第二話 特訓
特訓といっても、ひとえに体を鍛えるだけではない。
俺はこの件について何も知らんから、神大からもらったメモで勉強してる。
るんだけど…
えぇっと…
まず、『魔力』がある。
魔力の量が多いほど、『能力値』と呼ばれる、物理攻撃力・防御力、魔法攻撃力・防御力、機動力、魔力変換効率の、六つの値が大きくなる。
ん〜…
ムズイなぁ〜…
まぁ、要は?
魔力量=ステータス基準ってこと。
で、いい…よね…?
神大「まぁ、例外もあるが(ボソッ)」
俺「ん?なんか言った?」
神大「いいや。何も。」
俺「ふーん。」
これは魔法や技を使用するのに必要なエネルギーでもある。
んで、使わないのもある。
それが『初持技』と、『初持能力』。
まず、『技』と『能力』がある。
技が、一時的に効果を発揮する技。
能力が、持続的に効果を発揮する能力。
その中でも、生まれた時から持っていたのが、『初持系』。
初持系は、基本的に魔力を消費せず、強力なものばかり。しかし、必ず弱点(短所)がある。
うぅ…またまたややこしい…
漢字が同じで読みが違うのとか特に…
ん?
俺「あ。」
神大「?」
俺「そういや、魔力なくなるとどうなるん?」
神大「あぁ、なくなるとだな…」
俺「なくなると…?」
神大「…
やっぱりやめておく。」
俺「なんでやねん!教えろよ!」
神大「いや。やる気をなくされても困る。」
俺「はぁ?なんだよそれ…」
まぁ、やる気なくすようなら無理に聞かんが…
…
んで?
俺も初持能力を持っていて、名を『最強』。
基礎スペックがまぁまぁ低めで、
『最強になる』ことができるが、発動条件は不明…
最強の具体的な内容も不明…
俺「って、雑魚すぎだろ!
にゃあにが『最強』だ!笑わせてくれるぜ!」
神大「よく読め…」
ん?
オリジナル技が生まれやすい…
俺「分かるか!
いいか、神大、お前はまず、字が汚ねぇ!
次に整理しろ!こんな矢印だらけで分かるか!
とにかく、ぐちゃぐちゃすぎるんだよ!メモが!
てか、どっちにしろ弱ぇじゃんかよ!
何をもってして最強なんだよ!」
神大「落ち着け。
何のための特訓だと思ってるんだ。
それに、先日手に入れただろう。オリジナル技なら。
あの素早いパンチ。
そうだな…『閃拳』とでも名付けるか。」
俺「『閃拳』…!
おぉ…カッケェ…!
オリジナル…俺の…
スゲェ…!
強そぅ…!」
神大「いいか!
父上の弱点は、他の初持能力と違って、克服が比較的簡単なんだ!
最強に成れなかろうが、基礎スペックが低かろうが、
特訓次第ではどうとでもなる!
それに、今回は相手が分かってる!
これほどラッキーなことがあろうか!
いや、普通はない!
だから読め!」
俺「お、おぉ…」
なんか、強引に丸め込まれているような…
まぁいいか。
えぇと、
相手の本名は遥・エンペラー。
エンペラー財閥の会長、
彼方・エンペラーの娘で、財力はもちろん、
学校内一の学力、魔力量、初持能力を持つ。
また、この『エンペラー魔術養成学校』は、エンペラー財閥が管理している…
なるほどね?
だぁからあんな傲慢な態度を自由に取れるわけだ。
『いつでも追い出せる』って…
俺「フン、付け足しておくならば、『下衆さ』もトップクラスなんだけどな。」
神大「ん?何か言ったか?」
俺「いいや。何も。」
神大「そうか。」
んで、問題は初持能力にあると。
『絶対皇者』。
魔力量が他の能力者に比べ、圧倒的、絶対的に多い。
つまりは、能力値も…
んで、自分の魔力量の、十分の一以下の魔力量の能力者は、怒りに触れると自動で吹っ飛ぶ…
…
強すぎる…
ほんとに勝てんのかぁ…?
俺「ねぇ、これ…
最強じゃね?」
神大「それは父上の能力だ。」
いや、チガーウ!ソーユーコトジャネェ!
クソッこいつ、マジなのかボケてんのかわかんねー…
イケメソだし、身長たけぇし、頭も良いし…
誰に似たんだ…
ちょっとぐらい俺に分けろ!
って、話逸れたわ。
ま、まぁ、弱点があるってさっき言ってたもんな。
さてさて、弱点はっと…
弱点はっと…
弱点は…
弱点…
…
ん?
神大「あぁ、弱点を探しているのか?
流石に調べがつかなかったらしい。」
俺「?」
神大「?」
俺「?」
神大「?」
・ ・ ・
俺「ふぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん?!
