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ウェポンサモナーとスラ子の冒険  作者: どれいく
コバヤシと言う冒険者~1章
8/115

無茶

「おお!そんな感じで!いいね!」

「えい!」

マリーンとスラ子はマリーン家敷地内の模擬実戦用に作られた施設でパペットドールで訓練をしていた。魔力の基礎の1つである魔力の強化を練習するためだ。もちろん殴られれば痛いがスラ子は物理攻撃にはつよいので、木でできた腕で殴るだけの人形での実践訓練はちょうどよかった。

スラ子の最初から使えるスライムの体を槍の形にして放つ攻撃。

「スプレッドニードル」

もともと人くらいなら殺せる威力があるそれを魔力を通して強化して放つと・・・。

ガシャン!一撃でパペットドールの固い体を破壊する威力になっていた。木だとは言え固いオークの木でできている人形をこわすのはかなりの威力だ。

スライムの体は水のようになっている。魔力がほかの種族に比べて通しやすい分コントロールする感覚がつかみやすいのかもしれない。

「ししょーのスプレッドニードルって名前、かっこいいね」

「別に使ってもかまわない」

魔力のコントロールは完ぺきではないが、おそらくコンクリくらいの強度ならヒビくらい入れられるだろう。

そういえば・・・。

「しばらく襲ってきていないがラートルフの件はどうなっている?」

「最近は呪術の類の攻撃ばかりで直接は攻めてきていないね。この家にいる限りは直接攻めてくるわけはないし」

「マリーン様!」

「ん?どうしたんだい?」

メイドがあわてた様子で声を上げる。

そうとうに焦っているようだ。

「ラートルフ様から決闘の申し込みがありました!」

「ほほお・・・決闘とはめずらしい。あの男に直接魔力の打ち合いをする度胸があるなんてね。」

魔術師の決闘はどちらかが死ぬか、または降参するかで決着がつく。そして勝ったほうが相手の位を奪うのだ。

「ついに僕の腕前を披露するときがきたようだね!はっはっは」

「それが・・・コバヤシ様なのです」

「へ?」

・・・え。

「あちらも同じように本人ではなくご子息を戦わせるようです」

「そうかそうか!では頼んだ!」

軽く言っているが・・・。

「俺が負ければお前は魔術師の爵位を失うんだぞ・・・いいのか、それで」

自信満々にマリーンは言った。

「負けるわけがないからね。君なら大丈夫さ。」






「これはこれはマーリン殿。お元気そうでなにより。」

「いやあどっかのバカが呪術で攻撃するから暇がなくてほんとにたすかるよ!」

かなりでかい。ここはまるで聖堂の様だった。協会、と名前につくだけある。

決闘は昔からの決まりで魔術協会の聖堂で行われる。

魔術的な建築で、ここはあらゆる外敵の侵入もゆるさない。邪魔ははいらない。

「さて、あれがラートルフの跡取り息子か。」

マリーンが軽口を叩く。

「がんばれー召喚者君!」

「ししょーファイトだよ!」

はあ・・・とため息をつく。なぜ断れなかったのか、それはマリーンが二つ返事で受けてしまったからだ。たしかに殺し合いにおいては負けたことはないがすこし軽率だと思う。

「杖はないのか。・・・それでも魔術師だというなら滑稽だな。」

さすが魔術師の名門。魔術で戦い合うことにプライドがあるらしい。

「ああ。俺はこれで問題ない。」

イメージを検索・・・具現化開始。

コバヤシは使い慣れた獲物を召喚する。ショートソードだ。

「エンチャント、燃えよ」

これで準備は完了だ。

「そんな初歩的なことしかできないのか。相手になるのかな?」

「そんなことはない。俺は・・・(絶対に)(勝つ)」

絶対に、勝つ。と魔力を込めて言い放つ。この状況でできる言霊の魔術の保険はこれだけだ。

