クビニアの復讐鬼
人類が宇宙に進出して約2000年
太陽系を離れ、惑星のテラフォーミング技術を手に入れた人類は、次々に近傍星系へ入植し、惑星国家が出来上がっていった。
その中の1つ、ケンタウルス座アルファ星系には3つの惑星国家が誕生した
リカメア、クワスモリ、クビニアの三国だ。
俺の生まれたリカメアは他の惑星国家と比較して非常に恵まれていた。
財閥によって支えられた国の経済状態は非常に良好であり、国民は最高水準の教育を施され、財閥や政府機関、その下請け企業へ勤め、裕福な生活を送っているー
ただ、それは一等国民の話。
優生学を信奉するこの国で二等国民となった者がそんな華やかな一生を送る事はない。
機械よりも低コストで働かせられる存在という扱いを受ける。
俺は二等国民として物心ついた頃から母親と2人暮らし。
最低限の教育を施され12の頃には採掘の仕事に従事していた。
しかし、そんな生活すら保障される事はなかった。
政府は増えすぎた二等国民を減らすため、配給食糧を絞り、クビニアへの移民を推奨。
事実上の棄民政策を執ったのだ。
クビニアの経済状態は非常に悪く、唯一の輸出品であるプラチナでどうにか食いつないでいる
おまけに独裁制で数年に一度クーデターが起きる有様であり、国内の統治などできる状況になかった。
「そんな国に誰が行くものか」と皆抵抗を続けていたが、次第に減っていく配給を前に、ついに移民を決断せざるを得なかった。
父の写真と何着かの服、自前のヘルメットを抱えて宇宙船に乗り込むと、普段目にする事のない豪華な装飾の数々が目に飛び込んでくる。
普段は上の人間が移動するための船だ。
これから悲惨な人生を送る俺たちに最後の贅沢をさせてやろうというのだろうか。
雲のようにふかふかな椅子に座って3時間もすると眼前にBが見えてくる。
こんなにゆっくりできたのは何年振りだろうなどと思いながら窓を覗く。
窓から見えた惑星に都市と呼べるようなものは存在せず、一際豪華な庁舎の周りには荒野の中にぽつぽつと掘っ立て小屋のスラムが形成されている。
寂れた港を出て、政府職員の案内で新たな家へと歩を進めていると、頭の中の自分が話しかけている事に気が付く。
「俺を不幸にしたあの国をスラムにしてやろう」
そう心に決めた俺の足は軽やかだった…