遠出
ここから展開を動かしていきます
ある朝、「スラ子」と急にコバヤシは声をかけた。必要なことしか言わない性格なのでスラ子は「えっ・・・!?」と返事を返してしまった。
どうやら休息がてら遠出をしよう、との事だった。
・・・確かに最近は大仕事が多かったしちょっとわたしも疲れてるかもしれない。それにしても驚くから急に声をかけるのはやめてほしい。
ビックリし過ぎて変な言葉も出ちゃったし・・・。
「う、うん!行こう!」
______それはスラ子に声をかける数時間前のこと。
俺はギルガメッシュ王の玉座に出向き、遺跡で聞いたゼパルの言葉を伝えた。一年以内に戦争を仕掛ける事、何らかの理由で遺跡を巡っている事。
「そうか。ならばこちらも対策をしなければな」
報告を終えコバヤシは玉座の間に背を向ける。
「待ってくれ、あのお騒がせ女神から伝えるように頼まれた事がある。少し長話になるが・・・」
「はい」
珍しくギルガメッシュ王は丁寧に言葉を選んで話し始めた。
「お前が持つ、ヘブンズギル。その魔剣は神代のモノだ。太古の神界、女神とその部下の神の戦いが起きたころ作られたのだ。魔剣として知られる前は霊体に対して大きなダメージを与える聖剣だったそうだ」
「・・・」
黙ってギルガメッシュ王の話を聞く。・・・聖剣、だったのか。何故いまは魔剣とされるのだろう。
「天界に戦争が起きた原因、それは神と言われたもの・・・シャイターン」
「しかし、一介の神では主神たるイシュタル・・・。あのお世話がし女神に勝てることは出来なかった」
・・・イシュタル、太古から神として生きてきたとは思えない言われ方だな・・・。
ギルガメッシュ王は話を続ける。
「最後にシャイターンを追いつめたのはマリファスと言う名の上級天使で、友人だったらしい。シャイターンと戦い、そして・・・」
「・・・どうしたんですか?」
「止めを刺そうと近づいた時、躊躇ってしまった・・・その瞬間。返り討ちにあった」
シャイターンがヘブンズギルの所有者を殺す理由は分からないが、おそらく・・・。
コバヤシの言葉を遮るように、
「お前が以前活動していた街が襲われたのはヘブンズギルのせいでもなく、お前自身の問題でもない。・・・背負うな」
「そうですか。・・・ありがとうございます」
話が終わると、ギルガメッシュ王の玉座を後にする。魔術師ブローが初対面で言っていた。「シャイターンを殺す可能性があるから狙うんじゃないか?」という言葉を思い出す。
______因果だな。
コバヤシはぼそりと呟くと宿屋に向かった。