国王様の呼び出し
本日二回目の投稿です。
翌日、カトルとメルルはセレティアの王城へ足を運んでいた。
どうも起床して食事をした後で、スタッフ経由で国王から呼び出しがかかったようだ。
カトルは不安に駆られたが、メルルが手を握りながら励ました。
「大丈夫だよ。 私が報告した内容を確認したい理由で呼んだみたいだから」
メルルがそう言ったので、ひとまず冷静を装って王城へ行く事にしたのだ。
「お待ちしていました、メルル様、カトル様。 国王様がお待ちです」
門番の兵士たちが、カトル達を出迎えてくれたようだ。 そのまま、城内の兵士に引き継ぎ、国王の元へと案内された。 案内された先は王城二階の王の間。
玉座に座る国王の前に、カトルは委縮してしまった。
一方のメルルは、場慣れしているのだろうか平然としていた。
「まぁ、楽にしてくれ。 君達を呼んだのはメルル嬢が報告した内容の確認なのだからな」
(メルルが言った事は本当だったのか。 なら多少は安心……かな?)
カトルは、国王からの言葉で確信を得たことで多少は安心できたようだ。
そのまま国王は確認の為に、カトル達に質問をした。
「それで本題だが、勇者グズマがカトル君を追放したというのは本当なのかな?」
「ええ、本当の話です。 実際、僕は弱者は出て行けと無理やり窓から突き落とされましたから。 メルルが居なければ大怪我か、最悪死んでいました」
「何と……! 本当だったのか……!!」
カトルが実際に経験した内容を国王に話すと、国王は驚きの表情をした。
隣のメルルもグズマの行為に怒りを感じているので、その間は不機嫌な表情だった。
「その後、私の出身国のベルセリア王国の国王様にも相談して、勇者パーティの脱退を進言してくれました」
「ふむぅ……。 して、何故グズマはカトル君を追放などをしたのだ……」
(メルルの出身国の国王にも相談をしていたのは本当だったのか……)
メルルからの回答にカトルは少し思い出していた。
確か、カトルがクビにされる前に、メルルが彼女の出身国であるベルセリア王国の国王にも相談していたと言っていた。
メルルの方は、そのまま国王に対してグズマの件に関する話を続けた。
「あの男たちは天才だからって、即戦力をずっと求めてましたから。 最悪、国王様にクレームを出すつもりでいてましたよ」
「そこまでなのか……。 なんとまぁ」
続けて報告するメルルの内容に国王も呆れてしまう。 勇者がまさかそんな性格だとは思わなかっただろう。
「女神が選定する勇者は、ランダムだからな。 性格など問わない形で選んでくるからそのツケがここに来たわけか」
「でしょうね。 ともかく、どうするつもりで?」
「グズマがセレティア出身の貴族だからな。 勇者資格の剥奪は私の役目だろう」
国王は天井の方に顔を向けながらそう言った。
そこにメルルは、カトルを加えた事についての質問をした。
「それで、カトル君を加えたのは女神の意思ですか?」
「そうだ。 当時弱い彼を加え、育てる事こそが聖剣を手にすることが出来る条件の一つだからな」
国王とメルルの会話で分かった事。
勇者の選定は女神が担い、その選定方法はランダム選定。
なお、性格などは度外視で選ばれるのだとか……。
ただ、資格の剥奪は選定された人物の出身国の国王が担うそうだ。
そして、カトルを加えさせたのも女神の意思で、勇者が聖剣を手にするためには、弱者を強者になるようにじっくりと育てることらしい。
だが、グズマはカトルを追放したことで、自らその資格を放棄したという事なのだ。
「あの男はどのみち勇者の資格を捨てたようなものだ。 カトル君を追放したのだから聖剣を手にする資格はなくなったのだから」
「そうですね。馬鹿な事をしましたよあの男は」
メルルがグズマの事で悪態をつく。
国王も今回の詳しい報告でもう、彼をかばい立てすることはできなくなった。
聖剣を手にする資格を放棄したようなものなので、最早勇者の資格はなるべく早くに剥奪をしないとダメだろう。
「時にカトル君。 君は今後はメルル嬢の国へ……ベルセリア王国へ移住するのだな?」
「はい、彼女からの提案を受け入れることにしました」
「そうか……。 カトル君、何も出来なくて済まなかった。 お詫びの印として、これを受け取ってほしい」
国王がそう言って、兵士に命じてカトルに差し出したのは……お金と剣だった。
「これが……お詫びの印? お金がたくさんだ……」
大量のお金が入っていた袋を見て、カトルは驚きを隠せなかった。
メルルも鑑定魔法で、袋の中のお金を確認する。
「うん、占めて100万ゴルダはあるね。 平民ならばこれで三か月は暮らせるお金だよ」
「それにこの剣、切れ味がよさそうだ。 いいんですか、貰っても?」
「構わんよ。 ベルセリア王国のどこに住むかは分からぬが、今後の生活の為に役に立ててくれ」
「ありがとうございます」
お言葉に甘えて、カトルはお金と剣を受け取った。
今後の為には、確かに必要だからだ。
「また、時々でいいからここに訪れてほしい。そして、グズマの事は任せてもらいたい」
「分かりました。 これで失礼します」
カトルとメルルがお辞儀をして、王の間から出ていく。
兵士も去り、一人残った国王。
「さて、これからの処分が大変だな。 だが、悪例を生み出さないためにも厳しく処分せんとな」
国王は王の間で、兵士に聞こえない大きさで独り言ちていた。
これが、グズマの転落の始まりであった……。
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