賢者の依頼
コバヤシはスラ子に頼んで手紙を書いてもらい、行商人に渡すと以前に住んでいた国にいた賢者・・・マリーンに渡すようお願いした。自分で書かなかった理由は、この世界の文字の読み書きが苦手だからだ。
マリーンは有名人らしく、行商人も知っているようで「分かりました」と引き受けてくれた。
彼に手紙を出したのは理由がある。
現在制作中の兵器(神の矢)。
それに組み込む重要なパーツが壊れてしまった為、優秀な錬金術師のあてを探していたからである。
「ねね!なんでマリーンさんに手紙書いたの?」
「兵器を組み立てている時、何か重要なパーツが壊れたらしい」
別に俺も詳しいことがわかるわけでもないので端的に説明する。
「マジックエリキシルも丁度欲しかったしな。市販のマジックポーションの回復量だと少し心もとない、なんだかんだでマリーンの薬は優秀だな」
マリーンはカネさえ払えばしっかりとした仕事はしてくれるので信用はしている。
・・・手紙が着くまで時間がかかるだろう。
返事がくるまでゆっくり過ごす事にした。
「ふむ。ギルガメッシュ王からの依頼、と」
「はい」
マリーン家に手紙が届いたのは、コバヤシが送ってから5日程経った後だった。
「神の矢」そのレプリカにあたる兵器のパーツが足りないらしい。
「ほうほう・・・これは、難儀だね・・・」
「マリーン様、断りますか?」
メイドはそう言うが、これはお金を稼ぐチャンスだ。それに、
「コバヤシ君は僕の上客だからね。この依頼、受けよう」
借りになるからね。とマリーンは笑った。
「マリーン様、久しぶりです」
「久しぶり!キルト君」
マリーンはキルトの自室に行っていた。
ラートルフ家は、キルトが当主を継いでからは非合法な研究からは手を引いていた。
それと昔のような陰鬱な雰囲気が建物全体からなくなった気がする。
「何の御用でしょうか?マリーン様」
「いやあ、オークの木が欲しくてね。依頼でどうしても必要なんだ」
「いいですよ」
「ありがとう!」とマリーンはお礼を言い、受け取る。
オークの木は魔術師にとってとても重宝されるものだ。杖の製作やパペットドールにつかったり、用途は多岐にわたる。
後は・・・。
オークの樹液だ。こればっかりは取りに行くしかない。
キルト君にこれ以上迷惑はかけられないな。
「じゃあね!キルト君!」
マリーンはラートルフ家を後にした。
「そこを何とか!」
「困ります・・・冒険者登録はなされていないようですし、依頼は危険を伴います。それにいまは護衛を頼めるような中堅パーティもいませんし・・・」
「参ったなあ」
そんな時だった。
「あのー。私たちで良ければ、いけますよ?」
「えーと・・・リッドとアリサさんですね」
まさに、渡りに船だ。
マリーンはこの二人の冒険者に依頼を出すことにした。
「お金になるお話があるんだけど二人とも、どうかな?」
不敵にマリーンは笑った。