酒場
「はあっはあつ・・・」
コバヤシは来る(きたる)べき時の戦争に備え、防衛準備を手伝っていた。城壁に大砲を設置したり、神の矢、と言われる新しい兵器の設置をしたり。まあ、色々だ。
「神の矢・・・!これがかつて神界で使われたとされる伝説の兵器のレプリカ・・・!」
兵士が所々で話している。この兵器のこのクソ重いパーツを動かすのが俺の仕事だ。
「肉体労働にはむいてないぞ・・・」
「男ならそれが本文ってもんだろ!」
アレスには皮肉も通用しないのか・・・。
身体強化に使う魔力も、いまはカツカツだ。
やけくそ気味にマジックポーションを飲みながら必死に体を動かす。
あと少しで今日の作業も終わるはずだが・・・。
「今日はここまで!皆の協力、感謝する!」
兵士の声を聴きその場でコバヤシは疲れ果てて腰を下ろす。
「少しは物理攻撃ステータスも上がったかもしれないな。」とコバヤシは皮肉を呟いた。
ここは本国の冒険者ギルド、だがコバヤシが前に所属していたギルドよりも酒や料理のメニューが充実しており冒険者でなくてもたむろする場所でもあった。
コバヤシはアレスとカインに誘われて酒を飲んでいるのだが、
「姉ちゃん、もう一杯!コバヤシも飲もうぜ!」
「俺はそこまで酒は強くないぞ・・・」
元々酒は転移前から得意ではない。
カインとアレスはすっかり出来上がっているので合わせては飲んではいる、が・・・。
「お前ら・・・飲み過ぎると明日に響くぞ。依頼だって受けているだろう、悪酔いして魔物に殺されたなんて笑い話にもならないだろう」
「まあまあ、コバヤシは固すぎだぞ?たまには依頼だけじゃなくてサボるのも悪くないだろ」
「まあ、明日の1日くらいは休んでもいいかもしれない」なんて思っているのも事実なのだが。
しかたなくコバヤシは果樹酒を注文すると半場やけくそ気味に飲み干す。
「お!いい飲みっぷりだな!」
アレスはともかくカインはこういうやつだったのか、軽いノリで酒を俺に飲ませてくる。
カインは酒を飲みながらふと、
「なあ、アリスは・・・」
と呟く。
「なんだ?俺は別にアリスと仲がいいわけではないぞ」
「あいつ・・・アリスは趣味とかあるんだろうか。その・・・最近は少し気になることが多くなってな」
恥ずかしそうに言うカインをアレスはからかう。
「おいおい、お前もそういう事もあるのかよ!アリスって言ったか、お前の頭目だろ?意外とかわいいところもあるんだな」
「うるさい」
アレスはからかっていたが俺は知っている。・・・教えてやるか。
「あいつはリンゴ酒が好きらしいぞ。よくスラ子が話していたんだ」
「そうか。ありがとうよ。ところでコバヤシ、明後日は暇か?」
「ああ。予定はないな」
「なら少し俺に付きあってくれないか。俺個人の依頼だ、別に難しい依頼ではないから安心してくれ」
「わかった」
酒盛りは結局、深夜まで続いた。