バカジャン!
ムリジャン!
オワッタジャン!」
俺&神大「私が好きなの豆板醤。」
俺「って、
チガーーーーーーーーウ!
ん…?
らしい?
らしいって、これ、誰が調べたんだよ。」
神大「伯父上だ。」
俺「(ズコーッ)」
アイツそんなことできたのぉ…?!
知ラナカッタンデスケドォー!
神大「なかなかリサーチ力はある筈なんだがな。
仕方がない。俺が聞いておこう。」
俺「いやいやいや。
待て待て待て。馬鹿かって。行かせるわけないだろ?
俺が行く。」
神大「父上が行ったところで、この前みたくなるだけだ。
危険すぎる。
俺が行く。」
俺「アホか!
オメェにはなぁ、心の危険があるんだよ!
子供の!健やかな!成長を!妨げるもんは!近づけさせないのが、親の使命なの!
わーったか!」
神大「そ、そうか…
じゃあ、任せるぞ…」
そんで、いよいよ特訓なんだが…
できね〜(泣)
なんで〜
あんなに綺麗に『閃拳』決まったのにぃ〜…
なぁ、なんでだと思う?
神大「どこに、誰に向かって喋ってる?」
俺「いいの!ほっといて!
恥ずかしいでしょ!
日記みたいな感じのやつなの!」
神大「ならわざわざ口に出して言わなくてもいいだろう…」
俺「てかさぁ、できねぇんだけど…」
神大「何故できないんだ?」
俺「何故って…
それが分かったら苦労しないっしょ。」
神大「父上は、赤ん坊の頃から能力で大暴れしていたそうじゃないか。」
俺「え?マジ?」
神大「それをやめさせるべく、祖父上が一度赤ん坊まで戻し、父上の能力を抑えつけていたらしい。
父上が現実を見るまでな。」
俺「あーだから年齢の割にジィさんな見た目してんのねぇ〜…
なんか申し訳ないわ。
てか、人生3週目じゃね?それ。」
神大「父上はやたらと祖父上に攻撃を仕掛けていたらしいぞ。
特に、中学2年生あたり。」
俺「そういえばさ。
なんでやたらと中2にこだわるんや。
いやまぁ、俺が暴走した時期が被ったのはたまたまなんやろうけどさ。
若返らせて人生やり直すならBabyの時からでええんとちゃうん?」
神大「中学2年生という時期は、中二心がもっとも成長する時期。
文字通り中2だからな。
理由は不明だがな。」
俺「あのなぁ、
何事にも理由とか理屈とか意味とかさ、なんかしらあんだろ。
てゆーか、必要なんだよ。
そこんとこ、ちゃんとやってかないと後々…」
神大「理由なんて要らないだろう。」
俺「は?」
神大「何事にも理由がいるのか?
俺は要らない事もあると思う。
美しいものを見て、美しいと思う事に理由がいるのか?
確かに、何処に眼をつけて思ったのかは、理由に成り得るだろうな。
だが、それを美しいと思った理由というのは、はっきりとはわからないと思う。
人の心に理由がいるのか?
この世界の初まりに…
理由がいるのか?」
・ ・ ・
?
俺「お前、だんだん脱線すんのやめろし。」
神大「はぁ…」
俺「ため息つきてぇのはこっちだよ!」
神大「何でも理由はあるだとか、
そーゆーのが1番の敵だ。
いいか、この現象に明確な理由は…
少なくとも、今のところはない。
そして、赤ん坊の父上にもできる。
そして、能力を使えるのは中二病のみ。
つまりは?
これらの現象は、『信じる気持ち』から来るのだ。
『病は気から』だとか、『怖い話をするとお化けが来る』だとか、そーゆーレベルの話だ。
疑っていては話にならん。
『信じろ』!
それが1番の素質だ。」
…!
…
…?
あれ?また丸め込まれてるような…?
神大「まぁ、話を戻すが、
『閃拳』。今のままでは期限までに到底完成しない。
『閃拳』どころか『鈍拳』…
ましてや、父上は基本的に身体能力が低すぎる。
低級能力者どころか、格闘家…
いや、喧嘩の弱い一般人にすら勝てん。
『雑魚』だ。」
ざ、雑魚…?!
『『『雑魚だ。』』』
ガビーン!!
しょ、ショックすぎる…
実の息子に雑魚呼ばわりとは…
俺「そ、そんなボロクソ言わんでも…」
神大「ボロクソ?
事実なんだから仕方ないだろう。」
ガビーン!!
事実!!
オーマイガッシュ!!
神大「だから、特別に手助けをしてやる。」
俺「こんな状況でも入れる保険があるんですか?!」
神大「違う。
何処かで聞いたような…
まぁいい。」
…?
俺に手をかざすってことは、
俺に魔法をかけるんか?
