ベルセリア王国へ その1
本日三回目の投稿です。
セレティア国王の謁見からの翌日に、カトルとメルルは、セレティア城下町を出るために馬車乗り場にいた。
荷物はメルルのインベントリバッグに入れてもらっている。
「まずは、国境付近の町【ヒーアマン】まで行こう。 そこで宿を取ってから明日の馬車でベルセリア王国に入るよ」
「国境付近の町か。 そこまで馬車でどれくらいだろうな」
「アクシデントがなければ、大体8時間くらいだね。 所要時間は休憩のための一時停止も含むよ」
「あぁ、長いからな……」
そんな会話をしていると、予定の馬車が来た。
二人はその馬車に乗り込む。
今回の便は、カトルとメルルのみの搭乗となった。
馬車はすぐに出発し、城下町の門をくぐって外に出た。
セレティア城下町から国境付近の町の【ヒーアマン】までは結構遠い。
なので、各国は所要時間約2時間くらいの距離ごとに、休憩ができる場所を設けている。
アクシデントがなければ、その所要時間でトイレ休憩ができるという事だ。
「乗ってるのは僕達だけなのか……」
「まぁ、定期便の中じゃ長距離だから便が少ないからねぇ」
「それで、ベルセリア王国のどこに行く予定なんだ?」
「一応、辺境の町の一つの【ステークス】を予定してるよ。 私の父が領主をしている場所だしね」
「領主って……?」
「あ、そっか言ってなかったね。 私は辺境伯の娘なんだよ。 でも、ベルセリア王国では身分による差別は禁じてるし気にしないようにね」
「そ、そうなんだ……」
「だ、大丈夫だから、そんなに緊張しないでいいからね」
メルルが貴族で辺境伯の娘であることを知ったカトルは、やや引き気味であった。
表情も引きつっていたのを見たメルルが慌ててフォローする。
そんな時だった。
「うわっ!」
「きゃ……っ!」
突如馬車が急停車したのか、揺れを感じた。
「へへっ、金目のものよこしなぁ…!」
その後、男たちの声が聞こえた。
「今の声は……!?」
「盗賊だね。 この馬車を荷車と勘違いしたのかも。 何せ貴族御用達の商人の荷車が今乗ってる馬車と似通ってるからね」
どうやら盗賊が襲撃してきたようだ。
今の馬車が荷車と勘違いしたのだろう。
メルルが言うには、貴族たちの荷車が、今のような馬車に似通っているのが原因のようだ。
「どうする? 応対するの?」
「もちろんだよ。 足止めを食らいたくはないからね。 カトル君、いい?」
「分かった。 先の仕掛けはどっちがやるんだ?」
「私から先に仕掛けるよ。 その後でカトル君が剣でフォローしてね」
「気を付けてくれよ、メルル」
盗賊に対する打ち合わせを終えた二人。
先にメルルが馬車から飛び出してきたと同時に、魔法を放った。
「お、女が来たぜぇ……。 ぐへへ、早速……」
「ファイアストーム!!」
「ぎゃあぁぁぁ、あちぃぃぃ!!」
「くっ、この女……、生意気な……げひゃっ!?」
メルルに目を向けている隙に、カトルが盗賊の一人を斬り倒した。
「な、何だお前らは…!」
「インスパイア!!」
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」
さらに追い打ちとしてメルルが電撃の魔法を放ち、感電させる。
カトルも負けじと盗賊たちを次々と斬り伏せていく。
(この感触……、この剣のおかげかも)
セレティア国王がお詫びとして貰った剣。
これのおかげでカトルは、盗賊をすんなり斬り倒すことが出来ていた。
だが、カトルは知らない。
それは自身の努力もここで実りだしていたことに。
そんな感じで、襲撃しに来た盗賊を、一人も逃がすこともなく全滅させた。
「ふぅ、終わったか……」
「お疲れ様、カトル君。 いやー、強くなってるね」
「この剣のおかげだよ」
「それだけじゃないと思うけどなぁ」
カトルの努力を見ていたメルルも、剣とカトル自身の成長が彼を強くしていたことを知っていた。
知らぬは本人のみということだ。
「どうもありがとう。 助かったよ」
馬車を動かす御者の人が二人にお礼を言った。
すぐに二人は馬車に乗り、乗ったのを確認した後で走らせた。
ここで約20分遅れでの運行である。
その後は、アクシデントの気配はなく無事に最初の休憩の場所にたどり着いた。
メルルは飲み物を売っている店で、ジュースを購入をしてそれを飲んだ。
「メルル、あまり飲みすぎるなよ?」
「コップ一杯分だし大丈夫だよ。 カトル君は飲まないの?」
「僕は喉が渇いていないからね」
(トイレもしっかり設置してるんだな)
メルルと会話しながらカトルは周りを見回した。
休憩の場所には、飲み物を売ってる店のような簡単なお店とトイレが設置されていた。
長旅の休憩には丁度いい設備なのだろう。
「では、出発しよう」
休憩の場所で一息をついてから、御者の一声で再び馬車を走らせた。
作者のモチベーションの維持に繋がりますので、よろしければ、広告の下の評価(【☆☆☆☆☆】のところ)に星を付けるか、ブックマークをお願いします。