言霊の魔術は事象を起こすこともできる。言葉には力がある。運命力に作用し絶対に勝つ運命を引き寄せる。わずかな可能性でも利用しなければ決して勝てない相手だ。

立会人が声をあげる。

「決闘開始!」





「術式展開。いかずちよ吠えよ。・・・サンダーブレイク!」

「くっ!」

術式の展開、詠唱が早すぎる。とっさに後ろに避けなければ初撃で死んでいた。

雷鳴が轟くと、床、柱、天井を稲光が通り真上から強烈ないかずちが降り注ぐ。魔術的に強い特殊な鉱物で出来ているにもかかわらず床が削れている。

「手加減はしてあげよう。死んではかわいそうだからね」

強い、なんてものじゃない。すこしでも気をぬけば灰になりそうだ。こちらは接近することしかできない。相手は飛び道具だ。しかもまったくリキャストタイムがない。

足に魔力を集中。たえまなく動き続けろ。止まれば死ぬ。チャンスは一瞬しかない。

「ほら。ここだ。」

相手はその場から動いてもいない。詠唱し、放つだけ。

「やばいな」

このフィールドはほぼ隠れるものはない。柱は立ってはいるが盾には使えない。

足は限界まで酷使され悲鳴を上げている。

詠唱が終わるたびカツン!と杖を床に突く。おそらくあの動きで角度を調整し、いかずちを放っている。対飛び道具戦は慣れているとはいえかなりきつい相手だ。

身をひるがえし、避ける、避ける、避ける。

しかしなぜここまで避けられるのか。それは、魔力による身体強化を完璧に行っているからだ。

動体視力に2割、足に8割。

「攻撃の軌道が分かってきた・・・しかし」

・・・直線的に飛んでくるパターン、真上から降り注ぐパターンのおおよそ2つだがどちらも避けるので精一杯だった。反撃に移れない。

「魔力は切れないよ。飛び道具がない君に勝ち目はない」

いかずちが落ちるたび、鉱物の床が抉れる。ただの杖は本来これほどの魔力行使にたえられないが・・・一流品なのかまったく壊れそうな見込みがない。

「フン。さすがは我が息子。あなたの地位もここまでだな。マリーン殿」

ラートルフ家の当主ライスは勝利を確信していた。この男もおわりだ。

マリーンのことがライスは気に入らなかった。与えられた地位、賢者の爵位。稀代の天才と称えられる才能。すべて与えられたものだ。。

「いやいや・・・まだまだこれからだよ。彼はあきらめていない」




「はあっ・・・はあっ・・・」

なぜだ。なぜ紙一重で躱すこの男を捉えられない。さすがに魔術を行使するのにもつかれてきた。なぜ捉えられないのか、こちらは魔術をただの一撃当てられればケリは着くというのに。

僕は天才だ。ラートルフの後継者として自負できる。魔術の詠唱速度、具現化の練度どれをとっても一流だ。こんな誇りもない魔術師モドキに負けるのはプライドが許さない。

魔術が上手く練れなくなってきた。詠唱の動きが鈍くなってきている。

「だいぶ疲れているようだな。」

この男は筋力を強化、つまり基礎の技術とウェポンサモナーとエンチャントのみで戦っている。・・・つまり。

その瞬間を狙うのはわかっている。魔力を消耗し、詠唱が止まる瞬間。見逃さず、魔力で強化した足を爆発させるようなイメージで駆ける。

「捉えた!」

たしかに捉えたはずだった。しかし、

ブウ・・ン。結界を展開する。致命的だったはずの一撃が止まる。

「僕は雷の魔術以外も使えるんだよ。残念だったね。」

「くっ!」「いかずちよ、吠えよ!」

コバヤシは後ろにぶっ飛んだ。モロに雷に直撃する。

そのまま後ろにあった鉱物でできた柱にたたきつけられる。

「ぐっ・・・あ・・・」

視界が暗くなる。死ぬのか・・・。

意識が遠のいていくのがわかった。





「やっぱり負けちゃったか・・・まあ予想通りなんだけど・・・ね」







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