何でだっけ?」
俺「うぉぉい!」
ヒュプノス「まぁ、伝えたい事伝えたし…
それに、呼んだっちゃ呼んだけど…
多分君、睡眠時間のツケで来たんだと思う。
うん。多分ツケ。だから、しばらく帰れないよ。」
俺「は?マジで言ーてんの?それ。
早く帰らんと息子が、ジーマーでバイヤーな状況に天涯孤独のぼっちぼっち〜で置かれちゃって大大大大ピンチなんよ。」
ヒュプノス「ごめん、分かるように言って?」
俺「早く帰らせろ!」
ヒュプノス「そんなこと、僕に言われたってなぁ〜。
自分で1日分(24時間)削った人がいるもんなぁ〜。
それに僕は夢の神だしぃ…
起こせないんだよなぁ〜。」
俺「『目覚めの神』的な奴呼んで来い!」
ヒュプノス「そんな神様いないんだよねぇ〜。
少なくとも、僕の知る限りじゃ。
それに、今起こしてもらったところで、またツケは回ってくるんだよ?
今しっかり寝ておいた方が良いんじゃない?」
クッソ〜、マジかよ…
詰んだやん…
…
ヒュプノス「そんなに早く目を覚ましたいの?」
俺「当たり前の助だ!
息子が困ってんだぞ!助けに行かないと!」
ヒュプノス「…
そっか…
まぁ、楽しんでいきなよ。」
俺「はぁ?!
言っただろそんな場合じゃな―――」
ヒュプノス「シーッ。
良い?よく聞いて。
ここは、神の国。
でも、君はここに、夢を見ることで来ている。
つまりはここ、『夢』なの。
夢の中はね、時間感覚が曖昧なの。
だから、夢によっては時間が変わる。
楽しい夢は覚えてなかったり、早かったりするでしょ?」
俺「お、おう。」
ヒュプノス「逆に、嫌ぁ〜な夢ははっきり覚えてたり、ゆっくりだったりするでしょ?」
俺「だ、だから何だよ?」
ヒュプノス「そ〜ゆ〜こと〜♪」
俺「は?」
ヒュプノス「早く帰りたいなら楽しんで行けってこと。
楽しいほど早いよ。
それに、夢の中だから、何でもできるし。」
…
本当か…?
…
やってみるしか無いか…
よし。やってみたい事だな。
ん〜…何だろ…
?「まーくん。」
?!
ゆ―――!
ヒュプノス「あれ?
…
もう帰っちゃったんだ…
そんなに、楽しい夢だったのかなぁ…」
?「ふ〜ん、ふ〜ん、ふふ〜ん、ふ〜ん♪」
…?
誰かの鼻歌だ…
女性のようだ…
ん〜…
結婚式とかのあの曲っぽいな…
…
にしても、聞き慣れた嫌ぁな声だ…
…
この声は…!
遥「ふ〜ん♪」
俺「げっ!
何でお前がここに!」
遥「ん?
なんだい?もう目が覚めたのかい?
ちぇっ。もうちょっとくたばってていい…いや、もうちょっとくたばっててくれない?
ていうか、何で神くんの目が覚めないのに、
君が目を覚ますのかな?」
え。
え?
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!
こ、ここここここここ、神くん?!
何様?
殿様?
お嬢様!
あぁ…いやいやいや。
違う違う。
え?
どーゆー状況?
へ?
何事?
俺「お前…」
遥「なんだい?」
俺「頭打ったな。」
遥「打ってないよ!」
俺「じゃあ何だよ!神くんて!」
遥「え?」
俺「『え?』じゃねーよ!
何で急に神くんなんだよ!」
遥「だってボク達…
結婚するんだから…♡
俺「やっぱ頭打ったな。」
遥「だから打ってないよ!
彼はボクを助けてくれたんだろう?
ボクは今まで彼に酷い事ばかりしていたのに…
逆にボクは、こんなに優しい彼を酷い目に合わせていたのに助けてもらった。
何故なのか?
そして気づいたんだ。
ボク達は、両想いなんだって。
嫌な奴ならわざわざ構わなくても、放っておけばいいだけ。
それをわざわざ構うのは何故か?
好きだから見捨てられなかったんだよ。
あんなにいじめられていたのに助けたのは何故か?
好きだから見過ごせなかったんだよ。
しかも、こんなカッコいい台詞も言ってたらしいじゃないか。
『世の中には助けたくても助けられない人がいる。
目に見えないところで助けを求めている人もいる。
そして、自分に助けられる人数には限りがある。
なら、せめて助けられる人だけでも助けてやりたい。
それだけだ。』
くぅ〜!!
神くん!カッコいいぃ!♡」
俺「へー。そうかいそうかい。」
遥「興味なさそうにするな!」
てゆーか…
ここどこだよ…
なんちゅうギラギラな飾り付けだよ。
眩しすぎて死ぬか思たわ。
遥「ん?
あぁ、この飾りかい?
ボクが神くんの為に用意したのさ。
この病室も神くんの為。
本来ならVIPしか使えないんだよ?」
俺「え、何?
え?ここ、まさか…?」
遥「だ・か・ら、言ったでしょう?
ここは、エンペラー病院の特別病室。
何?文句があるならいいよ。出てってくれても。
神くんの連れって言うから、
もしかしたら、神くんが喜ぶかな〜と思って連れて来ただけだから。」
俺「いやいや…感謝以外の何物でもないから…」
ひょえぇぇ…
お嬢様って怖ぇぇ…
好きになった相手にここまでするなんて…
…
ん?
