淫魔の森
「ついたみたいだね」
その森は淫魔の森、と呼ばれる。
人型のメスの魔物が多く、そう呼ばれるのだ。
そして、ここはオークの木が群生しており、貴重であるオークの樹液がもっとも取れやすい。
しかし視界が悪い上にここは魔物が多く魔術師が一人で来るのは危険だ。
「ここ・・・初めて来ました。魔物の気配が多いですね」
レンジャーのアリサがそう言うと、
「うん・・・俺でもわかるよ。マリーンさん、私たちで大丈夫でしょうか?」
心配そうにリッドも続ける。
「無理はしなくていいからね。危険な魔物に気づいたらすぐに伝えてね」
「はい。分かりました」
マリーンは返事になっていなかったが言葉を返す。
問題なんてない、と言う感じな返事だった。
オークの樹液が貴重なのは理由がある。
オークの木は固いので樹液が出ているもの自体が少ないのだ。
とはいえ彼らに無理を言って森の奥まで行くのは申し訳ない。
「すぐに見つかるといいんだけどね」
マリーンはそう口にする。
さらに奥に進んでいくと、獣の匂いがした。
距離にして数メートル先か。
周囲には食い荒らされた果物が散乱している。
「いますね。なにか・・・カリュドーンでしょうか?」
「ふむ・・・」
マリーンは「示せ」と詠唱し周囲を魔術で探知する。
視界が悪くはっきりとは見えないが、2,3匹気配が察知できた。
しかし、皮肉にも。
「あれ・・・樹液ですよね?」
アリサが指さした先、こうこうと湧き出る樹液が見える。
「うーん・・・そうだね・・・」
思考にして1秒。
不意に彼は口にする。
「やろう。大丈夫だ私が付いているからね!」
森と言うのは元々魔物向きの地形だ。姿勢が低い彼らにとってアドバンテージが圧倒的だからだ。
しかし、
「僕たちは冒険者、知恵を使うのが人間なんだよ」
そう不敵にマリーンは笑った。