―強化 『強化』―
神大「今、『強化を強化する』魔法をかけた。」
俺「?」
神大「1日1回。効果は30分。
世間一般的には、『実用性のない、ゴミ魔法』として、忘れ去られかけている。」
俺「何でんなもんかけたんや」
神大「父上、さっき、『何にでも理由や意味がある』と自分で言ったな。
これぞ、まさにそれだ。」
俺「?」
神大「この魔法のように、強化魔法は色々ある。
攻撃力を強化したり、防御力を強化したり、『属性』を強化したり…」
俺「まてまて。『属性』ってなんや?」
神大「また今度説明する。
2度目になるが、この魔法は強化を強化する。
つまり…」
俺「効果倍増…
Right?」
神大「Yes.That's right.」
俺「でもよ、なんでそれをいまかけたんだよ。」
神大「別に強化魔法以外は強化できないとは言ってない。」
…
?
神大「『身体強化』を『強化』できる。
つまり…」
俺「トレーニング効果アップ…
Right?」
神大「Yes.That's right.」
俺「オーマイガー!
んなもん、努力のしがいがありすぎにも程があんだろ!
もう、大好きな米津玄師のMVばりに努力するだけやん!」
神大「なら、仕上げはトラックに撥ねられるか。」
俺「アホかw
流石に死ぬわw」
マジで米津玄師大好きだし、尊敬するわぁ。
作詞できて作曲できて、歌えて絵描けてダンスできて…
ネタにされる勇気もある。
とにかく大好きだわ…
神大「ほら。もう3分過ぎたぞ。」
俺「オーマイガッシュ!
ほな、行ってくるわ!」
神大「ああ。頑張れ。」
(神大)…
どこへ行くんだ…?!
よし!
信じるのが大事だったんだよな?
う~ん…
できると信じれば良いのか?
う~ん…
じゃあ、『自分が強い』と信じてみようか。
こういうのは、手前の目標よりもデカい方が良いからな。
それに、『最強』なんだし。
よし。
『自分は強い自分は強い自分は強い自分は強い自分は強い自分は強い自分は強い自分は強い』…
これで俺は強くなったと信じ込んだはず!
これで、岩に向かって…
俺「閃拳!」
コォォォォォォォ
お?
いけるか?!
俺「おりゃ!」
ペチッ
・ ・ ・
痛ッッッッッッッてェェェェェェェェ!!!
それに怖いよぉぉぉぉ!!!
多分これ以上のパワーで殴ってたら拳砕けてたよォォ!!!
まだ信じきれてないのか…?
…
いや、まず、この前の閃拳は、ほぼラリアットみたいな感じで腕をブン回してたな。
今みたいなパンチとは程遠い…
…
まず筋トレしようか。
2週間後…
よし!
まず、自分は強いと信じる。
次に、拳に力を込める。
そして、岩に向かって…
―閃拳―
ドゴゴゴゴゴォォォォ
よぉっし!綺麗に粉々になったなぁ~
閃拳は当たり前にできるようになってきた。
身体能力も上がってきたし…
奴らの泣いて謝るところが目に浮かぶぜ…
俺「ククク…クッ…ニョホホホホホホホ!」
(神大)…
正直、父上を甘く見ていた…
『強化 『強化』』をかけたとはいえ、
ここまで早く成長するとは…
それに、『陰キャの隠密』…
あの技、意識せず…
いや、それどころか、日常的に使用しているな…
一緒に暮らしていても、
父上は殆ど部屋にこもっていたからな。
伯父上や祖父上が、仰っていた通り、凄い技だ…
更に…
気づいていないという点で言うならば、
あの『閃拳』も…
自然と属性…
いや、それに近い力を使っている…
よく見ないと分からなかったが、直接は殴っていない。
超高速で殴ることで、気の流れをまとい、その圧で破壊力を得ている…
…
そろそろいいかもな…
俺「ニョホホホホホホホ!」
神大「どうした。気持ち悪いな。」
俺「サラッと悪口言うなし!
いや、なんかさ、ワクワクする時とかって、
内側からカール巻いて湧き上がって来るような感じ(?)
で笑いが込み上げてこない?」
神大「こないな。」
俺「だから、またサラッと!んもぅ…
てか!
そんなにサラッと流せるならアイツらにもやれよ!」
神大「やったからああなったんだ。
無駄口叩いてる暇があったら練習しろ。」
ちぇっ 調子乗りやがってよぉ…
俺のほうが弱いからなんも言えねぇ…
クッソー!お前もまとめて全員顎外れるくらいに驚かしてやんよ!
神大「それは置いておいて…」
俺「?」
神大「属性を身に付けないか?」
読みに来てくださり有難うございました。次回をお楽しみに。(三話か四話くらいから戦闘シーン増えます。)