まてよ…?
てことはぁ?
俺「オメェ、結婚言うた?」
遥「言ったけど。
何?君とじゃないよ?
当たり前だけど。」
フッフッフ…
クックック…
俺「ニョホホホホホホホ!」
遥「急に何だい?気持ち悪いな。」神大「急に何だ。気持ち悪いな。」
俺「だからサラッと言うな!サラッと!
って…!」
俺「神大?!」 遥「神くん?!」
俺「びっくりしたぁ!
いつから起きとってん?!」
神大「父上の気色の悪い笑いで目が覚めた。」
俺「だからサラッと言うな!サラッと!」
いやぁ…
にしても!
神大にこんなチャンスが訪れるなんてよ!
良かったなぁ…
一生遊んで、イケメンにかわいがってもらいながら暮らせるぞ?
俺はぼちぼち動画投稿してっから、
たまに遊びに帰って来いよ…
遥「?!
…あっ。
こ、神くん…
お、おはよう…」
神大「…?
何を言っているんだ。今は昼だぞ?」
ガッ?!
コイツ!
さっき起きたとか知らんから、察せ!
とりま察してくれ!
遥「あ、うん…」
神大「どうかしたか?
いつもと様子が違うぞ。
具合でも悪いのか?
何処か酷く打ったのか?
それとも、あの時の後遺症が?」
遥「え?あ、いや…」
クッソ〜
思い出した!
コイツは恋愛に無関心!
俺から遺伝した疎いのはあるが、
それ以上に、コイツは無関心!
両想いなものか!
完全なる片想いや!
夢の実現はまだ遠かった…
クッソ〜!
俺が教えてやらねば!
俺「あのなぁ!この子はオメェにこiwo…」
(遥)言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな…
ヒョエェ…
とんでもねぇ形相してやがらぁ…
言ったら殺される…
俺は恋愛に興味はあるが…
とにかく疎いのだ…
あかん。気づかんかった…言うたら即死や…
神大「何だ?物を言うならハッキリと言ってくれ。」
俺「あ、あのな?」
(遥)言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな…
分かってますよぉ!
言わなきゃ良いんだろ!
言わなきゃ!
俺「彼女は、オメェに恩返しがしたいらしいんだ。」
神大「そうなのか?」
遥「…!
(首を縦に大きく振る)」
いや、喋れし。
どんだけ緊張しとんねん。
神大「そうか…
とてもありがたい。」
をー!
神大「だが…」
え?
神大「気持ちだけもらっておく。」
俺「(ズコーッ)
アホかお前は!
あのな?!せっかくくれるっつってんだろ?!
こういう時は有り難ぁく頂くもんなんだよ!
それにすでにこの病室、VIP室なんよ!
もう一度言うぞ?!
こういう時は有り難ぁく頂くもんなんだよ!」
神大「父上はそんなに傲慢な人間だったか?」
うっ…
そーゆーことじゃねーよ!
解れよ!
この状況!
ほら見ろ!
お前の遥ちゃんが泣いて…
俺「ダァァァ?!
待て待て!首を吊ろうとするなぁぁぁぁぁ!」
俺「落ち着いたか?」
遥「うん。」
俺「すまんなぁ…あんな奴で。」
遥「何故君が謝るんだい?
大体、悪いのはボクだ。
理由は定かではないけど、きっと、
イジメていたボクに対してトラウマというか、
そういうのを抱いてしまったんだろうね。」
…
イジメにトラウマね…
…
遥「でも、勘違いするなよ。
君に対しては悪気はない。
君は確実にボクに歯向かった。
彼に対してはイジメだった。
でも君に対しては制裁だ。
友人だろうが何だろうが君は許さない。
ちょいとでも歯向かってみろ。
徹底的にブチのめす。」
俺「ほぅ…向かってくるのか…
逃げずにこの魔裕大に近づいてくるのか…
せっかく父の俺がわたしの息子と、ラブラブ結婚させてやろうかというのに…」
遥「は?
あのさぁ、
この前から気になってるんだけど、
何で君が親判定な訳?
意味がわかんないんだけど。」
俺「(ピッ)
痛ってぇ…
…
ほら。俺のサラサラhairだ。
DNA検査でもしてこい。
オメェんとこの技術力なら数分でわかるらしいな。
ほら。神大んとこ行って検体貰って来い。」
遥「どれだけ自信があるんだよ…
ていうか、神くんはどこ?」
俺「オメェがくたばってる間にリハビリ行ったよ。」
遥「え?!
あんな体で?!
急がなきゃ…!
っ…そうだ。
もし、嘘だったら…どうなるか分かってるよな?」
俺「おう。煮るなり焼くなり三宮和也よ。」
遥「ぐっ…
か、覚悟してろよ!」
数分後…
遥「おい。」
俺「んぉ?もう帰ってきたん?思ったより早かったなぁ。
んで、結果はd―――」ゴンッ
遥「結婚させて下さいお父様!
この通りです!
お願いします! ゴンッ
お願いします! ゴンッ
お願いしまァァァす!」 ドゴォォォォン
俺「え?
え、あ、うん。そのつもりだったんだけど…
頭大丈夫?かなりの音出てたけど…」
遥「…」
俺「ん?
おい?大丈夫?
おーい。本当に大丈b…」
って!
頭から血ぃ出して気絶しとるやないかい!
俺「だ、誰かァァァ!」
どうやら、
夢は始まったばかりらしい…
読んでくださり有難うございました。ぼちぼち頑張ります…